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鹿児島・佐賀 県庁記者クラブの醜態
「記者クラブ」検証 -4-

2012年8月20日 10:15

 佐賀、鹿児島の両県にはいくつかの共通点がある。
 まず、県内に原子力発電所(佐賀県玄海町の玄海原発と鹿児島県薩摩川内市の川内原発)があるということ。そして佐賀は古川康、鹿児島は伊藤祐一郎という、ともに総務省出身の知事が、「独裁」に等しい県政運営を続けていることである。
 もう一点、見落とすことができないのは、両県庁を担当する記者クラブが、義務であるはずの「権力の監視」を怠っていることだろう。

 HUNTERが行った九州7県の県庁記者クラブに対する質問取材への対応で、改めてそのレベルの低さをさらけ出す形となった両県庁記者クラブ。これまでの取材で得た二つの記者クラブの実態を報じる。

議論避けて「見解」で逃げた
 HUNTERの質問取材(下記参照)に対する佐賀、鹿児島両県の県庁記者クラブの回答は、疑問点に答えるという基本的なルールさえ守られていない。
 わずか4点の質問にきちんと向き合うことさえせず、「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定。以下『見解』)を答えに充て、議論を避けた形だ。

 「見解」に準じた(佐賀は『沿った』と表現)運営を行っているとしているが、その「見解」自体、記者クラブや会見についての基本的な考え方を述べたものに過ぎず、個別の記者クラブにおける運営方針について細かく指示したものではない。
 事実、それぞれの県知事会見に参加を申し入れた記者クラブ非加盟者に対する対応はまちまちだ。参考として、HUNTERの質問と九州7県の各県庁記者クラブからの回答をまとめた表を再掲しておく。

  1. 記者会見の主催は記者クラブ、県のいずれでしょうか?
  2. フリーランスの記者をはじめ、貴記者クラブ所属ではないメディアの記者の会見参加を認めておられますか?認めている場合と認めていない場合、それぞれの理由も合わせてご回答下さい。
  3. 記者クラブ所属以外の記者が会見に参加する場合、質問することも可能ですか?質問ができない場合はその理由をご回答下さい。
  4. 貴記者クラブの運営に、どの程度の金額の公費が費消されているかご存知でしょう?ご存知でしたらお教え下さい。

各県庁記者クラブの回答(知事定例会見への対応)

 佐賀、鹿児島、長崎の対応は、事実上の回答拒否なのである。

弛緩した佐賀県政記者クラブ
【佐賀県政記者クラブの回答】
1.定例記者会見は記者クラブと佐賀県の共催となっています。
2~4については、日本新聞協会の見解に沿って運営しています。 

佐賀県庁 佐賀県政記者クラブは、知事の定例記者会見を《記者クラブと佐賀県の共催》であるとしているが、これは「日本新聞協会の見解」に沿ったものとは言えない。
 「見解」は、こう述べているのだ。《97年見解は公的機関の記者クラブがかかわる記者会見について「原則としてクラブ側が主催する」とした。新見解はネット社会到来という時代状況を踏まえ公的機関が主催する記者会見を一律に否定しないことにした。しかし、公的機関による恣意(しい)的な運用を防ぐ意味から、記者会見を記者クラブが主催することの重要性を強調した》。

 佐賀県庁の記者クラブが、会見の主催がどちらなのかを確認した1番目の質問にだけ回答したのは、現状が「見解」の示した方向性と違っていることを認識していたからに他ならない。同クラブがこの件について神経を尖らせたのには理由がある。

 昨年のやらせメール事件における古川知事の会見をめぐって、佐賀県側が会見の「共催」を盾に記者クラブ非加盟者の知事会見参加を拒否。「見解」が危惧した《公的機関による恣意(しい)的な運用》が現実となっていたのである。
 会見の主催権限を公的機関に委ねた場合の弊害が露呈したケースだったが、その後も「共催」は続いている。
 記者クラブが公権力の監視という役割を担うのなら、知事会見の主催はあくまでも記者クラブでなければならない。だが、佐賀県庁記者クラブの伝統なのか、ここでは権力に追従する姿勢ばかりが目立つ。

 昨年8月、玄海原子力発電所の立地自治体である佐賀県の古川康知事らの「選挙運動費用収支報告書」を閲覧するために佐賀県庁の選挙管理委員会に出向いた折のこと。閲覧の申請をしたHUNTERの記者に、県選管の職員が、先に「県庁記者会」(記者クラブのこと)と話をつけた方が良いと言い出したのである。

 選挙が執行されると、数ヶ月後に選管が選挙結果の「要旨」を作成して記者へのレクチャーを行う。しかし、佐賀県では要旨の公表までの数ヶ月間、どの報道機関の記者も報告書の閲覧を行わないのだという。

 玄海原発の再稼動をめぐって古川知事が注目を集める中、佐賀県庁記者クラブに所属する記者は、「要旨」が公表された昨年8月12日の時点まで知事の選挙運動費用収支報告書を確認していなかったというのである。
 知事の動向や九電との関係が取り沙汰されていた時期であるにもかかわらず、佐賀県庁記者クラブの面々は、知事のカネの動きさえ調べようとしていなかったということだ。しかも、足並みが揃っている。

 記者クラブ内における「抜け駆け禁止」の取り決めを疑って、県庁内の記者室を訪ねて確認を行ったのだが、対応した幹事社の記者は、「各社の判断」とした上で「県が公表するするまでは前もって見れるわけではないでしょう」と真顔で反論しはじめた。
 だが、選挙運動費用収支報告書は、公職選挙法の規定によって選管が"提出を受けた日"からの閲覧が可能だ。県選管による要旨の公表まで"見れない"とする幹事社の記者の解釈は、明らかに事実誤認なのである。

 政治資金規正法を根拠とする政党や政治団体の「政治資金収支報告書」は、提出から数ヶ月間、総務省又は都道府県選管の定めた公表日まで閲覧が許されないのだが、幹事社の記者はこれと混同していたのである。
 この点を指摘したところ、件の記者氏は「言い方にカチンときた」と筋違いの一言を発して話をそらしてしまった。

 無知による不作為なら責めることはできまいが、彼らはプロである。政治家のカネの流れを把握しておくのは「イロハのイ」(古参新聞記者の話)なのだが、それさえできていなかったばかりか、間違いを指摘されて感情に訴えるというお粗末さである。

 記者クラブ内の弛緩した空気は、県の都合に合わせ、県と記者クラブが知事会見を共催していることと無縁ではあるまい。権力と対峙する姿勢がない限り、佐賀県庁の記者クラブから本物の“スクープ”が発信されることはないだろう。

鹿児島県庁記者クラブ「青潮会」
20120816_h01-01t.jpg【鹿児島県庁記者クラブの回答】 
当記者クラブ(青潮会)は「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定)に準じて運営を行っております。 

 九州7県の県庁記者クラブの中で、最低・最悪と思われるのは、鹿児島県庁の記者クラブである。地方自治体にある記者クラブとしては極めて珍しいことなのだが、ここの記者クラブには「青潮会」という名前がついている。以下「青潮会」で通す。

 昨年11月、ひとりの女性フリーライターが、鹿児島県の広報課に「知事の定例記者会見に出席したい」と申し出た。
 広報課から「主催は記者クラブ(青潮会)です」と言われたため、素直に青潮会に書面で申請したところ、約1週間後、青潮会から返ってきたのは「会見出席規約が存在しないので、規約が出来るまで参加を認められない」という回答だった。

 彼女はその後も出席を求め続けたが、「規約がまだ出来ていない」が繰り返され、申請から5ヶ月も経った今年3月末、青潮会はようやく会見出席に関する規約をまとめ、会見参加への条件を示したという。

 規約の詳しい内容については省くが、出席を認める条件として、身分証、署名記事の写しなどに加え、メディアと出席申請者との間で結んだ契約書か、報酬の支払い調書(源泉徴収票)の提出を求めている。
 何の権限があってフリーライター個人の報酬の支払い調書を要求したのか分からない。人権だのプライバシーだのと騒ぐ人たちの所業とは思えぬ暴走ぶりは、報道機関によるイジメと言っても差し支えあるまい。

 青潮会側の誤算は、ここまで理不尽な要求を突きつければ諦めると思っていたフリーライターが、求められた添付書類を提出したことである。
 困った青潮会はこの後、提出された源泉徴収票に印章がないことを理由に、税務署への確定申告書類の提出まで求めていた。資格審査に名を借りた強要と言っても過言ではあるまい。

 しかし、フリーライター側はこの条件もクリア。結局、会見参加までは勝ち取ったのだが、青潮会による外部メディア排除は徹底しており、会見で質問のために挙手すれば、青潮会として強制的に退場させるという警告まで行っているという。
 青潮会側は、質問が認められない理由について、「県との協議の結果だ」と答えており、伊藤知事の意向が働いた可能性が高い。
 事実、このフリーライターは、その後の青潮会所属の記者との話の中で、「知事が会見を拒否したら困る」という本音を聞き出している。

 取材のため鹿児島県庁内で会った件のフリーライターは、記者歴は短いながら、経験不足を補って余りある正義感の強さを持った女性だった。もちろん、正義感だけでは報道記者としての仕事は出来ないのだが、会見参加を拒否しなければならない理由は見当たらなかった。
 もし、彼女や彼女の記事を掲載しているメディアが会見参加を認める条件に合致しないのであれば、正当な理由を明示した上で断わればよかったはず。それならまだ救いようがある。
 会見参加に一定の条件があるのは当然で、誰でも彼でも自由に出入りさせていれば、会見が成立しなくなることは明らかだ。しかし、非常識な条件を突きつけて異分子を締め出す行為は報道関係者のやることではあるまい。

 青潮会は、HUNTERの質問取材に対し、「日本新聞協会編集委員会の見解」に準じて運営を行っていると回答した。その「見解」の記述を列挙してみたい。

《記者クラブは、「開かれた存在」であるべきです》。

《記者会見参加者をクラブの構成員に一律に限定するのは適当ではありません。より開かれた会見を、それぞれの記者クラブの実情に合わせて追求していくべきです。公的機関が主催する会見は、当然のことながら、報道に携わる者すべてに開かれたものであるべきです》。

《記者会見はクラブ構成員以外も参加できるよう、記者クラブの実情を考慮に入れ努めていかなければならない》。

 青潮会がフリーライターに行ってきた行為が、この「見解」のどこに準じているのだろうか?

 鹿児島県庁記者クラブ「青潮会」からの回答メールの後には、次のような一文が添えられていた。
『この言葉をもって返答とさせて頂きたいと思います。ご理解いただければ幸いです。どうぞ、宜しくお願い致します』。

HUNTERが返信として送ったのは次の一文である。

青潮会様

ご回答ありがとうございました。
残念ながら「ご理解」はできませんでした。

あなた達は、取材対象からこうした回答を得た場合、黙って済ませていますか?
そうではないでしょう。「答えになっていない」、そう迫るのではないですか?



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