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産廃処分場工事で居直る鹿児島県
県民無視の強弁、ごまかし

2012年8月28日 10:10

 違法・脱法行為が横行する事態となった鹿児島県薩摩川内市の産業廃棄物最終処分場「エコパークかごしま」(仮称・事業主体は『鹿児島県環境整備公社』)の建設工事をめぐり、県側の居直り姿勢が顕著となってきた。
 工事現場内で発生する「濁水」に関し、市民団体から出されていた公開質問に対する公社の回答で、従来の見解を事実上否定しながら、自らの約束違反を正当化。非を認めぬ役所の体質をさらけ出している。
 さらに、薩摩川内市から知事に提出された工事への意見書の存在が明らかとなり、現状では同意見書の求めた内容が守られていないことも明らかとなった。
 取材に応えた薩摩川内市側も困惑する事態だ。

公社側回答のお粗末さ
 地元住民らが今年7月9日に県環境整備公社に対し提出した公開質問書の内容は、処分場工事現場から放出されている濁水処理に関するもので、8項目に及ぶ。
 放水口の数をはじめ工事計画と異なる濁水処理の実情について公社側の見解をただしたが、今月22日付けで示された回答は、読むに耐えないお粗末な内容だった。

 県側が公表している濁水処理の方法は、建設現場内で発生するすべての水を濁水処理機で浄化して一箇所から放流するというもので、公社が発行する「整備公社だより」にも、明記されている(下がその該当箇所)。

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『整備公社だより』より(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

 公開質問では、はじめに「放流口」の数の確認を行っているが、何箇所あるかと聞かれているのに、公社はその数を明示しておらず、下の記述のように従来の見解を繰り返しただけだ。役所特有のごまかしである。

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 ところが、他の放流設備の存在についての2番目の質問に対する答え(下の文書参照)では、自己矛盾に陥っている。
 はじめの答えで“工事に伴って発生する水”は濁水処理して側溝に流すとしながら、、雨水の放流設備が別にあることや濁水処理設備を通さずに放流していることを認めているのである。
 “工事に伴って発生する水”と雨水や湧水は別と言いたいらしいが、工事現場内で発生し、放流される濁水であることに変わりはない。
DSC00303-thumb-270x152-4665.jpg HUNTERの報道によって隠された放水口(写真)の存在が暴かれ、県民に約束した工事計画が守られていないことが明らかになったため、いずれも“工事に伴って発生する水”でありながら、雨水や湧水は別だという強弁に走ったに過ぎない。
 積み上げた汚泥が崩れ、溜まった“雨水”と混じっている現状を見る限り、直接濁水を河川(阿茂瀬川)に流す行為は悪質と言えよう。
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 放流水の水質基準が守られていなかったことについても、苦しい言い訳が続く。
 県および県環境整備公社は、同処分場工事にあたって放出する水のSSを「25mg/L」以内に押さえて放流するとしていた。(注:「SS」とは、放出水中に含まれる浮遊物質量を示す表記で水質汚濁を示す指標となる)。

 しかし、今年3月に環境汚染を心配した地元自治会などが工事現場から放出される水のサンプルを採取し、京都の検査機関に計量検査を依頼した結果、3月26日と27日の採取サンプルからそれぞれ「1000mg/L」と「170mg/L」のSS計量値が検出されていたのである。

 下がこの事実に対する公社の見解だが、《一時的》などと言い訳をしつつも、濁水が流れ出たことを認めざるを得なくなっている。濁水処理設備を通したとされる水でさえこの始末なのだ。
 阿茂瀬川に直接放流されてきた大量の濁水が、どれほど環境破壊を招いているか容易に推測が可能だろう。

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 4~7項目にかけて、同様のトンチンカンな回答が続いた後、最後の8番目の質問に対する公社側の答えが下の文書の記述である。

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 公社は、直接阿茂瀬川に濁水を放流している事実も、処理済のはずの放流水が汚濁していたことも認めていながら(証拠がある以上、認めざるを得ないだろうが)、処分場内の水を勝手に区別し、協定違反を否定しているのである。小役人の強弁とはいえ、あまりに幼稚な論法に開いた口が塞がらない。

 ただ、最大の問題となるのは、鹿児島県が主導する工事によって環境が破壊されるだけでなく、県民の生活や食の安全まで脅かす事態であるという点だ。

無視された薩摩川内市の意見書
 平成22年、薩摩川内市は、処分場建設への要望をまとめた意見書を伊藤祐一郎知事あてに提出していた。
 下がその一部であるが、処分場建設の主体が事実上は県であることを指摘した上で、建設工事に伴う濁水が河川に流れ込まないようにすることを求めている。

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薩摩川内市役所 これまで報じてきたとおり、同処分場工事では濁水を大量に河川に放流しており、この意見書の要請は無視されている状態だ。27日、薩摩川内市に現状を説明し、コメントを求めた。
 同市環境課は、これまでのHUNTERの記事は確認しているとした上で、次のように話す。「処分場建設工事が始まってから計3回、住民から阿茂瀬川に濁水を放流しているとの情報が寄せられた。その都度確認に出向いているが、市として確認はできていない。ただ、公社側に対し、住民から寄せられた声はきちんと伝えている」。

 建設現場内の濁水をポンプアップし、阿茂瀬川に放流していることや、公社側が“雨水”と主張する濁水に、汚泥が混じっている現状については、困惑しながらも「確認していないが、そうした状況なら話が違ってくるかもしれない。確認したい」としている。

 同処分場工事は、薩摩川内市の意見書でも指摘されているように、事実上県が進める事業である。公社の職員も大半は県職員の出向だ。
 工事を請け負っているのは大成建設と地場大手「植村組」を中心とするJVだが、脱法的な工事がまかり通る状況は異常としか言いようがない。
 県民の疑問にまともな回答さえ出せない事業には、県が言う「公共関与」を謳う資格などない。



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