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薩摩川内産廃処分場 デタラメ工事で自然破壊
県警捜査員も臨場

2012年8月22日 10:10

 鹿児島県薩摩川内市で、県が建設を強行している産業廃棄物管理型最終処分場「エコパークかごしま」(事業主・鹿児島県環境整備公社)の工事をめぐって、新たな問題が発覚した。

 処分場工事現場から、直下を流れる河川に大量の石材が流入しており、意図的な行為によるものだった可能性が浮上。現地取材において問題の現場で県環境整備公社の職員に遭遇したが、県警の捜査員が臨場していたことも確認された。

 脱法、違法のオンパレードとなった同処分場の建設工事にからみ、新たな環境破壊が証明されたことで、地元住民らから怒りの声が上がっている。
(写真は処分場工事現場の全景)

工事現場直下の川に大量の石材
 今月中旬、工事の監視を続けている地元住民らが、処分場直下を流れる阿茂瀬川に、「栗石(グリ石)」と呼ばれる、岩石を割って小さくした石材が大量に投じられた現場を発見した。
 「栗石」は、基礎工事を行うとき、地盤を固める目的で基礎の下に敷くもので、人工的に作られた建設用石材だ。
 この栗石が処分場建設現場から阿茂瀬川までの斜面に、ぎっしりと積み重なった状況となっており、最悪の場合、川の流れをせき止める可能性もあるほどだ。
 もちろん自然現状ではなく、不法投棄もしくは違法工事への懸念を抱いた住民らが警察に通報する事態となっていた。

 21日、取材のため阿茂瀬川に入ったHUNTERの記者が撮影したのが、下の2枚の現場写真だ。現場にいるのは、たまたま遭遇した県環境整備公社の職員である。

gennpatu 1864410515.jpg  gennpatu 1864410518.jpg

 問題の栗石が、処分場工事現場から阿茂瀬川までの斜面に敷き詰められた状態になっていることが分かる。どう見ても人為的な現象だ。
 公社の職員に不法投棄なのか違法工事なのか問い質してみたところ、「自然に流れた」と主張する。しかし、通常なら起こり得ない現象であることは一目瞭然である。

 地元住民に話を聞いた結果、ダンプで栗石を投棄する場面を見ていたとする証言も得られており、自然現象を否定する材料ばかりが揃った形だ。
 先月の取材時、問題の現場付近では、処分場工事現場から大量の濁水が放出されていたのを確認していたが、この濁水が斜面を削ったため、栗石を敷き詰めて崩落を防いだ可能性がある。
 仮に、処分場に積まれた栗石が自然と崩落したとしても、工事の杜撰さを証明するだけで、責任を免れるものではない。公費を投入した建設工事で繰り返される自然破壊の数々には呆れるばかりだが、問題はこれだけではなかった。

増やされた“隠し放水口”
 取材の帰途、これまで報じてきた“隠された放水口”を見上げたところ、いつの間にか放水口の数が三つから六つに増えていたのである(下の写真参照)。
 県側は、建設現場内の汚水について、濁水処理装置を通して一箇所から放水するとしてきており、この正式見解は現在も変わっていない。しかし、建設現場から発生する湧水や雨水は約束どおりの処理がされておらず、直接阿茂瀬川に垂れ流す状況が続いていた。
 隠していた放水口が見つけられた後、開き直った県側が放水口を増やしたものと見られる。ただし、写真でも分かるように、21日にはこの放水口から濁水を垂れ流すことを控えている。

gennpatu 1864410510.jpg → gennpatu 1864410525.jpg

環境破壊の証明
 前述した栗石の現場確認に、県警の捜査員が臨場していたためと見られ、川の汚染を隠したいという姑息な県側の意図が透けて見える。そして、この結果どういう現象が起きたか?下の2枚の写真を見比べてもらいたい。
 写真左が隠し放水口から大量の濁水が垂れ流されていた日の阿茂瀬川の状況、右が21日の同じ付近の画像である。水質が違うことは明らかだ。
 無法な放水を止めたために、川が元の清流の姿を取り戻していたのである。

濁水.JPG → gennpatu 1864410521.jpg

県警の捜査に期待
 100億円の公費を投入する同処分場工事をめぐっては、地元住民らの反対の声を黙殺した上、公表した工事計画を守らず、河川に濁水を垂れ流すなどの無法な工事が続いている。住民の声だけではなく、法律まで無視される事態だ。

 栗石投棄や隠し放水口が増やされた事実を知った地元住民からは、怒りの声が上がる。
「法律はもちろんだが、環境を守るというのは知事の公約ではなかったのでしょうか。栗石が川の流れをせき止めたら、困るのは県だけでなく、下流で阿茂瀬川の水を農業用水に使っている人たちなんです。濁水の垂れ流しについても、反省するどころか放水口を増やすという非常識な開き直りを平然とやっている。これが県のやることでしょうか。絶対許せない」(薩摩川内市在住の主婦)。

 工事を請け負っているのは、大成建設と地場ゼネコン「植村組」を中心とするJV(特定建設工事共同企業体)である。
 環境破壊を招いているのがJV側の脱法的な行為に起因することは間違いないようだが、最終的な責任が鹿児島県にあるのは言うまでもない。
 県警の捜査に期待したい。



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