鹿児島県が薩摩川内市で建設を進める産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称・事業主体は鹿児島県環境整備公社)の工事をめぐって、またしても県側の嘘や不適切な工事の実態が明らかとなった。
先月、隠されていた排水口から汚水を垂れ流している現状を報じたが、この際、取材に応えた環境整備公社側は「ポンプアップはしていない」と回答していた。
確認のため改めて現地取材したところ、「濁水処理して一箇所から放出する」(県側説明)としていた工事現場内の汚水をポンプで汲み上げ、問題の排水口から川に流していることが分かった。
工事現場内に積み上げられた"脱水ケーキ"が崩れ、溜まる一方の汚水の状態を、さらに悪化させている可能性も高い。
たび重なる県側の嘘や杜撰な工事の現状に、地元住民らから怒りの声が上がっている。(写真は、垂れ流される汚水によって変色した阿茂瀬川)
崩れる産廃の山
下の写真、ブルーシートに隠された部分は、積み上げられた「脱水ケーキ」が崩れた現場である。脱水ケーキとは、汚泥を脱水機にかけた後に残った固形物。つまり産業廃棄物である。
雨にたたられたことで、もろい脱水ケーキが崩れて流出しており、全景を見ればどれほどの影響が出ているのかが分かる。工事現場内に溜まる水が、さらに汚染されている格好だ。
汚水の大半、直接川へ
こうして溜まった汚水は、建設現場の上方にポンプアップされているが、問題はその行き着く先だ。
これまで県側は、建設現場内の汚水の処分について、濁水処理装置を通してきれいにした後、川に放出すると繰り返してきた。
下の写真が、処分場工事現場入り口に設置された濁水処理装置(奥の黄色い機械)で、手前に汚水を溜めるプールがあるのが分かる。
この程度の規模の装置で、場内の汚水を処理できるはずがないと見られていたが、工事現場内では雨水に加え大量の湧水が発生しており、汚水処理は追いついていない。
そこで、考え出されたのが、ひそかに排水口を設置して、県側の想定を超えた汚水を川に直接流すことだった。HUNTERが発見した阿茂瀬川沿いの三つの排水口がそれだ。
県側は当初、隠されていた「排水口」から流しているのは雨水と説明。その後、湧水が付け加えられたが、「ポンプアップはしていない」と明言していた。ポンプアップを認めれば、それまでの県側の主張(濁水処理して川に放流)を否定することになるからだ。
ところが、現地取材で捉えたのは下のポンプアップの現場だ。(下の写真参照)
次の写真では、ポンプアップされた汚水が、通路の下を通って、急造の側溝に流される仕組みになっていることが確認できる。
そして、側溝の先にあるのが、前回報じた三つの排水口で、汚水は処分場内を横切る「阿茂瀬川」に垂れ流されるという仕組みだ。県側の説明が虚偽だったことは明白である。(下の写真参照)
怒る地元住民
阿茂瀬川は、鹿児島県一の河川である「川内川」の支流で、汚染された水はこの大河に流れ込み、海に達する。
「環境先進県」を公約に据えてきた伊藤祐一郎知事だが、やっていることは紛れもなく環境破壊だ。
事実関係を知った地元住民からは、次のような怒りの声が上がる。
「(県側は)場内の汚水は、濁水処理して一箇所から流すと言っておきながら、こそこそと別の排水口を造り、川に汚水を垂れ流していた。約束だった排水基準さえ守られていなかった。なにが環境先進県だ。このままだと阿茂瀬川は取り返しがつかないほどの汚れた川になる。その先は川内川、そして海だ。環境や県民の生命をを守る立場の県が、ここまで無法なことをやっていいいのか」(地元在住の男性)。
「住民説明会の時から湧水の問題が指摘されていた。(湧水は)止めようとして止まるものではない。これからも汚水処理が工事関係者を悩ませることになる。処分場ができても問題は解決しない。結局、水の処理をめぐって自然環境を破壊し続けることになる」(薩摩川内市・50代男性)。
水質汚濁の現状
地元住民が話すように、排水基準が守られていなかったことも判明している。県環境整備公社の「整備公社だより」には、水質汚濁防止対策について濁度(SS)の目標値を「25mg/L」とすることを明記している(注:「SS」とは放出水中に含まれる浮遊物質量で、水質汚濁を示す指標のひとつ)。
地元向けの説明でも繰り返されてきた数字だが、濁水処理されたはずの排水からは、「1000mg/L」という途方もない計量値が検出されているのである。
環境を守るためと称して、反対する地元住民の声を黙殺し、100億円もの公費を投入する処分場建設工事が自然を破壊する現実・・・。
鹿児島県では、行政機関による犯罪行為が現在も堂々と続けられているのである。