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福岡県 原発安全協定の協議過程を再び非開示 

2012年7月25日 10:05

福岡県庁 今年4月、福岡県および福岡・糸島の両市が、九電との間に玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)に関する安全協定と覚書を締結した。安全協定とは名ばかりで、協定の実態は「通報・連絡」の取り決めに過ぎなかったが、その協議過程の記録開示をめぐって、福岡県の隠蔽姿勢が露わとなった。

協議過程明かさぬ福岡県
 問題の協議過程については5月、HUNTERの福岡県に対する情報公開請求に対し、次の4点の公文書が非開示とされていた。
 ・「九州電力との協定書協議(第1回)議事録」(H23.11.25)および「第4回協議」(H24.3.9)の議事録
 ・「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」(H23.11.29)
 ・「平常時の連絡項目の取り扱いについて」
 ・「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」(H24.1.16)

 この折、九電との協議の議事録が第1回と第4回のものしか作成されておらず、2回目と3回目の議事録が、「未完」(県の説明)のままになっていることが判明。県側は不完全な文書は「公文書ではない」として、開示・非開示の判断対象にもしていなかった。
 作成途中の文書とはいえ、存在する以上「公文書」であることに変わりはない。県に抗議すると同時に、非開示決定に対する異議申立てを行っていた(異議申立てに対する決定時期は未定)。

 県側はその後、未完の議事録について作成する必要性を認め、作成した段階で、改めて開示・非開示の判断をするとしていた。

再び「非開示」-鮮明になった隠蔽姿勢 
 今月に入り、2回目と3回目の協議の記録を職員の記憶に従って作成したことが分かったため、改めて情報公開請求を行ったが、県の結論は下の文書の通り。前回と同じ理由で「非開示」とするものだ。

公文書非開示決定書

 しかし、この非開示理由は、妥当なものとは言えない。
 《記録の内容について相手(注・九電のこと)の確認を得ていない》というが、当初の開示請求から3ヶ月近く経っており、この間に九電側に確認を求めることは容易だったはず。
 安全協定が県民の生命・財産を守るための重要な取り決めであることを考えれば、どのような協議過程が今回の協定につながったのか、明らかにする義務がある。そのために必要なら、関係機関どうしで内容の確認を行うのは当然のはずだ。
 内容の不確認は、県の故意によるものとしか思えない。

 《機微にわたる部分が含まれている》、《これを開示すれば相手との信頼関係を損ない》との非開示理由もおかしい。
 県とともに協定締結に参加した福岡市や糸島市が、協議過程の記録を含むすべての情報開示に応じており、県だけが協議記録を隠す必要がなくなっているからだ。
 県の担当には、福岡、糸島両市が協議記録を公開したことを伝えており、県だけが非開示にする意味がないことを再三伝えてきたのだが、聞く耳を持たなかったようだ。
 重要視されるのは県民との信頼関係であって、電力会社との仲ではない。

遠のく「信頼」
 小川洋福岡県知事は経済産業省出身、九電との折衝にあたった県の総務部長は総務省からの出向だ。
 今回の原発安全協定は、形の上では原発を推進してきた霞ヶ関官僚と電力会社による合作と言っても過言ではない。その協議過程を隠すということは、県民の知る権利を無視しても九電を守るという県の意思表示に他ならない。

 拡がり続ける「脱原発」の声は、電力会社や国をはじめとする行政への不信の表れでもある。
 原発安全協定という県民の未来に関わる事案の決定過程を隠蔽するというのなら、県と九電に対する信頼など得られるはずがない。
 福岡県は、福島第一原発の事故から何も学んでいない。



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