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検証・鹿児島県政

2012年7月 6日 10:05

ポスター掲示板 8日投・開票の鹿児島知事選挙に絡み、鹿児島県が現職知事陣営に大量の写真を提供していた。
 写真は知事の後援会報やマニフェストに転用されており、明らかな便宜供与だが、知事陣営も県も、事実関係を隠蔽して逃げ切る構えだ。

 鹿児島県では恣意的な県政運営が常態化しており、権力者の言いなりに動き、ことが露見すると隠蔽に走る体質は病的でさえある。根太が腐っているということだ。

 改めて鹿児島県庁の実態について検証する。

「倫理規程」は絵に描いた餅
 平成19年、鹿児島県は「鹿児島県職員倫理規程」を制定。第一条には、その目的を次のように明記している。

鹿児島県庁《この訓令は、職員の職務に係る倫理の保持に必要な事項を定めることにより、職務の執行の公正さに対する県民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する県民の信頼を確保することを目的とする》。

 さらに、第3条"職務に係る倫理原則"では、こう規定する。
職員は、県民全体の奉仕者であり、県民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について県民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等県民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
2 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない
》。

 知事選を前に現職陣営に公務上の写真を大量に提供する行為は、《一部に対してのみの奉仕》であり、《職務上知り得た情報について県民の一部に対してのみ有利な取扱い》だ。《公正な職務の執行》では断じてない。明らかに倫理規定の趣旨を踏みにじるものだろう。

 規定にあるように、県職員は県民全体への奉仕者であり、知事の政治活動の手助けをするために存在しているのではない。しかし、写真提供と事実関係の隠蔽は、知事のための県政と化した現状を如実に物語っている。

情報公開拒否で見せた県政の歪み
建設中の産廃処分場(薩摩川内市) 似たような話は昨年から続いている。
 平成23年11月、鹿児島県は薩摩川内市の産廃処分場建設(写真参照)や鹿児島市松陽台の県営住宅建設などに関するHUNTERの情報公開請求に対し、開示を拒否するという前代未聞の暴挙に出る。県情報公開条例に違反する行為である。
 理由は「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと判断致しました」というわけの分からないものだったが、それまでのHUNTERの伊藤県政批判が知事の逆鱗に触れたためとも言われている。

 結局、新聞社の取材を受けて方針転換したのだが、この件に関して知事は平然と責任逃れをしていた。今年2月の定例会見での新聞社記者とのやりとりである。

 新聞社:情報公開について伺います。昨年、産廃処分場や松陽台の県営住宅について情報公開請求に対して、開示・非開示いずれについても決定を行わないという対応がありましたが、この問題について知事のお考えを伺いたいと思います。
 知事:最終的に情報公開したのではないかと思います。若干時間がかかったり、ましてや産廃はあそこで最大限の事業展開をしていた時期でもありますので、それはそれであり得る事かと思いますね。なるべく情報公開すべきだというのは、こういう時代でもありますので。そしてまた実際に、ほとんどのデータが公開されていると思います。

 新聞社:特に問題はなかったという認識でしょうか。
 知事:特に問題があったとは思いませんね。若干時間がかかったという指摘があるとすると、まぁまぁ、ああいう状況なのでという事はあり得ると思います。

 前述したとおり、「最終的に情報公開」したのは、取材と報道を受けてのこと。自主的に方針転換したのではない。
 「若干時間がかかった」というのも真っ赤な嘘で、開示請求から2か月以上が経過しての事件だった。条例で定めた決定期限さえ守られていない。
 県側は、いったん受け付けた情報公開請求に対し、決定期限を引き延ばした上で開示決定の義務を放棄、さらにはどう処理するかの連絡さえよこさない方針だと明言していたのである。

 権力者の醜い強弁には慣れていたつもりだったが、これほどひどい知事にはお目にかかったことがない。「特に問題があったとは思いませんね」との一言は、驕り高ぶる官僚の姿勢そのままだ。
 この知事にとっての情報公開とは、「なるべく情報公開すべき」程度のものなのである。これでは、まともな地方自治が実現できるはずがない。

県庁内部からも批判の声
 ある県庁職員は次のように話す。
「現在、県庁内部はなんでもかんでも知事の意向を聞いてから動くという悪弊がしみついています。『知事に聞いてから決めよう』、『知事がこう言っているから』・・・。ひどいと思うのは『これは知事のご友人からの案件だから、間違いのないように』。一体誰のための県政なのか分からない。薩摩川内(産廃処分場の建設現場)への出張命令にはウンザリでした。現地に行けば居並んでいるのはお年寄りばかりでした。税金もらって仕事してる県庁職員が、納税者のしかもお年寄りを数の力で弾圧するんですよ。泣きたくなりましたね。ひどい。逆らえば配置転換の対象になるという恐怖感。うち(鹿児島県庁)は狂ってる」。

 別の県関係者も同様だ。
「権力は長く続くと腐敗するものですよね。いまの県政は、知事周辺の特定の人たちだけの声が優先される形になっている。職員は知事の意向ばかりを気にして、県民の声に耳を傾けようとしない。処分場や県営住宅の問題は、知事にとって一番触れてほしくない話だった。それが次から次へと問題点を暴露され、相当頭にきている。それでも反省なんて言葉は知事の辞書にはない。これでいいはずがない」。

 県政とは、県民のためにあるべきものだが・・・。 



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