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計画停電の「お知らせ」に見る九電の傲慢体質
弱者への配慮は皆無

2012年7月 4日 10:40

計画停電に関するお知らせ 節電の夏到来とともに、九州電力から計画停電のお知らせが送られてきた。九州電力管内の全世帯に郵送されているものだが、記載内容を見る限り、地域独占が許された公益企業の驕りとしか思えず、この会社の体質が変わっていないことを示している。

 とくに問題なのは、弱者への配慮のなさである。事情を調べるうち、九電の無責任さが浮き彫りとなった。 

疑問だらけの記載内容
 先日、近所のお年寄りが問題の「計画停電に関するお知らせ」を持って、どう解釈すればいいのかと相談に来た。
 話を聞くと、
・字が小さくて見えない
・どう理解すればいいのか分からない。
・虫眼鏡(ルーペ)で確認したが、意味が分からない。
・『原則、実施いたしません』とあるが、どっちが本当なのか。
等々、次から次へと九電への恨み節が続く。

 相談に来たお年寄りは、夫婦2人の年金暮らし。高い購読料のわりに内容のない新聞は数年前に断ったといい、情報を得る手段としてはテレビしかない状況。笑いながら「世情に疎くなった」と話すが、まさか自分のところが停電の対象になるなど考えてもいなかったという。

 電力需要のピークはどう見ても8月。"大丈夫だよ"と言いながら、お知らせの内容を詳しく説明しようとしたが、今度は記者の方が疑問を抱え込む形となってしまった。
(下が九電からのお知らせ、赤いアンダーラインと黒塗りはHUNTER編集部)

計画停電カレンダー

 たしかに、印刷された文字は全体的に小さく、お年寄りが判読するのは難しいかもしれない。とくに"お知らせ"冒頭の《原則、実施いたしません》(赤いアンダーライン部分)のくだりはさらに文字のポイントが落とされており、インチキ契約書の但し書き状態だ。
 記された内容も首をひねりたくなるようなものばかりで、読み進むにつれ怒りがこみ上げてきた。

 まず、《万が一計画停電を実施した場合、次回は、未実施のサブグループから対象とします》(赤いアンダーライン部分を参照)とあるが、これではさっぱり要領を得ない。
スケジュールの変更を意味しているのだろうが、あまりに不親切な記述である。

計画停電を実施する場合のお知らせ 裏面には、《計画停電を実施する場合でも、カレンダーに記載されたサブグループすべてで実施するわけではありません》。九電が決めた「計画停電サブグループ」とやらにどの程度の戸数(あるいは事業所)が含まれているのか分からないが、読み手に誤解を与えかねない表現だ。
 現に、"お知らせ"を持って相談に来たお年寄りは、「ひとくくりのグループの中でも停電する家とそうでない家がある」と思っていたのだと言う。

 周知の仕方にも疑問が残る。九電は《記者発表するとともに、ラジオCMおよび当社ホームページでお知らせいたします》とするが、正直『それだけか!』と言いたくもなる。ラジオとパソコンに無縁なら、テレビと新聞で確認しろということなのだろうが、あまりに無責任だ。
 停電実施は前日の午後18時ごろと、当日の2時間程度前に公表するとしているが、『ごろ』とか『2時間程度前』といった言い草はふざけているとしか思えない。これが公益企業のやることだろうか。
 結局、お年寄りと2人で悲憤慷慨する始末となってしまった。

弱者置き去り
 最大の問題は、お年寄りをはじめとする弱者への配慮のなさである。裏面に記された下の記述を見ていただきたい。

計画停電時の注意事項

 自宅で医療機器を使用している客は、事前に病院に相談しておけということらしいが、後々責任を追及された場合の逃げ道を用意しただけのことで、誠意のかけらもない。

 問題はまだある。念のためご町内の独居老人宅を訪ねて聞いてみたが、九電や町内会からは特別な指導や案内はないという。

 九電のコールセンターに確認したところ、「独居老人宅に対する特別な案内はしていません」。それでは独居老人はどうやって対処すればいいのかと聞いてみたが、返ってきた答えは驚くべきものだった。
「原則、計画停電は実施しないというのが当社の方針ですから・・・」。
 これでは何のための"お知らせ"か分からない。あまりに市民を馬鹿にしている。

 九電の狙いが川内(鹿児島県薩摩川内市)、玄海(佐賀県玄海町)両原発の早期再稼働にあるのは言うまでもないが、電力不足への不安をあおって世論形成を図ろうとする手法は、到底容認できない。

 それでも計画停電を実施するというなら、弱者を置き去りにするような手法は改めるべきである。



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