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嘘は政治家の始まり

2012年6月18日 09:45

野田 「嘘は泥棒の始まり」という諺がある。他方で「嘘も方便」ともいう。善意の嘘と悪意の嘘があるのも確かだ。
 政治の世界では、知っていても「知らない」ととぼけ、会っているのに「会っていない」と否定してみせることが容認されてきた。腹芸も政治家に必要な素養のひとつで、時として人物を大きく見せることさえあったほどだが、この国の政治家の質が低くなるにつれ嘘が悪質になった。

 嘘をついて金品を奪い取ることを詐欺というが、原発再稼働と増税を決めた野田首相の手法はピタリとそれに当てはまる。奪われるのが国民の生命や財産であることを考えれば、野田佳彦という政治家は希代の詐欺師、極めつけの悪党と言っても過言ではない。(写真:民主党ホームページより)

 それにしてもこの国には悪質な嘘をつく政治家が増え過ぎた。

原発めぐる嘘
 詐欺と見なされるかどうかは、前提となる話に「嘘」が存在するかどうかだ。「原発が再稼働しなければ国民生活を守れない」という首相の主張がまさにそれで、いったん事故が起きれば、国民の財産どころか命まで奪ってしまう施設が国民生活の砦であるはずがない。
 首相は「事故を防止できる対策と体制は整っている」と明言したが、信じる国民は皆無に近いだろう。原子力ムラの人間でさえ、ここまで平気で虚言を並べることはできないはずだ。

 とくに再稼働が決まった大飯原発の安全対策は不十分で、災害時に重要な役割を果す免震棟もなければ放射性物質の放出を抑えるベントフィルタも未整備。政府が示した30項目の暫定基準さえ満たしていないうえ、オフサイトセンターやSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)といった原子力災害から近隣住民を守るためのシステムも改善されていない。首相の言う「対策と体制」は、絵空事なのである。

 政治家は詭弁を弄する生き物だが、「事故を防止できる対策と体制は整っている」という首相の一言は、単なるごまかしではなく、明らかな嘘。原発に事故が発生すれば、この嘘によって奪われるのが国民の命や営々として築かれた財産であるということを忘れてはならない。

増税めぐる虚
 政権交代が実現した平成21年の衆院選で民主党が掲げたマニフェストには、消費増税の必要性などどこにも記されていない。つまり、約束していないことに"政治生命"とやらをかけて、強硬に推し進めるという不可解な事態となっているのである。

民主党 一方で、子ども手当て、後期高齢者医療制度の廃止、最低保障年金制度の創設といった目玉政策は、次々と反故にされている。
 「コンクリートから人へ」と言っておきながら、政権交代の象徴となった八ッ場ダムの建設を推進する方向に転換したり、長崎新幹線のフル規格建設、高速道路建設促進など、巨大公共事業への税金投入を容認する姿勢は「変節」の一語で括れるほど生易しい裏切りではない。

 すべての公約の前提となる「支出の無駄を削る」という約束も守られていない。
 基礎的財政収支(プライマリーバランス)とは国債の利払いや償還分を除いた一般歳出と、国債発行で賄う分を除いた歳入(税収が主)についての財政収支だが、民主党は、財政健全化の方針として、平成27年度までにこの赤字を平成22年度の半分以下とし、32年度までに黒字化を目指すとしてきた。しかし、この約束も到底実現できないことが明らかとなっている。

 過去最大の予算規模となった今年度予算では、国債発行額が40兆円を超えており、基礎的財政収支の赤字は約22兆円に上る。歳出カットが至上命題のはずだが、特別会計と国債でごまかした予算で過大な支出を支えているため、借金だけが増え続けているのだ。震災復興にカネがかかるとはいえ、他で歳出削減が進んでいないことの証しでもある。
 こうした失政を糊塗するための小手先の策が、権力側にとっての"打ち出の小槌"である消費増税ということなのだ。

 ただし、消費増税が全体の税収を押し上げ、財政再建に資するという政権の主張も虚構に近い。
 下のグラフは、左が昭和62年から平成22年までの一般会計における年度ごとの税収額を示したもので、右が財務省が公表している主な税目ごとの税収の推移を示すグラフだ。消費税が導入されたのは平成元年である。

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 消費税が導入された同年に、税収総額が4兆円ほど増加しているが、翌平成2年と同3年の伸びはバブル期の最後で所得税収が大きく伸びたことに起因する。
 折れ線グラフによれば、消費税率が3%から現行の5%に引き上げられた平成9年に消費税分が3兆円強の増収となっているのだが、左の棒グラフで分かるように税収全体は1.8兆円程度の伸びでしかない。
 翌10年からは不安定な状況が続き、サブプライムローン問題に端を発した政界的金融危機と平成20年のリーマンショックで、所得税、法人税ともに大幅減収。平成21年の税収はついに40兆円を下回るという事態になっている。

 つまり消費税は、一定の税収を担保する性格を持つ税源ではあるが、税収全体を押し上げる性格のものではないということだ。
 財政健全化の鍵を握っているのは所得税や法人税の動向であり、喫緊の課題はデフレ対策を行って景気を上向かせることなのである。消費増税で経済が冷え込めば、この国の経済は極めて深刻な状況となるだろう。

自民、公明 ― 同じ穴のムジナ
自民党 民主党には愛想が尽きたが、野党自民党と公明党も、しょせんは同じ穴のムジナである。
 両党とも政策の基本的な方向性は野田首相と一致しており、目的を解散総選挙に置いている点だけが違っているに過ぎない。

 原発推進も消費増税も本家本元は自民党のはずだが、福島第一原発の事故について、自民党が正式に謝罪したこともなければ、国家財政を破綻させた責任をとった政治家など1人もいない。
 民主党の敵失に助けられて命脈を保ってはいるが、国会議員の質が高いとも思えない。自民党が存在感を保持し得ているのは、地方議員の数と力によるものなのだ。

 原発再稼働や増税に同意した公明党には、福祉や平和を売りにしてきたかつての面影は露程も残っていない。増税法案の修正協議においては、社会保障に関する民主党案に難色を示しながら結局は合意。政権与党の座に長く居すぎたせいか、庶民の味方がいまは昔の話となってしまった。

 合意しておきながら、野党側は「民主党がマニフェストを撤回した」と言い、民主党は「旗は降ろしていない」などと反論する。どちらかが嘘をついているということだ。
 呉越同舟で"玉虫色"の決着を図ったが、国民の不信の目は与野党双方に向けられている。

地方も同じ
 地方政治の場でも悪質な輩が増えた。とくに原発立地自治体の知事には胡散臭さがつきまとう。
 やらせメールの古川康佐賀県知事、電力消費地の住民を平気で脅す福井県知事、極め付きは鹿児島の伊藤祐一郎知事である。

 この知事は公金を使って管理型の産廃処分場を建設することに執念を燃やしており、そのために土砂災害の危険性が県内一高い場所を日本で一番安全であるかのように主張してきたのである。処分場にかかる事業費が100億円という途方もない金額であることを考えると、この嘘は県政史上に残る最悪なものと言えるだろう。

子どもも見放す日本の政治
 政治不信の原因は、政治家が平然と見え透いた嘘をつくところにある。守られない公約(マニフェスト)は最たる例だ。
 「末は博士か大臣か」と言われた時代があったはずだが、現代の子どもたちが政治家の姿を見て尊敬の念を抱くとは思えない。今も昔も、大人は子ども達に「嘘をつくな」と教えるからだ。「嘘は泥棒の始まり」でもある。泥棒がらみでは「盗人に追い銭」という諺もあり、開き直る政治家の姿は「盗人猛々しい」ということになろう。「嘘は政治家の始まり」とでも言いたくなるような惨状だ。

 この国にとって必要なのは、原発を再稼働させることでも増税することでもない。信頼できる政治家を育てることこそ急務なのではないだろうか。



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