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福岡県原発安全協定 九電との議事録を非開示
未完で放置の議事録も

2012年5月24日 09:15

 福岡県は23日、九州電力との間で締結した原発の「安全協定」に関する議事録や県としての対処方針を記した文書などを「非開示」扱いにすることを決め、情報公開請求を行っていたHUNTERの記者に通知してきた。

 県に開示を求めていたのは、協定締結に至るまでの県と九電との交渉過程を示す文書。これに対し県は、開示決定期限を2週間延長した末、核心部分を隠蔽するという手段に出た。

 さらに、一部の議事録を未完のまま放置するなど、意図的に交渉過程の記録を残さなかったことも明らかとなっており、不十分な協定の裏に公表できないやり取りがあったことが確実となった。

隠蔽された九電との協議過程
 今年4月、福岡県および福岡・糸島の両市は、九電との間で玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)に関する安全協定と覚書を締結した。
 この協定に関する九電との交渉過程を示す文書について情報公開請求したところ、3自治体とも同じ理由で開示決定までの期間を延長。「開示・非開示の判断に時間を要する」として情報開示に慎重な構えを見せていた。
 
 決定期限の23日、県が開示に応じたのは記者クラブなどに配布した資料など、すでに内容が公表されているものばかり。交渉過程を検証するために、もっとも重要となる九電との協議の模様を記した議事録などは「非開示」となった。
 県が非開示とした公文書の件名と非開示理由を記したものが下の文書である。
 
gennpatu 228.jpg

 県が開示を拒んでいる公文書は4点。
・「九州電力との協定書協議(第一回)議事録」(H23.11.25)および「第4回協議」(H24.3.9)の議事録
・「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」(H23.11.29)
・「平常時の連絡項目の取り扱いについて」
・「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」(H24.1.16)
 
 福岡県が九電と締結した安全協定は、玄海原発で事故が発生した場合に九電が迅速に連絡することを定めているだけ。関西圏などの自治体が求めている原発立地自治体並みの厳しい内容とは程遠いものだった。
 なぜこうした不十分な協定になったのか。協定締結のいきさつを検証する上で欠かせないのが、交渉過程で残された議事録やメモ、県の方針決定文書などであるが、県は九電との信頼関係が損なわれることなどを理由に非開示を決めたとしている。
 隠蔽姿勢を顕わにしたことで、これらの文書の中に見られてはならないものが存在するということを証明する形となった。

一部議事録は「未完」のまま
 問題は、九電との協議の議事録が第1回と第4回のものしか作成されていないことだ。
 県側に残り2回の議事録の存在を確認したところ、第2回と第3回の議事録は「未完」(県の説明)のままになっていることを明言。そのうえで不完全な文書は「公文書ではない」として、開示・非開示の判断対象にもしていないことを明らかにした。
 
 第1回目で論点の整理、2回目、3回目で協定書の内容を詰め、4回目の協議で成案を得たとするなら、議事録を未完のままにしたという2回目、3回目の協議こそもっとも重要なやり取りがなされたと考えるのが普通だ。県側があえて「未完」と主張するのは、意図的に協議内容を隠したということに他ならない。
 
 未完であろうと、協議が協定締結につながっていることは確かだ。作成された文書は県内部で共有されたものと解され、「公文書」であることは疑う余地もない。

誰のための安全協定か
 gennpatu 230.jpg「安全協定」は、県民の安全を確保するとともに、原子力行政への不信を取り除くための重要な仕組みだ。当然ながら協定締結までの過程をオープンにして県民の信頼を得るべきである。にもかかわらず肝心の議事録を隠蔽する県の姿勢は、自ら協定の不透明さを宣伝しているに過ぎない。
 
 県は、HUNTERの情報公開請求に対し、開示・非開示の決定を下すまでに1か月もかけている。九電側に「記録の正確性」(非開示理由に記された文言)を確認する時間的余裕は十分過ぎるほどあったはずだ。
 情報公開を求められた公文書の性格上、県が九電側に問い合わせを怠るはずはなく、「非開示」の方針は同社と県との相談の結果と見る方が自然である。この推測が事実なら、九電はいまだに隠蔽体質のままということになる。
 
 一連の県の対応によって、不十分な「安全協定」が、県民のためではなく、原発再稼働に向けての道具だった可能性が高くなってきた。


*次稿で、開示された文書および非開示決定についての詳細な検証を行う予定である。



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