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福岡市人工島事業 なかった液状化否定の根拠
市民からも批判の声

2012年5月11日 09:40

000022.JPG 福岡市(高島宗一郎市長)が市内東区で進める人工島(アイランドシティ)事業で、これまで市側が「問題ない」としてきた地震発生時の「液状化」について、被害予測などの積極的な調査を一切行っていなかったことが明らかとなった。
 
 HUNTERの福岡市に対する情報公開請求で分かったもので、市側の説明に根拠がなかったことを示す事実。土地売却が進まず市のお荷物となっている巨大事業に、新たな懸念材料が加わった形だ。

 事情を知った市民からは、厳しい批判の声が出ている。
(写真は、福岡県西方沖地震の翌日に撮影した人工島の状況)

西方沖地震で液状化 
 下の2枚の写真は、平成17年3月20日に起きた「福岡県西方沖地震」で、福岡市東区の人工島(アイランドシティ)が受けた被害状況である。撮影は地震発生の翌日で、最も顕著に液状化現象が現れた箇所が、「香椎アイランドブリッジ」から「海の中道大橋」にかけてのアイランドシティ1号線沿い。つまり「新こども病院」の移転予定地西側に沿った道路だ。大半の電柱が大きく東側に傾いているほか、液状化による噴砂、フェンスの倒壊、地割れなどが確認されている。このほかにも島内数ヶ所で液状化現象が起きていた。 

000021.JPG   000033.JPG

楽観論 ― じつは根拠なし 
 福岡市はこれまで、人工島での液状化を懸念する声に対して次のような回答を続けてきている(以下、同市ホームページより)。

《福岡県西方沖地震におけるアイランドシティにつきましては、臨港道路アイランドシティ1号線の整備予定地等において、数ヶ所の噴砂現象が確認されておりますが、既に埋め立て工事が竣功し、地盤改良が完了しております住宅等の分譲地での液状化現象は起きておりません》。

gennpatu 010.jpg 住宅等の分譲地で液状化が起きていなかったのは事実で、間違った主張ではない。しかし、福岡県西方沖地震の震度は「6弱」。それ以上の地震に対する見解は述べられていないのである。

 それでは、福岡市として人工島の液状化についてどの程度の検討を行ってきたのか。改めて関連文書の開示を求めたところ、「公開請求に係る公文書を保有していない」という非公開決定通知が送られてきた(右の文書参照)。

 念のため事業を所管する市港湾局に確認したところ、市として被害予測についての調査や検討をしたことはないという。市は人工島の液状化について、楽観論を展開するための"根拠"を持ち合わせておらず、これまでの市側の主張は"虚構"だったことになる。
 根拠がないのに「安全」という主張を繰り返す手法は、崩壊した原発の「安全神話」とまったく同じだ。

「こども病院移転計画調査委員会」への疑念  
 ここで問題になるのは、こども病院の人工島移転を審議した「こども病院移転計画調査委員会」(委員長:北川正恭元三重県知事)における議論だ。
 同委員会で、液状化を心配する市民の声を否定する根拠として示されたのが西方沖地震の時の状況だった。
 前述した《福岡県西方沖地震におけるアイランドシティにつきましては、臨港道路アイランドシティ1号線の整備予定地等において、数ヶ所の噴砂現象が確認されておりますが、既に埋め立て工事が竣功し、地盤改良が完了しております住宅等の分譲地での液状化現象は起きておりません》との見解を踏まえたもので、きちんとした調査・研究のデータなどは示されていない。
 消化不良の観が否めない議論だったが、原因が根拠のない主張を繰り返した市側にあったことは言うまでもない。議長役を務めた北川氏は今年度から市の顧問に就任しているが、不十分な議論をリードした責任はないのだろうか。

「原発と同じ!」 ― 市民からも批判の声
 市が人工島の液状化に関する被害予測などの検証を行っていなかったことについて、市民からも厳しい批判の声が上がっている。

「いい加減な話で市民を騙してきたということでしょう。こども病院の人工島移転問題でも、市は液状化について『問題ない』『心配はいらない』と繰り返していた。何の裏付けもなかったなんて、市民をバカにするなと言いたい」(早良区・40代主婦)。

「原発の安全神話と同じだね。役所や学者が根拠のない話をもっともらしく垂れ流してきただけ。形だけでも調査したんだろうと思っていたけど、何もないとは・・・。市民の安心・安全より人工島のイメージを守ることの方が大切だということだよね」(中央区・60代会社社長)。

「こども病院移転計画調査委員会の議論が、人工島ありきで進んだ証拠。北川さん(委員長)と市は最初からぐるだったんじゃないか?」(南区・50代自営業男性)。

求められる早急な調査・研究 
 東日本大震災の発生以来、「想定外」という言い訳は通用しなくなった。西方沖地震の被害状況だけを拠りどころとした「問題ない」とする福岡市の主張は、想定可能な経験の範囲内でしかものを考えていないことの証だ。
 安全対策上必要な検証を怠っている市の現状は明らかに不適切で、市民を安心させるためにも早急に液状化についての調査・研究を行うべきだろう。

 昨年4月の定例会見で、高島市長は次のように述べている。「福岡としてもですね、この震災の対策、防災の対策ですね、これをまた今回の震災をきっかけにですね、きちっと見直しつつ、市民にしっかりと安心安全というものを発信していかなければいけないなというふうに改めて思った次第でございます」。

 市役所の改装や二階建てバスの購入に億単位の公費をばら撒く高島市長だが、カネのかかるパフォーマンスばかりでは福岡市民の安全は保証されないということを理解するべきだ。



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