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原発再稼働で問われる立地自治体首長の資格

福井県でも原発マネー還流

2012年4月16日 11:00

大.jpg 関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)3、4号機の再稼働に向けた動きが最終段階に入ろうとしている。
 またしても立地自治体の首長だけに注目が集まる状況だが、福井県の知事やおおい町の町長に原発の是非を判断する資格があるとは思えない。
 九電玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)のケース同様、福井県でも原発マネーが首長らに還流しているからである。
 改めて西川一誠福井県知事の政治資金と原発マネーの関係について調べてみたが、浮かび上がったのは、やはり原発マネー還流の構図だった。
(写真は大飯原発。福井県庁ホームページより)

旧自治省出身の知事たち
 福井・西川一誠、佐賀・古川康、鹿児島・伊藤祐一郎。3人の県知事に共通しているのは、大学卒業後に入省したのが旧自治省(現・総務省)だったことだ。
 旧自治省といえば、明治期から終戦まで巨大な権限を有し"官庁の中の官庁"と言われた旧内務省の流れを汲んでおり、ことのほか「お上意識」の強い役所だった。そのせいか、3人とも霞ヶ関の意向を重視し、経済界に配慮した姿勢ばかりが目立つ。
 
 そのぞれの県に立地する原発をめぐる国との駆け引きにおいて役人上がりのしたたかさを見せる一方、真意が早期の「再稼働」にあることを隠そうともしない。
 もともと国民の暮らしや少数意見を大切にするという思考法を持ち合わせていないうえ、知事選を含めた政治資金の出所を見れば、彼ら自体が"原子力ムラ"の住人であることが一目瞭然となる。
 政党支部を持たない首長にとって、カネを捻出する方法は個人献金か「政治資金パーティー」ということになるが、頼みは地元の経済界。西川福井県知事の場合も、その傾向は顕著だった。

知事の政治活動支える経済界
 西川知事は、旧自治省官僚から福井県副知事を経て平成15年に知事に初当選。平成19年、同23年と当選を重ね3期目を迎えているが、選挙を含めた政治活動全般を支えているのは、地元経済界が提供する政治資金である。
 
 平成18年、地元経済界が中心となって政治団体「福井経済産業政治連盟」が設立される。同団体はこの年、3回の政治資金パーティーを開催し、合計約8,300万円を集めているが、そのうち3,000万円が翌19年に西川知事の支援団体「西川一誠後援会」へ寄附されていた。
 平成19年の同後援会の収入は約3,900万円で、福井経済産業政治連盟からの3,000万円だけで知事側政治資金の8割近くを占めていたことになる。

 その福井経済産業政治連盟が開催した平成18年の政治資金パーティーの開催状況は次の通りだ。

・「福井経済産業政治連盟設立記念の集い」→収入1,742万円 対価の支払をした者295人 
・「経済産業活性化フォーラム」→収入4,693万9,475円 対価の支払をした者583人 
・「関西連携フォーラム」→収入1,890万円 対価の支払をした者104人 
 
 収入額をそれぞれのパーティーにおける"対価の支払をした者"の数で割ると、1社(あるいは1人)平均は、「設立記念の集い」が59,000円、「活性化フォーラム」が80,500円、「関西連携フォーラム」に至っては180,000円となる。
 "広く薄く"ではなく、少ない企業(あるいは個人)からまとまった政治資金の提供を受けた形だ。

 この年、福井経済産業政治連盟から20万円以上のパーティー件を購入した企業は30社ほどになるが、翌年に知事選を控えた平成22年になると、同じような顔ぶれの企業が、直接「西川一誠後援会」主催の政治資金パーティーでパー券を購入する形に変わっている。
 同後援会の平成22年の政治資金パーティーの開催状況は次のようになる。

・「西川一誠知事と語る新春の集い」→収入1,289万6,000円 対価の支払をした者629人 
・「西川一誠知事と福井の未来を語る集い」→収入5,594万5,790円 対価の支払をした者591人
 
 「未来を語る集い」では、1社(あるいは1人)あたりの購入額が「新春の集い」の5倍近くになっており、無理なカネ集めだったことがうかがえる。

原発銀座
 "原発銀座"と言われるように、福井県には原子力施設が集中している。
・関西電力 大飯発電所1、2、3、4号機
・関西電力 美浜発電所1、2、3号機
・関西電力 高浜発電所1、2、3、4号機
・日本原子力発電(株)敦賀発電所1,2号機
・日本原子力研究開発機構 新型転換炉ふげん発電所
・日本原子力研究開発機構 高速増殖原型炉もんじゅ
 
 これだけあれば、県内の多くの企業が、関電や日本原子力発電、原子力研究開発機構から仕事をもらうほか、電源立地地域対策交付金を原資とした事業に絡む機会も増える。そうして得た利益は、知事や地元政界に流れ、原発マネー還流の構図が築き上げられる。

原発マネー還流
 原発マネー還流の仕組みを端的に表しているケースがある。
 福井県を代表する商社「三谷商事」(本社・福井市)は、平成18年に福井経済産業政治連盟が開催した「経済産業活性化フォーラム」と、平成22年に西川一誠後援会が開いた「西川一誠知事と語る会」にそれぞれ150万円を支出している。
 
 一方、福井県は平成20年度から「電源立地地域対策交付金」を利用して、県内の高校に教育の一環としてパソコン・ネットワークの整備を始めている。
 そして前出の三谷商事は、この一連の事業において、平成20度に24件・約1億2,000万円を、21年度には34件・約2億円分の仕事を受注していたのである。

 また、福井経済産業政治連盟と西川一誠後援会の政治資金パーティーで、パーティー券計90万円分を購入した地場ゼネコン坂川建設(本社・福井市)は、平成21年に中学校の大規模改造工事を約2億5,000万円で受注している。
 この他にも同じようなケースが散見されるが、西川知事の政治活動を支えているのが、"還流した原発マネー"と言っても過言ではあるまい。

 佐賀、鹿児島、そして福井。原発立地県の知事を支えているのが原発マネーで潤う経済界であることは疑う余地がなく、彼らが経済界に逆らって原発を止めるという選択をするとは思えない。

 これまで度々報じてきたが、全国の原発の背景には原発マネーに汚染された政治家たちの姿がある。この状況のなかで、原発再稼働に関してなお原発立地自治体の政治家の意向だけが尊重されるのは、明らかに大多数の国民を無視した暴挙である。

 国民的な議論の場を設けた上で、より多くの自治体に再稼働を判断する権限が与えられない限り、原発を動かしてはならない。



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