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福岡市 市内のはずれにゲートボール場
高齢者への配慮は皆無
またも市長の思いつき事業

2012年4月13日 10:55

福岡市役所 市役所改装に約3億3,000万円、2階建てバスの購入に約1億5,000万円、人工島の体育館建設に約200億円・・・。
 高島宗一郎市長の就任以来、ムダな公共事業が次々と予算化されている。比例して増えているのが市民の借金であることを忘れてはなるまいが、今度はお年寄りへの配慮もないまま、市内のはずれに「ゲートボール場」を建設する方針であることが明らかとなった。
 建設場所は東区雁の巣。人工島近くの国有地にある「雁の巣レクリエーションセンター」で、建設費は3億5,000万円に上る。

屋根付きゲートボール場
 福岡市が整備を予定しているのは「全天候型多目的グラウンド」。ゲートボール、グラウンドゴルフ、フットサルなどの種目に対応することを目的としており、約7,000㎡の敷地に、ゲートボール場なら12面、グラウンドゴルフなら3面、フットサルでは3面が取れるとしている。
 このうち約2,300㎡を屋根付きにし、ゲートボール場なら4面、グランドゴルフとフットサルなら1面が雨天時でも競技を行なえるようにする計画。事実上の「屋根付きゲートボール場」となるが、問題はその場所だ。

整備地は人工島の側
 img_access_car_map.jpg整備予定地は福岡市のスポーツ公園「雁の巣レクリエーションセンター」。
 広大な敷地の中にはソフトバンクホークスやアビスパ福岡が使用している雁の巣球場のほか、軟式野球場(12面)、ソフトボール場(5面)、少年野球場、多目的コートなどが整備されているが、交通アクセスは最悪で、用具を抱えて同センターに行くには車を使わざるを得なくなるのが実情だ。
 右は雁の巣レクリエーションセンターのホームページに掲載されている同センターの場所を示した図だが、人工島と海の中道方面をつなぐ「海の中道大橋」を渡りきった左側に位置していることが分かる。
 
 ちなみに、雁の巣レクリエーションセンターのホームページに掲載された「交通アクセス」によれば、同センターへ行くには電車、バス、車といった手段が想定されている。しかし、どの手段を用いても人工島付近を除いた市内各地からは遠く、かなりの時間を要することは明らかだ。

 同ホームページには、電車、バスを利用した場合について次のように記されている。
【電車利用 】
・鹿児島本線香椎駅で香椎線乗り換え、西戸崎行き、雁ノ巣駅下車(徒歩約8分)

【バス利用】
・天神郵便局前→都市高速・和白経由(最速35分)→雁の巣レクレーションセンター

・天神郵便局前→都市高速・アイランドシティー経由(最速27分)→雁の巣駅前

 電車もバスも起点となるJRの駅や天神に出ることが前提で、人工島近くにある東区の一部を除けば市内のどこから出かけるにせよ不便な場所であることは疑う余地がない。用具を抱えたお年寄りにとっては、雁の巣までたどり着くだけでも大変だ。

 車で都市高速を利用した場合は「香椎浜出口」を出て人工島の中を通るか、和白方面を迂回するしかない。一般道利用でも同じで、ほとんどの車が時間的に早い人工島を経由する道を選ぶ可能性が高い。なにせ前述したように、雁の巣レクレーションセンターの場所は人工島のすぐ側に位置しているのである。
 さらに人工島付近はコンテナトラックが行き交っている上、新青果市場が開設されれば午前中に数千台もの関係車両が走り回ることになる。
 
 どの交通手段を選ぶにしても、お年寄りが雁の巣に行くには大変な苦労をともなう。一体なぜ、利用者のことを考えて整備場所の選定を行なわなかったのだろう。

整備地、いきなり「雁の巣」
 HUNTERが福岡市に情報公開請求して入手した福岡市市民局内の方針決済文書(決済印部分を含め5ページ)には、「整備候補地」の項にいきなり次の一文がある。《下記の理由により、雁の巣レクリエーションセンター内を整備候補地とする》。
 その理由には《既存施設を有効活用し、効率的な整備が実施できる》《駐車場が多く整備されている》《天候急変時の避難施設として活用できる》などともっともらしいことが並べられているが、「お年寄り」に配慮した形跡は一切ない。
 それどころか、他の場所と比較することさえなく、いきなり雁の巣を整備場所に決めていたのである。

 事を急いだとしか思えぬ杜撰な整備場所選定の過程だが、唐突なゲートボール場建設の背景が、決済文書の記述から透けて見える。

無理な理由付け
 決済文書の2ページ目に「要望状況」とあるのだが、まず議会側から次の要望があったとしている。
・平成13年 市議会会派「福政会」(現・みらい福岡)から屋根付多目的グラウンドの整備要望
・平成20年 「公明党」から全天候型スポーツ広場設置の要望

 しかし、時間の経過から考えて、当時の要求が生きていたとは考えにくい。福政会が要望を出したという平成13年といえば、2代前の市長・山崎広太郎氏の時代となる。福政会の名称はその後「みらい福岡」に変わっているし、会派の人数も顔ぶれも大きく変わっている。
 公明党が要望したという平成20年は、吉田宏氏が市長を務めていた時で、23年には市議選をはさんでいる。過去の要望を引っ張り出して、理由付けに使ったとしか思えないのだ。(下が問題の記述の箇所。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

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実は市長の指示 
 付け焼刃的な整備計画が進められたきっかけは、議会側の要望というより決済文書にある「今年度の要望」にあったと見られる(前掲文書参照)。次の記述がそれだ。

《平成23年4月21日の県ゲートボール連合(福岡市ゲートボール議員連盟同席)の市長表敬訪問時に、全天候型グラウンドの整備実現について要望を受けた》。
 
 市関係者によれば、問題の施設建設は、この表敬訪問後に高島市長の号令で突然事業化が決まったのだという。
 当然、急ぎの仕事であったため「整備できればどこでもいい」という雰囲気のなか、ばたばたと事業計画が立てられていったとされる。高齢者への配慮など、はなから考えていなかったのだ。

胡散臭いアンケート結果
 公金投入のアリバイを作るため、かなり無理をしたらしく、同決済文書には次のような記述もある。

gennpatu 114020084.jpg

 平成22年に行った市民アンケートとやらの数字を引っ張り出し、全体の59.7%が「屋根付き広場が必要」と答えているかのような表記だ。
 しかし、『必要』は23.2%に過ぎず、残りは条件次第というもの。整備場所が人工島の側で費用は3億5,000万円もかかると知って、それでも『必要』と答える市民は少ないだろう。
 そもそもこのアンケート自体、サンプル数も明かされていないばかりか、『必要ない』と回答した市民の割合さえ記されていない。都合のいいように結果を操作しただけで、捏造と言われてもおかしくない手法だ。

 前述の議会側要望といい、捏造まがいのアンケートの結果といい、無理に無理を重ね、なんとか公費支出の口実を作った形である。

狂った市政
 市長の思いつきが次々と事業化され、湯水のごとく公費が投入される現状は、到底まともな市政とは言えない。

 背景にあるのが市議会のチェック機能低下であることは間違いない。こうした中、"もの言わぬ与党"に異を唱え、会派を離脱した自民党議員がいる。川口浩元議長だが、その主張はもっともで、骨のある議員が存在することに救われる思いだ。
 ただ、川口元議長をはじめ、まっとうな意見を述べる議員の主張の場が少なく、市長の暴走を止めるには至っていない。このまま高島市政が続くようなら、早晩福岡市が沈没するということを改めて明言しておきたい。

 最後に、南区のある老人クラブ役員の怒りの声を紹介する。
「ゲートボール場の話ははじめて聞いた。ゲートボールは私たちの楽しみのひとつですが、ここ(南区)から雁の巣までどうやって行けというのか!高島さんが年寄りのことなど真剣に考えていない証拠でしょう。3億5,000万円もの予算があるなら、介護や医療にカネを回せと言いたい」。



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