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鹿児島県 処分場めぐり民間企業に裏工作

顕在化した伊藤鹿児島県知事の暴走

2012年4月17日 10:05

gennpatu 028.jpgのサムネール画像 住民の反対を無視し、薩摩川内市で公共関与型の産業廃棄物最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の建設を強行している鹿児島県が、別の処分場の設置許可を求めている民間企業に水面下で接触。同企業側の計画を振り出しに戻し、結果的に許可を遅らせる方向となるよう裏工作していたことが明らかとなった。
 
 企業側に接触したのは、鹿児島県の山田裕章副知事。同副知事は「エコパークかごしま」の事業主体となっている県環境整備公社の理事長を兼任しており、競合する民間企業の動きに歯止めをかけようとした形だ。産廃に関する許認可権は県が有しており、副知事の動きは公権力の濫用にあたる可能性が高い。

副知事が「水面下」で接触
 鹿児島県湧水町で最終処分場の建設を計画しているのは、宮崎県小林市に本社を置く産業廃棄物処理業の「九州北清株式会社」。同社の処分場計画をめぐっては今年1月、処分場の設置許可申請を黙殺されてきた同社が申し立てた審査請求について、環境省が県の行為を「違法」と認め、設置の可否を決める"処分"を速やかに判断するよう裁決を下していた。
 
 3月には、裁決の結果を受けた鹿児島県が九州北清に対し「事前協議」を行うことを要請。県の引き延ばし策を見抜いた同社は、弁護士を通じ、県が処分を遅らせないと確約することを条件に協力する旨を県側に回答していた。実際の「事前協議」自体は、平成22年に終了している。

 関係者の話によれば、今月4日に県の担当部長から九州北清に「副知事がお会いしたい」と会談の要請があり、「東京でもどこにでも、指定された場所に出向く」という副知事の意向まで伝えてきたという。不信を抱いた九州北清側は県庁内で会うことを条件に会談を了承していた。

 13日、県庁内で九州北清の幹部ら3人を迎えた山田副知事は、平成22年に終了している事前協議を再び行うとするこれまでの主張を展開。すでに受け取っている設置許可についての可否には一切触れず、設置許可申請以前の時点に戻すことを求めたため、会談は物別れに終わったという。
 事実関係について認めた九州北清側は「環境省の『裁決』を無視した引き延ばし策である」として反発を強めており、法的手段に出る構えを見せている。
 
 環境省の裁決は九州北清が県に提出した設置許可申請に対する処分を速やかに行うことを求めたもので、山田副知事の言動がこれに背くものであることは言うまでもない。事務的に作業を進めれば済むことだが、九州北清の計画を認めるわけにはいかない県が、法を無視した遅延策をとっているという構図だ。

連動
 山田副知事の九州北清への裏工作は、伊藤祐一郎知事の指示だった可能性が高い。副知事の動きを認識していたことを、知事自身の発言が証明しているからだ。
 今月6日の定例会見で、記者から九州北清の産廃処分場計画について、作業の進捗状況を聞かれた知事は、次のように答えていた。

これもまだ水面下の動きですから、こういう席で申し上げる状況にはないのですが、鹿児島県も「民間処分場を一切認めない」と発言をしたことは1回もありませんし、我々も今一生懸命管理型最終処分場を造っていますが、それと民間の施設が1つくらいは、それが想定される産業廃棄物の処分場の鹿児島県内における状況かなと思いますね》。
 
 伊藤知事の言う《水面下の動き》が、山田副知事の九州北清に対する裏工作を指すことは明らかで、その後の流れを見ても事が知事の指示に従って動いてきたことがうかがえる。
 九州北清側が副知事から会談の申し入れを受けたのが今月4日。その2日後に前述の知事発言があり、さらにその日のうちに担当部長が知事の発言内容をわざわざ九州北清に電話で知らせているのである。

圧力 
 知事発言の続きを見れば、知事が九州北清に分からせたかったのが"県の力"であることが想像できる。

《ただ、これは地元住民の反対等非常にいろんな問題がありますので、簡単にできる施設ではありません。ですからついうっかり事業を進めると、かえって社会全体が混乱して何も進められないというような状況になる、そういう性格も十分持っているかと思いますが、民間の方も地元住民の合意の下に一定の地域振興策を図りつつ、必要な施設としてそういう施設を整備されるということであれば、それはそれで結構なことかと思います》。

矛盾
 "許認可権は県が持つ、やれるものならやってみろ"と言わんばかりの発言だが、興奮したのか、明らかな自己矛盾には気付かなかったらしい。

《ただ、これは地元住民の反対等非常にいろんな問題がありますので、簡単にできる施設ではありません。ですからついうっかり事業を進めると、かえって社会全体が混乱して何も進められないというような状況になる》。

 薩摩川内市川永野で県が建設を進める「エコパークかごしま」事業をめぐっては、知事の言う《地元住民》が強行に建設に反対しており、司法の場で争う事態となっている。県職員を大量に動員してまで工事を強行してきた県の姿勢はどうなるというのか。
 県がやるならOKだが、民間企業なら許さないという、許認可権限を弄ぶ伊藤知事の姿勢は到底まともな政治家のものとは思えない。

暴走
 知事発言はこの後、さらに暴走する。

《今、事前協議に入るということをお話ししていますが、その事前協議にどういう形で入るかということも含めて、そして北清さんがどういうお考えを持っておられるかも今一つわかりません。株式会社北清の別法人の九州北清というのがあそこの建設主体となっていますが、北清自体は立派な、産廃等々の施設を全国にお持ちのそういう会社で、国の役人時代からどういう会社かは承知していましたので、企業自体は大変しっかりとした企業です。そこらあたりも踏まえて、十分な話し合いをしなければいけないのかなと思っています。これからですね》。
 環境省が裁決を下し、速やかな処分を求めているのに、知事は《これからですね》。まともに設置許可について検討する意思がないとしか思えない。

 記者から環境省の裁決についてさらに聞かれた知事は、ついに国を無視した暴言を吐く。
国は国で勝手にいろんなことを言うのです、現在の法体系の中で。何もしていないので何かやりなさいということ。丁寧に今後、先ほど言いましたように意見交換から入るのかなというのが今の認識です》。

 重ねて県の違法性について聞かれた知事の発言は、もはや日本語の体を成していない。
《それは、産廃処分の法律は今そういう形で作っているのですが、その後が全国の混乱なのです。地元の同意なくしてああいう迷惑施設を造れるはずがないので,、そこは、それを条件にすると、なかなか地元同意が取れない時に産廃施設ができないから、条文上はああいう整理をしたのですが、実際には要綱段階等のいろんな段階で、そしてまた、今相当の産廃施設が立ち上がってきて全国に1,000くらいありますか、もうそこは法律の領域を超えて、実際の手続き上、要綱等の いろんな制度上、地元住民といろんな形で調整するスキームがほとんどできあがっています。もう法律だけで判断する案件ではありませんね》。

懸念
 「県内に最終処分場が一箇所もないから県が事業を行う」という大義名分の下、地元住民らの声を圧殺し巨額の公費投入を決めた伊藤祐一郎知事にとって、別の処分場計画が進むことは容認しがたい事態。民間の処分場へは公費支出の必要がなく、県が100億円近い公費を投じる「エコパークかごしま」事業に疑問符がつくのは当然だからだ。知事の懸念が今年夏の知事選への影響にあることは言うまでもない。
 
 一連の県の動きは、環境省の「裁決」をきっかけに、知事がこれまで以上になりふり構わぬ手段をとり始めたことを示している。
 
 



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