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法令無視して汚泥処分

薩摩川内処分場めぐり相次ぐ鹿児島・伊藤県政の暴走

2012年4月24日 10:55

 薩摩川内市で、産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称・事業主体は県環境整備公社)建設を強行している鹿児島県が、同処分場の工事を進める過程で数々の違法行為を容認している実態が浮かび上がった。

 工事現場では、処分場予定地にあった産業廃棄物であるはずの「汚泥」を通常の土砂として他の採石場などに搬出しているほか、基準値を上回る「汚水」を河川に垂れ流している。

 いずれも法令違反となる行為だが、県側は「問題ない」などと強弁。産廃行政における権限を盾に違法との指摘を黙殺する構えだ。法を無視した同県の暴走について、2回に分けて報じる。
(写真は、処分場予定地に山積みされた汚泥)

搬出された大量の「汚泥」
 sannpai2.JPG鹿児島県と事業主体である県環境整備公社は、処分場建設に反対する住民らを力でねじ伏せた形で昨年10月に着工。その直後、工事現場から大量の「汚泥」が搬出されるようになった。

 運び出された汚泥は、隣接自治体であるいちき串木野市の砕石場や薩摩川内市内の土砂捨て場に持ち込まれているが、なぜか"産業廃棄物"としての取り扱いはなされていない。
 
 しかし、同処分場建設用地にあった「汚泥」は、用地を所有している「株式会社ガイアテック」(地場ゼネコン「植村組」の関連企業)の砕石プラントから発生したもので、事業活動にともなった"産業廃棄物"であることは明らかだ。

「産廃ではない」―言い張る鹿児島県
 sannpai4.JPGHUNTERが鹿児島県環境林務部廃棄物・リサイクル対策課に確認したところ、問題の汚泥を「産業廃棄物ではない」と断言。その判断根拠を示すよう求めたところ「総合的に判断した」と繰り返すばかりで、明確な根拠を示そうとしない。汚泥のPH(ペーハー)値を確認したのか追及したところ、測定さえやっていないことを認めた。
 
 PHとは、酸性、アルカリ性の強さを示すもので、PH7前後が中性、これより値の小さいものが酸性、大きいものがアルカリ性である。PH値が偏った汚泥を捨てれば土壌汚染につながるのは言うまでもない。

 県は、問題の汚泥について、山積みにして乾燥したあと資材置き場の土壌として使用されていたから、この時点で産廃ではなくなったという。もとは産廃汚泥であっても、いったん処理され"有価物"になっているという主張だが、この理屈には無理がある。

 "有価物"とは、汚泥を中間処理したのち、セメント材料や路盤材などとして2次使用が可能な状態になったものを指す。つまり「売りもの」ということだが、当然、有価物と判断するにはいくつもの条件を満たさなければならない。 "有価物だから産廃ではない"とする県側の主張だが、PH値の測定さえやっていないようでは、簡単に認められるものではないのだ。

環境省の指針に照らしてみれば・・・
  gennpatu 114020098.jpg県側の主張を退ける根拠は、産廃に関して国が自治体に示した指針に求めることができる。
 
 産廃の不法投棄が続くなか、廃棄物の定義や処理責任、処理方法などの基準について定めた「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の改正を受けた環境省は、平成17年8月に全国の都道府県および政令市に対し、それまでより踏み込んだ厳しい内容の43ページに及ぶ「行政処分の指針について(通知)」を出している(環境省ホームページへリンク→)。

 それによると、「廃棄物該当性の判断について」では、《廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき》とした上で、《再生後に自ら利用又は有償譲渡が予定される物であっても、再生前においてそれ自体は自ら利用又は有償譲渡がされない物であるから、廃棄物として規制する必要があり、当該物の再生は廃棄物の処理として扱うこと》と明記している。

 この記述に従えば、「エコパークかごしま」の建設予定地にあった「汚泥」は、《占有者(この場合は「ガイアテック」)が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったもの》であり、必然的に《再生後に自ら利用又は有償譲渡が予定される物であっても、再生前においてそれ自体は自ら利用又は有償譲渡がされない物であるから、廃棄物として規制する必要があり、当該物の再生は廃棄物の処理として扱うこと》が求められるはずだ。

 次に、鹿児島県が「有価物だから産廃ではない」とする主張も、同指針の続く記述によって大きく揺らぐ。
《また、本来廃棄物たる物を有価物と称し、法の規制を免れようとする事案が後を絶たないが、このような事案に適切に対処するため、廃棄物の疑いのあるものについては以下のような各種判断要素の基準に基づいて慎重に検討し、それらを総合的に勘案してその物が有価物と認められるか否かを判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うこと》。あたかも鹿児島県の言い訳を断罪するが如き記述である。

 そして指針は、有価物か否かを判断するにあたっての基準について、次のように定めている。いささか長くなるが、念のため紹介しておきたい。

ア 物の性状
 利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境保全上の支障が発生するおそれのないものであること。実際の判断に当たっては生活環境保全に係る関連基準(例えば土壌の汚染に係る環境基準等)を満足すること、その性状についてJIS規格等の一般に認められている客観的な基準が存在する場合は、これに適合していること、十分な品質管理がなされていること等の確認が必要であること。

イ 排出の状況
 排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。

ウ 通常の取扱い形態
 製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。

エ 取引価値の有無
 占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。

オ 占有者の意思
 客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他者に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。したがって、単に占有者において自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができるものであると認識しているか否かは廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素となるものではなく、上記アからエまでの各種判断要素の基準に照らし、適切な利用を行おうとする意思があるとは判断されない場合、又は主として廃棄物の脱法的な処理を目的としたものと判断される場合には、占有者の主張する意思の内容によらず、廃棄物に該当するものと判断されること。

 どの項目においても、「エコパークかごしま」建設工事現場から搬出された汚泥を、有価物だったと判断できる材料は見当たらない。むしろ、山積みにしたまま放置されていた事実からして、"産廃"と見る方が指針の内容に沿っている。
 さらに指針には、"有価物"と判断するにあたっては《生活環境保全に係る関連基準(例えば土壌の汚染に係る環境基準等)を満足すること》と記されているが、PH値さえ測定していない県にまともな判断ができるはずがない。
 県は、違法な工事の過程をごまかすため、指針の「総合的な判断」という言葉を逆手にとって、県民を欺いているだけなのだ。

 「指針」の厳しい基準は、産廃である汚泥を、"中間処理したから有価物だ"と偽って不法に処分するケースが後を絶たない現状に即したものだ。しかし、鹿児島県の姿勢は指針が根絶を目指している不法行為を進んで容認したに等しい。

 最大の問題は、指針に基づき指導監督する立場の「県」が、現実を捻じ曲げ産廃汚泥を「産廃ではない」と強弁していることだ。ルール無視が常態化した伊藤祐一郎知事の県政運営だが、法令を守ると言う視点を欠いてまで産廃処分場建設を進めることは許されない。

 じつはこうした伊藤県政の姿勢が、さらなる法令違反を招いていた。

                                             

つづく



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