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佐賀県玄海町交際費 報じられない「支局長送別会」

2012年3月19日 10:50

 今年1月、新聞各紙は九州電力玄海原子力発電所の立地自治体である佐賀県玄海町(岸本英雄町長)が、町長交際費や議長交際費を使って、経済産業省資源エネルギー庁や佐賀県庁の役人に対する接待や贈り物を繰り返していたことを報じた。

 官官接待であることは間違いなく、関係者の処分が当然の事態なのだが、同町の交際費支出については、ほかにも報じられていない不適切な事例が存在する。
 
 HUNTERが入手した玄海町の交際費に関する文書から、町長交際費を使って西日本新聞唐津支局長の送別会を開いていたことが分かった。

特定メディアへの厚遇
 平成20年5月、玄海町の隣に位置する唐津市の日本料理店で、玄海町の町長交際費を使った宴会が開かれた。
 
 同町の町長交際費「支出票」には、『西日本新聞唐津支局長送別会の折』と記されている。
 公費を使って特定メディアの支局長を送り出すための宴会を開いていたのである。(下の文書参照) 


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 同年4月には『記者クラブとの懇談会』にも町長交際費が支出されているが、こちらは記者たちが会費を個人負担していたようで、町側出席者の飲食代だけが支出されている。(下の文書参照)

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 記者クラブ全体との懇談会は地元の焼肉店を利用したものだが、西日本新聞唐津支局長の送別会が開かれた日本料理店は唐津市内でも指折りの老舗。明らかに違う形態であり、支出票に記載されたとおり、1人あたりの料理の金額も結構な額なのだ。

 玄海町側に確認したところ、、町長は問題の送別会に出席しておらず、西日本新聞側が会費を払った形跡はないという。いわば岸本英雄町長の「おごり」だったということだ。
 仮に西日本新聞の元支局長が会費を支払っていたとしても、この宴会は公費を使ってやるべきものではない。

もうひとつの「報道関係者」接待 
 玄海町の町長交際費に関しては、さらに次のような支出がある。

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 平成22年1月25日に行なわれた東京都内の日本料理店での接待と見られるが、町長ら玄海町側に加え電源振興センターの課長代理が出席したことが明記されている。
 ここに記された電源振興センターとは「財団法人 電源地域振興センター」のことで、経済産業省の天下り法人である。
 同財団は主として原発立地自治体等への補助金、交付金を捌くことを主業務としており、当然玄海町との関わりも深いのだが、出席した報道関係者が誰だったのかは非開示となっている。しかし、玄海町側は出席者は「報道関係者」であり、虚偽の記載はないとしているのである。
 各メディアは、なぜこうした事実について取材し、ありのままを報じなかったのだろう。

失われるメディアへの信頼
 今月6日、九州電力川内原子力発電所の立地自治体である鹿児島県薩摩川内市(岩切秀雄市長)で、転勤する記者クラブ所属の記者に対して、長年にわたり市長交際費から記念品が贈られていたことを報じた。

 権力の監視を使命とするはずのメディア側が、公費を使った接待や贈り物をもらうことは読者や視聴者への背信行為だ。たしかに官官接待は違法行為であるが、それを報じたメディア側の不適切事案には目をつぶるというのでは筋が通らない。

 福島第一原発の事故以来、原子力ムラの一翼を担ってきた大手メディアへも国民の厳しい視線が注がれているのは言うまでもない。

 そうしたなか、メディア側の不祥事はおくびにも出さない報道の在り方には、ますます疑念が生じるということを警告しておきたい。



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