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大成建設 驕りの証明

税金投入80億円の工事を「民間工事」と嘲笑

薩摩川内産廃処分場工事の実相

2012年3月 8日 11:25

 約80億円の"税金"が投入される建設工事を、「民間工事」だとうそぶくゼネコン社員の態度に、この国を食い潰してきた元凶はこの連中だったと、改めて思い知らされた。
 
 ゼネコンの社名は「大成建設」。現在、鹿児島県薩摩川内市で県が建設を強行している産業廃棄物最終処分場(「エコパークかごしま」(仮称)」工事の受注企業である。

 地元住民らの反対を無視して進められる同工事にからんでは、処分場用地選定の過程から今日に至るまで政・官・業による"利権集団"の影がちらついてきたが、建設工事を請け負ったゼネコンの驕り高ぶる態度が、処分場計画がもつ欺瞞性を象徴している。

施行体系図
ことの発端は工事現場に掲げられる「施行体系図」だった。先月末、薩摩川内市川永野の処分場建設現場を取材した折、「施行体系図」がないことに疑問を抱いた記者が現場を仕切る大成建設側に体系図を掲示するよう求めていた。
 
  gennpatu 1084.jpg体系図は、現場事務所の前に、申し訳程度に張り出されていたのだが、工事用フェンスで囲まれ、反対派住民の立ち入りを禁じた敷地内でしかない(写真参照)。これでは県民が体系図を確認することはできない。

 「施工体系図」とは、作成された施工体制台帳に基づいて、各下請負人の施工分担関係が一目で分かるようにした図のことで、工事の期間中、工事関係者が見やすい場所に掲示することが法律で義務付けられているほか、とくに公共工事については一般市民の見やすい場所にも掲示しなければならないとされる。根拠となるのは「建設業法」と「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」である。

 薩摩川内市川永野の処分場は、"公共関与"型の管理型処分場建設を企図した鹿児島県が、5億円の"県費"で用地を確保し、県の第3セクター「財団法人 鹿児島県環境整備公社」を事業主として建設を進めているものだ。
 
 平成22年10月に行われた同工事の入札には、大林、鹿島、大成の大手ゼネコンと地場ゼネコンらが特定建設工事共同企業体(JV)を組んだ三つのグループが参加。
 落札したのが、「大成・植村・田島・クボタ」で構成されたJVだった。落札金額は77億7,000万円(税込み)であるが、この原資はもちろん公費である。
 事業の形態からして、県民に事業の情報を公開するのは当然のことなのである。

 JVの代表企業は大手ゼネコン「大成建設」で、問題の処分場建設現場も同社の社員が工事全体をコントロールしている状況だ。

 前回の取材から1週間後の3月6日、再び処分場建設現場を訪れてみたが、施行体系図は前回同様、現場事務所の前にあるだけで、一般市民の見える場所には掲示していない。

「公共関与」の欺瞞性を露呈
 大成建設側になぜ体系図を掲示しないのか詰問したところ、事務所前だけの掲示でいいと指示したのは事業主である「鹿児島県環境整備公社」だという。
 さらに、居合わせた大成建設の社員がせせら笑いながら言い放ったのが「民間工事なんだから」という一言。同処分場工事の実相を浮き彫りにした瞬間だった。

 たしかに、同工事の事業主は財団法人である鹿児島県環境整備公社で、厳密に言えば公社発注の工事は「公共工事」ではない。しかし、前述したとおり、処分場の事業費は四分の一が国の補助金、残りを県のカネつまり県民の血税でまかなう計画となっており、事実上「公共工事」として認識されるべき事業であることは言うまでもない。

 県民には「公共関与」を謳い、都合の悪い時には「民間工事」と主張する姿勢は、県民に対する詐欺的手法でしかない。

 鹿児島県は、処分場事業について、情報開示の重要性を明言してきており、「民間工事」を盾に工事の実態を隠すことは許されない。

 工事を受け持つ大成建設社員の「民間工事なんだから」との一言は、まさに納税者を愚弄する大手ゼネコン特有の暴言であり、産廃処分場計画の欺瞞性を象徴するものなのだ。

公社側「言っていない」
 翌日、薩摩川内市にある鹿児島県環境整備公社を訪ね、同公社の事務局次長と総務課長に話を聞いた。

 次長と課長は、施行体系図の掲示について「現場事務所の前だけでいい」などとは言っていないと明言したが、やはり工事自体は「法的には民間工事」だという。
 ただ、事業費は税金であり、県民に対してその言い分は通用しないとすHUNTER側の主張には「理解できる」として、体系図掲示を指示することだけは約束した。

問題企業「大成建設」の傲慢姿勢
 gennpatu 008.jpg問題は大成建設の姿勢である。

 じつは同社、産廃処分場の建設が強行されている薩摩川内市に縁が深い。同市にある九州電力川内原子力発電所の原子炉建屋の建設を請け負ったのが、ほかならぬ大成建設だったのだ。
 
 そして同社は、川内原発の工事にからみ、大変な問題を引き起こしていたことが明らかになっている。
 
 平成17年、川内原発の工事に関して経済産業省原子力安全・保安院に告発があり、大成建設が、原発建築で余った数千トンの鉄筋を発電所敷地内に埋めて処分していたことが発覚したのである。

 鹿児島県や薩摩川内市にとっては、札付きの不良業者が再び迷惑施設の建設工事を受注していたことになる。(ただの偶然とするにはいささか引っかかるものもあるのだが・・・)。

税金を食い潰してきた大手ゼネコン
 大成建設を含む大手ゼネコンが、これまで度々「談合」を認定され、排除措置命令や、課徴金納付命令を受けてきたのは周知のとおりだ。
 
 いわば税金を食い潰し、国や地方の財政を悪化させてきた当事者企業である大成建設の社員が、80億円もの税金を使った工事を「民間工事なんだから」と言い放つ姿勢は、到底容認できるものではない。

 なにより、県民の意思を無視してムダな工事に巨額な税金を投入する薩摩川内市の処分場計画は、利権にまみれた知事や県議、そして建設業界といった鹿児島県の現状を象徴する愚行なのだ。
 
 現場を仕切る大成建設のふざけた言動は、鹿児島県民をはじめ国民全体への意思表示と受け止めさせてもらう。

 
 



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