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原発 放射能たれ流しの証明

2012年3月 9日 09:00

 東日本大震災の発生からまもなく1年。野田政権は昨年12月、同時に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故について早々と収束宣言を出したが、原子炉内の正確な様子や、詳しいデータが開示されたわけではない。
 
 同原発からは、いまだに多量の放射能が漏れ出していると見られており、国や東電の隠蔽体質を見せ付けられてきた国民が、原発への不信感を払拭するには程遠い状況だ。
 
 ところで、全国で54基ある原発から、絶えず放射能が垂れ流されてきたことを知る国民はどれほどいるのだろうか。
 
 「原発は安全」と声高に叫んできた電力会社が国に提出した文書から、放射能たれ流しの実態を検証する。
(写真は玄海原発3・4号機)

「原子炉設置変更許可申請書」が示す放射能放出の事実
 下の文書は、九州電力が国に提出した玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)に関する「原子炉設置変更許可申請書」の添付文書である(赤いアンダーラインHUNTER編集部)。

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 電力会社は、原発の増設やプルサーマル実施などで施設に変更が必要な場合、国に対し事前に許可申請を行ない、お墨付きを求めなければならない。
 申請書および添付資料は膨大な枚数になるが、そこには、原発が出す放射性物質の種類や放出量が明記されているのである。

 文書の冒頭には、放射性廃棄物処理に関しての規則や指針を、《十分守る》あるいは《考え方を尊重するものとする》などとする曖昧な言葉が並んでいる。
 これでは原子炉設置変更許可申請書にある放射能年間放出量(単位はベクレル/年)自体に疑問が生じるのは当然だろう。
 フクシマ以後、国や電力会社の原発に対する杜撰かつ安易な管理体制が次々暴かれる事態となっており、《考え方を尊重する》という表現は、実際には守れないことを前提にした傲慢な姿勢の表れとしか思えないからだ。実際、放出された放射能について、九電が測定データを公表したことなど聞いたことがない。
 
 ただ、もっとも大切なのは、「原発」がある限り四六時中放射能が原発外部に放出されているという事実を、多くの国民が知ることである。

 CO2排出量が少ないから「環境にやさしい」を売り物にしてきた原発だが、CO2以上に性質(タチ)の悪い"放射能"を、常時たれ流し続けるモンスターにあてはまる評価であるはずがない。

大気中と海に「放出」
 赤いアンダーラインで示したように、原発からは「気体廃棄物」、「液体廃棄物」、「固体廃棄物」、「濃縮廃液」、「脱塩塔使用済樹脂」、「雑固体廃棄物」といった形で放射性廃棄物が発生する。
 
 このうち注目したのが「気体廃棄物」と「液体廃棄物」。どちらの処理方法にも"放出"と記されているように、放射性物質を原発の外に出し続けているのである。

 九電が何と言おうが、自社が国に提出した申請書に放出される放射性物質の予定線量まで明記しており、"たれ流し"の事実を否定することはできない。(文書は、左から玄海1・2号機、3・4号機における気体廃棄物の放出量、右端が3・4号機における液体廃棄物の放出量を示したもの)

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 ところで、気体廃棄物は大気中に放出されると記されているが、「液体廃棄物」はどこに放出されているのだろう。
 前掲の文書には、下に示したとおり、「環境に放出」とあり、さらに「放水口」とある。わざと分かりにくく表現しているとしか思えないのだが、要は「海」にたれ流しますと断っているのである。
 
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 原発の炉内を循環した冷却水は高温となるため、さらにパイプを通して海水で冷やす。この海水を吸い込むのが「取水口」で、役目を終えた海水を再び海に出すのが「放出口」である。

 そして、原発から放出される海水を「温排水」という。"温められた海水"ということだが、ただの温められた海水ではないということは、述べてきた「液体廃棄物」の処理方法からも明らかだろう。

 次稿で、原発「温排水」の恐ろしさについて報じる。



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