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市役所改装 実際の予算は2億5000万円

計画の杜撰さも露呈

2012年2月15日 08:00

 問題だらけとなった福岡市役所の改装事業だが、1階ロビー改装と一体になった西側広場整備も含めた同事業の計画段階での予算規模は、公表された約1億4,000万円をはるかに超える約2億3,000万円を予定していたことが判明した。
 実際には、すでに計画より2,000万円近く予算をオーバーしており、現状のままなら約2億5,000万円の事業費が必要となる見込みだ。
 
 さらに、場合によっては工事費がかさみ、数千万円の予算を追加する可能性が生じており、計画の杜撰さを露呈した形となった。

 長引くデフレ不況の中、暮らしを切り詰めてがんばる市民を尻目に、高島宗一郎福岡市長の"わがまま"ではじまった市役所の改装に億単位の公費がつぎ込まれるという愚行・・・。
 タレント気分が抜けない市長の無駄遣い事業のお粗末さに、市役所内外から批判の声が上がっている。



改装工事の問題点
 HUNTERが福岡市への情報公開請求によって入手した市役所改装事業に関する一連の文書から、高島市政への不審を抱かせるいくつもの事実が明らかとなった。

 ここで、これまで報じた記事の中から事実関係だけを列挙しておきたい。
1、改装工事費1億3,800万円のうち、7,800万円が借金(起債)でまかなわれることになっていた。

2、1階ロビー改装工事の設計業者選定において、高島市長の友人で市顧問(広報戦略アドバイザー)になっている民間企業の代表者が選考委員長を務めていた。

3、同顧問は広告代理店の経営者であり、市役所および市役所前広場(西側広場)でのイベントに関与する可能性が否定できない。さらに不動産業界との深いつながりがあることから、設計、工事施工、大型ビジョンなどの情報機器といった今回の改装工事に直接関わる業界と無縁とは言い切れない。

4、プロポーザル方式で実施された設計業者選考で、1位となった設計会社グループは、7つの評価項目のうち2項目でしかトップになっていなかった。一方、2位となったグループは5項目でトップの評価を得ていた。

5、設計業者選考にあたっての要綱や評価項目、採点配分などは、福岡市ではなく、改装事業の基本計画を作成した民間企業が定めたものだった。

 公共事業の在り方を逸脱した、高島市長の私的な改装工事だったと言われてもおかしくない事態である。
 
報じられない計画の全体像
 ところで、新聞報道などでは、改装イメージ図を中心に市側が公表した内容を垂れ流しており、事業費の大半を借金である市債発行でまかなうこと等にほとんど触れていない。
 
 役所の広報記事に怒りを覚えるのは今に始まったことではないのだが、この改装計画は公表された約1億4,000万円の費用で済むものではなかった。

 下の図は、市が民間企業に業務委託して作成させた「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」に記載された市役所西側広場の改装イメージ図である。

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 緑色が同広場に敷かれた人工芝部分で、左奥が市役所玄関から建屋内へと続く部分となる。

 ステージの上に屋根が建設されており、その屋根は回廊の一部となる計画だ。人工芝の両サイドから青く伸びるのが回廊の階段部分である。

 簡単な工事でないことはひと目でわかるが、工事費用がかなりのものになることも容易に推測できる。

 事業を所管する市公有財産課に、西側広場の工事にどの程度の予算を計上するのか聞いたが、公式発表まで回答できないという。

 しかし、「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」には、市役所1階ロビーの改装事業費とともに西側広場の工事にかかる予算額が、概算ながら明示されていた。

西側広場工事にも1億円超
 「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」の中で(下の文書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)、市役所1階ロビーと西側広場の工事にかかる事業費の概算が示されている。

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 それによると、事業全体にかかる総事業費は約2億3,000万円。1階ロビーの改装(記述は『1階ロビーリニュアル』)に1億2,000万円、西側広場再整備事業に1億1,000万円と記されている。
 
 平成23年度の1階ロビーの改装には1億3,800万円の予算を計上しており、すでに計画段階の1億2,000万円より1,800万円も公金支出が増えた勘定だ。西側広場の工事費も予定より高くつく可能性が高いうえ、さらに借金(起債)を重ねる可能性がある。

構造補強でさらに数千万円の可能性
 じつは、西側広場整備事業の予算1億1,000万円を算出するにあたっては、福岡市役所の「構造」を計算に入れていなかったと思われる。

 市役所には地下駐車場があり、西口玄関前に屋根を建設するとなると大がかりな補強工事の必要が生じるため、計画以上に予算がかさむかもしれないというのだ。
 
 所管の市公有財産課もこうした経緯について、「設計次第」でどうなるか分からない状況にあることを認めている。

 場合によっては、全体の事業費が3億円に達する可能性も囁かれており、計画の杜撰さが浮き彫りとなった形だ。

 それにしても、土曜・日曜しか使用されない常設型ステージを造るため、億単位の公費をかける必要があるのだろうか。市の財政事業を考えると正気の沙汰とは思えないが、かかる市民生活無視の事業を止められなかった議会の責任も重い。
 
働かなかったチェック機能
 報じてきた内容と市議会の不作為について、議会関係者や市OBなどに話をぶつけてみた。

 「民間企業の代表者を業者選考委員会のトップにもってくるというような話は聞いていなかった。たしかに不適切だ。(HUNTERの)指摘のとおり、事業自体の必要性に疑わしい点があったのは事実。計画段階のチェックが甘かったという批判にも返す言葉がない。今後の業者選定や、来年度の事業について、厳しく監視する必要がある」(市議会関係者)。

 「こんなバカなことをやっていたのか。情けない。高島さんは、市の事業が予算化されるまでの過程について、よく理解していないのではないか。市の予算はすべて税金で成り立っており、何かやろうとするのであれば、きちんとした市内部での議論の積み上げが必要。トップダウンでやっていいことと悪いことの区別すらついていないのだろう。
 "市役所"にとって今何が必要かではなく、"市民"にとって必要なものが何なのかという視点で施策を提示しなければ、わがまま坊主のお遊びになってしまう。市役所の中で止められなかったのなら、議会が止めるべき事業だった」(市OB)

思いつき市政への警鐘
 就任以来、高島市長がこだわってきたのは市長選から言い続けてきた『情報発信』。たしかに、歴代市長に比べて露出も増えたし、タレント出身だけに立て板に水の話しぶりは堂に入っている。
 
 しかし、こども病院や人工島といった市政の重要課題については、外部の有識者らに市民を加えた審議会方式での議論に丸投げ。他方で唐突に「屋台」の在り方を検討する会議を立ち上げたり、今回の市役所改装などカネのかかる派手なことばかりをぶち上げてきた。市民の暮らしの役に立つことは何一つやっていないのである。
 『情報発信』の機会は増えたが市民生活が良くならないというのでは話にならない。

 福岡市では、平成24年度の国保料を上げる上げないで、すったもんだしたばかりだ。
 市長公約を踏まえて平成23年度の国保料をいったん引き下げ、翌年度については一転して引き上げ方針を示すという節度のなさ。
 医療費削減に寄与する策も講じないまま、人気取りのためにやみくもに国保料を下げた高島市長の見識が低かったことを露呈したが、国保料の据え置きに伴う保険料の財源不足をまかなうため、一般会計から約1億4,000万円を捻出する必要があるのだという。
 言い換えれば、1億4,000万円のカネが足りなかったために、公約を反故にして国保料を引き上げるつもりだったということになる。
 市役所の改装に2億円以上の公費をつぎ込むと言う愚行を演じながら、一方で国保料値上げを言い出した高島市長の感覚は、かなりズレていると言うべきだろう。

 ちなみに、高島市長が市長選を前に、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州が主催した公開討論会で公表したマニフェスト(参照→)には、どこにも市役所の改装や屋台についての施策の必要性など出てこない。

 「すぐに行う重要施策」として優先順に3項目を掲げているが、その2番目には次のように記されていた。

<情報発信>
《情報公開はかなり進んでいますが、市民は満足しているのでしょうか。私はキャスターとしての自らの経験から、今市役所で何が起きているのかを市民目線で伝えていきます。例えば、難解な公文書は公開されても良く理解できないところがあります。また、子ども病院の移転に際しても経緯について、専門家の意見も聞かず、無理のある検証報告には大きな疑問を持っていますし、水増し問題など不透明な経緯は、こども病院・アイランドシティの評価を低めただけでなく、市政運営全体に対する不信につながった責任はたいへん重く、市民への説明責任など信頼回復を図る必要があると考えています》。

 市役所改装工事の疑問点について、ぜひ《市民目線》で答えていただきたいものだが・・・。

 
 
 

 



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