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市役所改装工事・業者選定委員長に市長の友人

事業費は借金 歪む福岡市政

2012年2月 9日 10:55

 7日に福岡市(高島宗一郎市長)が概要を公表した市役所1階ロビーの改装工事をめぐって、歪んだ市政の実態が明らかとなった。

 高島宗一郎市長の発案で決まった同工事の設計業者選定において、市長の友人で市顧問に就任している民間企業代表者を選考委員会委員長に据えていた。

 改装工事費1億3,800万円のうち、7,800万円を借金(起債)でまかなうことになっているが、こうした愚行を止められない市の現状に批判の声が上がりそうだ。
(写真は福岡市役所)

 
市役所改装で市民が「借金」!?
福岡市本庁舎1階ロビー改装後のイメージ  問題の工事は、中央区天神にある福岡市役所1階のロビーを改装し、情報発信コーナーやカフェを設置、さらにイベント用の多目的スペースを整備するというもの。(右は市が公表した改装イメージ図)
 
 改装にかかる事業費は1億3,800万円で、国のまちづくり交付金から3,500万円、市の一般会計から2,500万円のほか、7,800万円を起債でまかなうことになっている。
 市民の暮らしとは関わりの薄い市役所の改装事業に、市民が「借金」を背負うという愚行だ。

方針決定の文書なし
 HUNTERが福岡市に情報公開請求して入手した同工事に関する文書から事業経過をたどってみたが、改装工事を行なうとの方針を決めた時点の公文書は存在していない。
 つまり市内部で、1階ロビーの改装について議論した形跡がないということ。これは市長の鶴の一声で事が進められた時特有のパターンである。

 事業を担当する財政局財政部公有財産課によれば、天神地区全体のなかで市役所のサービスのあり方を探ったという「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」を策定するため民間企業に業務を委託した折の起案文書が「方針決定」にあたると主張するが、これはおかしい。

 本来、市が行なう事業については、予算化の前提として事業の持つ意味合いや必要性が市内部で議論されているはずで、いきなり基本計画の業務委託を発注するということは考えにくい。
 
 市側が言う「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画策定業務委託」についての起案文書には次のような『業者選定理由』が記されているだけだ。
《本庁舎及びその敷地の利活用には、天神の中心部という立地を最大限に活用し、周辺地域と調和したにぎわいを創出するとともに、使用料等の財源確保の可能性について検討を進めることとしている。
このため、業務の遂行には、周辺の商環境、既存のまちづくり事業との整合、来街者への情報発信や回遊性の向上など、多様な角度からの調査や検討を行なう必要があり、これらに関する知識や経験を有する業者を選定する必要があることから、九州地域において同様、類似の業務を確実に行なった実績を有する上記3者を選定する》。 gennpatu 953.jpg

 どこにも市役所ロビー改装の事業化決定を示す文言はない。強いて言えば前段の 《本庁舎及びその敷地の利活用には、天神の中心部という立地を最大限に活用し、周辺地域と調和したにぎわいを創出するとともに、使用料等の財源確保の可能性について検討を進めることとしている》の部分がそれにあたると言いたいのだろう。
 
 ただし、《検討を進めることとしている》という方針を、誰が、何時決めたのかという肝心の部分が見えてこない。
 つまりは、初めから"改装ありき"でスタートし、アリバイ作りのために「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」を策定したということだ。

 右の同業務委託の仕様書を見れば一目瞭然で、委託業務の中には「概算事業費の算出」「実施スケジュールの検討」に加え、「デザイン・基本設計業務プロポーザル事務」としてプロポーザル方式による改装工事の設計業者選定作業の「提案要綱作成」、「審査要綱作成」、「提案比較資料作成」まで作成することを要求していた。

改装工事は高島市長のトップダウンで決まった
 契約関係書類から事業の進み方を時系列で拾った。( )内は契約金額である。
平成23年
5月:「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画策定業務委託」契約 483万円
10月:業務委託の成果物である「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画」公表
11月:「福岡市本庁舎1階ロビー改装工事設計業務委託」契約 489万3,000円
平成24年
1月:「福岡市本庁舎1階ロビー東側改装電気工事」発注 241万5,000円
同:「福岡市本庁舎1階ロビー改装改装空調設備工事」発注 126万2,100円
2月:「福岡市本庁舎1階ロビー改装工事」発注 1,364万550円

 億単位の事業がバタバタと進められてきたことが分かるが、市の担当者に「福岡市本庁舎の利活用に関する基本計画策定業務委託」を予算化した時期について尋ねた。

記者:業務委託費の予算化はいつの時点だったのか?
職員:平成23年の1月か2月だったと思います。

記者:当初はなかったはずの予算になるが、誰の指示で1階ロビーの改装が決まったのか。
職員:市長から予算措置の指示がありましたから。

記者:市長がロビーの改装を指示したのか?
職員:そういうことです。

記者:確認しておくが、この事業は市長の指示ではじめたということでいいか?
職員:そうですね。

 高島市長は平成22年12月の就任直後に、市内部での議論を省きトップダウンで1階ロビーの改装を命じていたのである。

設計者選定委員会
 gennpatu 954.jpg基本計画の策定に次いで、改装工事の設計業者選定がプロポーザル方式で行なわれるが、問題はこの選考過程にあった。
 
 当初、開示された文書の中には業者選定委員の名簿や選定要綱がなかったため、改めて開示を要求したところ、待たされたあげく出てきたのが右のお粗末な文書である。
 
 よく見ると、いっしょに開示された要綱の一部をコピーしただけで、あわてて作ったとしか思えない。選考委員の名簿を用意していなかったのは、実情を知られたくなかったとうのが一番の理由かもしれない。選考委員長は市長の友人だったのである。

 "名簿"にある「福岡市顧問」とは、高島市長就任直後の平成22年12月に広報戦略アドバイザーとして市顧問になった民間企業の代表者である。
 同氏はこの年11月の福岡市長選挙の前後に、高島市長の事務所に出入りしていたことが確認されており、市長就任前からの付き合いだったと見られる。

 なぜ、民間企業の代表者が公共事業の業者選定で選考委員長を務めるのか?担当職員に問い質したが「(改装工事は)広報戦略の一環でもありますから」と歯切れが悪い。
 
 設計者選考要綱に選考委員会の委員長として「福岡市顧問」と明記していることから、確信犯的に顧問氏を選考過程に入れたと見る方が自然なのだが、事業の担当である公有財産課と顧問氏の広報戦略アドバイザーという役割には関係が薄い。
 選考委員トップの決定にあたり、ここでも市上層部からの指示があった可能性が高くなる。

歪んだ市政-問われる「私物化」
 ある福岡市の幹部OBの話が問題点を示している。「長い役人人生の中で、民間企業の代表者を公共工事の設計業者選定委員会のトップにしたなどという話は聞いたことがない。
 責任の所在が曖昧になるだけでなく、市役所の外での顧問の行動にチェックを入れることができないだろう。なによりその顧問が民間企業の代表で、利を追求する立場にいることを忘れているのではないか。不適切なんてもんじゃ済まない。
 そもそも市役所1階の改装など、不要不急の課題ではなかったはずだ。もっと市民の暮らしに目を向ける市政運営を心がけなければ市役所全体が市民の信頼を失うだろう」。

 たしかに、市の担当者も顧問氏に公共工事に関する資格や実績があるのかという記者の問いに答えることはできなかった。
 人選が不適切であったことは明らかだが、高島市長の発案で突然事業化した市役所1階ロビーの改装工事は、高島市長側近のリードで設計業者が決められたことになる。市政の私物化と言っても過言ではない。

 国民保険料を上げる上げないですったもんだした福岡市だが、1億3,800万円もの公費は、市民の暮らしに直結する別の事業に回そうという意見は出なかったのだろうか。
 思いつきで億単位の公共工事を推進した高島市長には、理解できないかもしれないが・・・。



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