税金の無駄遣いといえば、公共事業や天下り法人への過大な支出が思い浮かぶ。
しかし、近年の政治や行政のお粗末な姿を見るにつけ、もっと大きな無駄遣いは他にあるのではないかと思われてならない。
開催中の国会では、消費増税の是非とともに国会議員の定数削減や公務員給与の引き下げが俎上に載るが、政治家の数や公務員の給料が減っただけでこの国が良くなるとは思えない。
問題の本質は別のところにあるのではないだろうか。
政治家の数、約3万7,000人
一概に公務員といっても、国家公務員、地方公務員、さらには政治家や自治体の幹部などの「特別職」もそれにあたる。この国には、一体どれくらいの公務員がいるのかだろうか。
総務省が公表している資料などから、改めて「公務員」の数を調べてみた。
選挙で選ばれた政治家たちは「特別職の公務員」であるが、平成22年12月末の時点で、それぞれの数は次のとおりとなっている(数字は定数)。
・衆議員議員480人
・参議院議員242人
・都道府県知事47人
・都道府県議会議員2,784人
・特別区長23人
・特別区議会議員911人
・市長786人
・町村長941人
・市町村会議会議員3万3,695人
政治家と呼ばれる人の数は3万9,909人ということになる。
国、地方合わせて約350万人の公務員
平成24年1月現在、全国47の都道府県には、787市、748町、184村に23特別区(東京都)を加え1,742の自治体がある(注・政治家の数は平成22年12月末、自治体数は24年1月のもので、それぞれの数字は一致しない)。
すべての自治体の職員、つまり地方公務員(一般職)の数は約281万人前後とされる。
一方、国家公務員の数は約59万人。このうち自衛官が約25万人を占めており、非現業の国家公務員は約30万人といったところ。「公務員」の数はおよそ350万人と見てよさそうだ。ただし、この他に独立行政法人や天下り法人の職員が6万人前後いるとされる。
給与は数十兆円規模-見合う仕事は?
特別職もあわせた「公務員」の給与は、軽く40兆円を超えるとも言われる。国家予算の半分近くを政治家や役人の人件費にかけている勘定だが、問題は彼らの仕事の内容である。
政治家に対する不信が渦巻いている状況から見ても、その数と給料に相応しい仕事をしているとは思えない。とくに、700人を超える国会議員の体たらくは、定数を減らしただけで済む話ではなさそうだ。
役人の仕事ぶりにも疑問が多い。とくに天下り法人などへの「業務委託」に頼る行政の手法は改めるべきで、例えば福岡県は毎年100億円前後、福岡市では市全体の予算規模を縮小させながら、天下り法人への業務委託だけが増え続け、平成22年度には230億円を超える税金が費消されている。
中央省庁でも、平成22年度までは事実上の特命随契となる「一者応札」が続いていた。
こうしたなか、福島第一原発の事故に際しまったく役に立たなかった緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」や、がれきに阻まれ動かすことさえできなかったモニタリングロボットなどに関する業務委託に、毎年10億円単位の税金が注ぎ込まれていたことは周知のとおりだ。
巨額な人件費に加え、天下り先への無意味かつ巨額な業務委託。「役人天国」と言うものの、あまりにひどい実態である。
二本松「戒石銘」
被災地・福島県二本松市に、旧二本松藩の藩主が藩士への戒めとして刻ませた「戒石銘(かいせきめい)」と呼ばれる巨石がある。
刻まれているのは「爾俸爾禄 民膏民脂 下民易虐 上天難欺」のわずか16文字だが、役人の心得を示すものとして、現代においても度々紹介されてきた。
読み下せば「「爾ノ俸 爾ノ禄ハ 民ノ膏 民ノ脂ナリ 下民ハ虐ゲ易キモ 上天ハ欺キ難シ」。つまり、「あなたの給料は民の汗によって納められた税金ですよ。民をいじめれば、罰が下されますよ」というものだ。
残念ながら、我が国の政治i家や役人には、こうした戒めの言葉を噛みしめる人は少ない。その結果が現在の日本なのだ。
見せかけの改革では意味がない
「社会保障と税の一体改革」がスンナリ受け入れられないのは何故か。それは、政治や行政がまともな仕事をしてこなかったことへの不信が募っているからに他ならない。補足するなら、税金への認識が欠如している「公務員」への反発もあろう。
国民の、年金や医療といった社会保障に対する拭い難い不安は、政治家と役人の放漫が招いたものであることは事実だ。
原発に関しても同様で、「嘘」や隠蔽を続けてきた国を信用する人は少ない。
求められているのは、政治家や役人の人数・給料に見合った"まともな"仕事であって、見せかけの改革ではないはずだ。
問題の本質について、国会議員も役人も気付いているはずだが・・・。