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鹿児島・住民無視の傲慢行政

県営住宅問題に見る伊藤県政の現状(1)

2012年1月25日 11:10

 「夢のマイホームは最高の住環境で!!」という言葉を信用し分譲用地を購入、終の棲家ができたと考えていたら、突然、周辺地域の分譲計画自体が大幅に変えられる。
 約束された商業施設もできない。周辺の戸建て予定地を含めすべての土地が賃貸住宅に変更。分譲主体に説明を求めても問答無用で計画変更を押し切る・・・。
そうした事態に巻き込まれた住民はどうするだろう。
 街づくりの未来図のみならず、自分たちの将来設計まで狂わされるのだから、悪徳業者を相手にした反対運動に火がつくのは当然のことだろう。
 これは、鹿児島県で実際に起きている出来事なのだが、悪徳業者が「県」だったのだから始末が悪い。鹿児島市松陽台地区における伊藤祐一郎県政の暴慢ぶりをシリーズで追う。

守られぬ「約束」
 問題の分譲地は鹿児島市松陽台町にある「ガーデンヒルズ松陽台」。左下は、鹿児島県に情報公開請求して"やっと"入手した鹿児島県住宅公社がばら撒いた土地分譲を宣伝するためのチラシの一部である。

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 赤い矢印とアンダーラインで示した土地は「住宅・施設等用地」と記されている。県はこの土地をはじめ右の図面にある3区画を公社から購入、建設地②に県営住宅約30戸を建設するほか、③には"集会所"を予定している。
 ②の土地5,775㎡は平成22年に約3億2,000万円で、①および③の土地4,283㎡は昨年2月に約2億7,000万円で取得したものだ。
 
 一方、松陽台で分譲が開始された当初に公社が配布したチラシが次のものであるが、①の土地は「店舗等用地」と明記されているのがわかる。公社側は分譲開始当時からこの土地に商業施設を誘致すると明言していたとされ、地元住民が「話が違う」とするひとつの要因になっているのだ。
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県営住宅事業を所管する県建築課住宅政策室や公社は、松陽台町で開かれた地元説明会で、「店舗等用地」と記されたチラシはないと説明したというが、後にこのチラシの存在が明らかとなっている。
 
 地元住民らに話を聞いたが、平成15年の分譲開始からしばらくの間は、たしかに「商業施設ができます」という説明があったという。
 「最高の住環境」には、周辺の自然とともに子どもの通学や日常生活における買い物などの利便性が入っているはずで、県の計画変更は、それまでの約束を反故にするものとしか映らない。住民が怒るのは当然と言える。
 県の住宅政策室は「確かに県として土地は購入したが、商業施設の誘致を諦めたわけではない。誘致は続ける」としているが、具体的な動きは見えていない。

大幅に変えられた分譲計画
 松陽台の住民が反対運動に立ち上がったのは、分譲計画自体が大きく変更されたことによるのだが、住民にとってその内容は、述べてきた3区画の問題以上に深刻だった。
 
 県側はそれまで、約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だったが、思うように売却が進んでおらず、現在までに170区画程度しか捌ききれていない。
 公社の経営を圧迫していたことから考え出されたのが、ガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める区画約5.6 haを「県営住宅」にしてしまおうというものだった(下の図面、赤いラインで囲んだ部分)。

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 県側は、「まだ決定したわけではない」としているが、地元住民へは「県営住宅」の建設を行なうことを既定方針として説明しているのだという。
 事実、県は10年かけて300戸の県営住宅を建設する計画であることを認めている。1年間に30戸程度を造るため、その都度公社から土地を購入していくことになるという。
 取材に対する説明とは裏腹に、計画は強引に進められているのである。

 土地購入時の説明とあまりに違う県側の方針変更に、怒りの声が上がるのは無理からぬ話だ。
 
隠蔽と暴政の裏に知事の意向
 住民の反対意見を無視して、県営住宅建設を進める手法には大いに疑問がある。
 取材を開始した昨年9月、HUNTERは鹿児島県に対し「鹿児島市松陽台町に移転・建設を予定している県営住宅に関するすべての文書」を情報公開請求した。

 これに対し県は、同時に提出した薩摩川内市の産業廃棄物処理場に関する請求も含め、開示決定期限を遅らせた上、「開示、不開示のいずれの判断もしない」としていったんは情報公開を拒否していた。

 隠蔽と暴政の裏には、少数意見を踏みにじる伊藤祐一郎知事の傲慢な県政運営の姿勢が存在する。松陽台問題については、さらに詳しく報じていく。

                                  

つづく



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