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僭越ながら:論

まやかしの消費増税

2012年1月24日 10:00

 きょう、消費増税を軸にした「社会保障と税の一体改革」の行方を決定づける通常国会が召集される。
 
 会期は6月21日までだが、この150日間の間には、平成24年度予算案、消費増税関連法案、国家公務員給与削減法案、衆議院定数の見直しなど、国の将来を左右する重要な諸課題が審議される。

 野田首相は、解散も辞さずというまさに不退転の覚悟で臨むとしているが、とりわけ消費増税には自らの政治生命だけでなく、民主党そのものの存亡をかける構えだ。

 訳知り顔で「社会保障制度を維持するためには多少の負担はやむを得ない」とする御用学者やメディアの論調もあるが、果たして消費増税で本当にこの国は救われるのだろうか。

 じつは、消費税を上げても税収全体を押し上げるものではない。消費増税でこの国の未来が拓けるという政治家の言はまやかしなのである。

国民不在の説明会-またも「やらせ」?
 財務省は21日、社会保障と税の一体改革に関する地方説明会を開始した。28日には福岡で開催する予定だというので、財務省に開催要領を聞いたところ、一般の参加はできないのだと言う。
 「地方にうかがう機会を設けたいということで説明会を企画しましたが、参加者については財務局で行なう日々の業務で接点のある経済団体にお願いして、参加者を募ることになっています」(財務省職員)。

 そういえば、21日の説明会を報じるテレビのニュースでは、「勉強になりました」、「ある程度の負担はやむを得ない」といった参加者のコメントが紹介されていた。
 昨年、佐賀県で行なわれた玄海原発をめぐる"やらせ説明会"を想起させる流れである。
 幼稚なアリバイ作りではあるが、財務省と利害関係を有する経済団体の関係者だけを出席させ、"国民向け説明会"と称する唯我独尊の姿勢は、国民と乖離した国の現状を如実に示している。

 ちなみに、一般国民が参加可能な新たな説明会については、「検討中」(同)ということで、何も決まっていない。
 
限定的な消費増税の効果
 下のグラフは、消費税が導入された平成元年の2年前(昭和62年)から平成22年までの一般会計における年度ごとの税収額を示したものだ。

20120124_h01-01.jpg 消費税が導入されたのは平成元年4月だが、この年度の税収は4兆円ほど増加している。消費税1%につき、約2兆円の税収という数字が見えてくる。
 翌平成2年と同3年は、さらに5兆円の増収だが、これはバブル期の最後で所得税収が大きく伸びたものである。

 ここで財務省が公表している主な税目ごとの税収の推移を示すグラフも見ていただきたい。

011.gif 平成9年には消費税率が3%から現行の5%に引き上げられ、消費税分が3兆円強の増収となっているのだが、上の棒グラフで分かるように税収全体は1.8兆円程度の伸びでしかない。

 その後、消費税は毎年約10兆円で推移するが、税収全体は40兆円台と50兆円台を行き来するという不安定な形となる。
 
 平成19年のサブプライムローン問題に端を発した政界的金融危機と平成20年のリーマンショックで、所得税、法人税ともに大幅な落ち込みとなり、平成21年の税収はついに40兆円を下回るところまで落ち込んでしまう。
 その中にあっても、消費税は依然として10兆円台を維持している。

 つまり消費税は、一定の税収を保証する安定的な税源ではあるが、税収全体を押し上げる性格のものではないということだ。
 財政健全化の鍵を握っているのは、むしろ所得税や法人税の動向なのだ。

描かれぬ"デフレ"への対応策
 消費税1%で2兆円、税率を10%にすればざっと20兆円を生み出す計算になるが、ことはそう単純ではない。
 
 デフレとは、簡単に言えば物価の下落傾向が続くことである。結果として企業収益は減少し、給与所得も減る。
 日本経済特有の現象となったこの果てしない悪循環に対して、民主党政権は未だに収束への処方箋を描ききれていない。
 この状態のまま「増税」を決めれば、さらに消費マインドを悪化させ、さらに深刻な状況を招来することになる。
 法人税や所得税による収入がさらに落ち込むことはもちろん、消費税収入も思惑通りには上がらないことになる可能性が高い。

 デフレを脱却するための対策を置き去りにしたまま、増税論議をすること自体が間違いなのであるが、野田首相やその側近たちにはそのことが理解できていない。

世間知らずな"財務官僚"の暴走
 野田首相を操っているのは財務省の勝栄二郎次官だとされるが、財務省は財金分離によって金融監督庁と分割されて以来、実体経済についての認識が欠如してしまっている。
 生活苦というものを知らぬ財務官僚が、国の失政を糊塗するための増税を断行しようと、名誉欲の権化となった「野田佳彦」という政治家を使っているに過ぎない。

 年金、医療、介護などにかかる社会保障給付費は、年間約100兆円に達している。国民が直接負担する分と支給額との差額を税金でまかなっているわけだが、消費税を上げたとしても、限定的な効果しかない。
 
 さらに、経済状況の悪化が進めば国民の直接支払い分が減ることは自明の理。現に保険料などが払えない国民は、増える一方である。
 社会保障費の差額を税金で補おうにも、税収全体が伸びなければ、いずれ消費税アップ分だけでは不足する事態となる。
 国の人口が減少傾向に転じていることも忘れてはならない。

 現段階での消費増税は、安易な弥縫策に過ぎないばかりか、国民にさらなる疲弊をもたらす可能性があることを認識すべきである。
 
 ある民主党国会議員は、きょうの国会招集を前に「世間知らずの財務官僚による暴走は止めなければならない。離党も覚悟して増税に反対する」と断言した。
 
 民主党に言いたい。「国民の暮らしが第一」というキャッチフレーズは、あなたたちのものではなかったのか。それを実現するためには霞ヶ関との対決姿勢を貫く必要があったのではないのか。
 できないのなら、解散して信を問うことが「憲政の常道」だったはずだ。
 



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