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高島福岡市長、暴追には不熱心

大臣要請知事らに任せ大阪出張

2012年1月20日 09:15

 暴力団の犯行と見られる発砲事件が相次ぐ福岡県。組織同士の対立抗争だけでなく、民間企業の経営者らが相次いで狙われる事態となっており、今年に入ってからも17日に中間市の建設会社社長が銃撃され重傷を負う事件が起きている。

 そうしたなか、福岡市の高島宗一郎市長が、暴力団対策法改正を実現するための法務大臣への要請に出向かず、大阪でソーシャルビジネスの「調査」に行っていたことが分かった。
 国に対する要請は、小川福岡県知事や北橋北九州市長が行ない、福岡市からは市長の代理として副市長を参加させていた。 
 
 官民あげての暴力団追放運動が繰り広げられ、取締りの強化策が求められている矢先、先頭に立つべき高島市長の暴追に対する不熱心さが浮き彫りになった形だ。

大臣への要請に代理の副市長
 昨年12月26日、法務省の大臣室で小川洋福岡県知事と北橋健治北九州市長が平岡法相(当時)と向き合った。
 続発する暴力団による凶行に対応するため、暴力団対策法の抜本的改正に加え、通信傍受要件の緩和、おとり捜査、司法取引等の制度化といった暴力団に対する新たな捜査手法の早期導入を国に迫るための要請だったが、要請文に名前を連ねた高島福岡市長の姿はなかった。
 警察官OBの大野敏久副市長に代理を務めさせていたのである。

 暴力団の壊滅には、暴対法の改正が不可欠となっており、市民の安全を守るためにも国を動かす必要が生じていることは言うまでもない。しかし、高島市長はこの重要な要請活動に不参加だったのである。
 疑問に感じていたところ、当初は高島市長も小川知事らと行動を共にする予定があったことが分かった。
 この日、高島市長はどこで何をやっていたのか?

喫緊とは思えぬ「ソーシャルビジネス調査」
 gennpatu 911.jpg福岡市に情報公開請求して入手した高島市長の当日の「旅行命令書」に記載されていたのは、大阪出張を示す内容。目的は「ソーシャルビジネス調査」とあった。

 警察がより強力な取締りを行なえるようにするためには、法改正や新たな対策の実現が必要となる。なにより暴追は喫緊の課題であり、だからこそ知事や北九州市長が自ら足を運んで法務大臣に要請を行なう必要があったのだが、大臣への要請より大切な「ソーシャルビジネス調査」とは何か。
 この日の市長による大阪出張の担当である市総務企画局に聞いた。

 当日、市長に同行したという職員によれば、ソーシャルビジネスとは「社会問題をビジネスの手法で行なうこと」(同職員)で、大阪にこれを実践しているNPO団体があるため、話を聞きに行ったという。

 ソーシャルビジネスは、「新しい公共」とも表現され、社会的、地域的課題の解決を"事業"として成立させるというもの。対象は貧困問題からまちづくりまで幅広い分野に及び、行政では手が届かなくなった課題の解決に期待がかかる手法のひとつである。

 ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏によりバングラデシュで創設されたグラミン銀行が有名で、同行はこれまで一般の銀行が貸さなかった貧困層に少額なローンを無担保かつ低利で貸し出し、貧困からの脱却を支援している。

 しかし、福岡市にとって「ソーシャルビジネス調査」が暴追という最重要課題より優先される問題だったとは思えない。

不可解な大阪出張
 関係者の話を総合すると、法務大臣への要請については、12月のはじめに法務省側へ目的と日程の打診を行なっていたという。
 一方、高島市長の旅行命令書の起案日は12月20日だ。
 
 市の担当者は、「市長はお忙しくて、なかなか日程をとることができない。早い時期から(ソーシャルビジネス)調査を(市長に)打診した」と言うが、前述したとおり、法務大臣への要請は高島市長自身が出向くことが想定されていたとされる。

 ふたつの用務について、高島市長自身が、どちらに出張すべきか判断したということになるが、身体を張って暴力団追放運動をおこなっている市民のことを考えると、優先すべきは東京出張だったはずだ。

 関心のあることには積極的に取り組むが、市民の暮らしに関することには興味を示さないと言われる高島市長。悪い癖が出たということなのだろう。

 問題の大阪出張については、12月26日にNPO団体を訪ねただけで、その他の用務は一切なかった。この日は大阪泊で、福岡へは翌日になって帰っている。

 旅行命令書の備考欄には「大阪市役所」と記されその住所も併記されているが、市役所には行っていないのだという。高島市長の大阪出張は不可解なことばかりだ。

求められる市長の覚悟
 市民生活を脅かす暴力団の犯罪行為を食い止めるためには、行政トップに不退転の覚悟が求められる。さらに、法改正や新たな捜査手法を求めることには、関係自治体の強い意思表示も必要だ。
 
 多くの市民が望む「暴追」に関する国への要請を放り出し、調査目的の出張を選んだ高島市長の行動は問題であり、暴追に不熱心と批判されても仕方のない事態だ。



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