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徐福伝説の霊山と産廃処分場

鹿児島県、認可権を盾に寺に「強要」

2012年1月18日 09:25

 鹿児島県が、川内原子力発電所の立地自治体である薩摩川内市で建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場にからんで、反対運動の精神的支柱となっている真言宗の寺に、宗教法人の認可権をちらつかせ反対運動から手を引くよう迫っていたことが分かった。

 公権力を使った強要行為ともとられる事態だが、直接寺側に接触した県側の幹部は発言内容を認めながらも「問題はない」と強弁している。

(写真は鹿児島県いきち串木野の鎭國寺境内から見た『冠嶽』の山頂)

 
宗教法人の認可権ふりかざした公社幹部
 昨年9月、鹿児島県の第3セクター「鹿児島県環境整備公社」の専務理事と県環境林務課廃棄物・リサイクル対策課の参事が、同県いちき串木野市にある高野山真言宗の「冠嶽山鎭國寺頂峯院」を訪れた。

 対応した住職らに対し専務理事らが申し入れたのは、県が薩摩川内市川永野で建設を予定する産廃処分場への反対運動を止めることだった。

 処分場建設に疑問を投げかける寺側と、問答無用で建設を強行しようとする専務理事らの話は平行線をたどったが、この途中、専務理事が次のような発言を行なった。
(注・以下、寺側が専務理事らの同意を得て録音したやり取りから、問題の箇所を起こしたもの)

専務理事これは理事長(注・鹿児島県環境整備公社の理事長の意)の方からですけれど、ご住職をはじめ役員の方々が、私どもとしては妨害の行為ということをですね、そういうことに参加される、あるいは信者の方をマイクロで動員されるということがありますと、行政としては宗教法人としての本来の活動としてちょっと問題があるのではないか、と。

寺側:宗教法人に対してそういう圧力をかけるんですか?

専務理事私どもは公社ですので、それはまた所轄行政の方で

・・・中略・・・

寺側:今の話は録音していますよ。

専務理事:いいですよ。私どもは公社として所轄行政庁の方にそういったことは問題がないのかということも伺いながら進めていかなければいけない。

 鎭國寺は、昭和61年に鹿児島県から宗教法人の認可を受けており、県が所轄庁ということになるが、発言主の専務理事(公社の事務局長も兼任)は県の派遣職員なのだ。また、専務理事は「これは理事長の方から」と断っているが、公社の理事長は鹿児島県の副知事である。
 
 つまり、処分場建設工事に異を唱えるなら、県として宗教法人の認可を見直すことになるぞ、と言っているに等しく、「強要」との批判を受けてもおかしくない発言だ。

 16日、電話取材に応えた専務理事は、あくまでも「公社としての発言」と逃げを打つが、録音されていることもあって発言内容については否定しなかった。
 
 「妨害」、「安全の確保」といった言葉が何度も出るが、そもそも反対運動を招いたのは、不透明極まりない処分場の建設計画と、権力をかさに説明を求める地元住民や寺側の声を圧殺したことが原因。
 しかし、その点に関する指摘に対しては何の反省もなく、「行政機関としてやるべきことをやっている」と言い張る県側の姿勢を、理解しろというほうが無理だろう。
 鎭國寺側が、裁判も辞さずという構えであることは言うまでもない。 
 
 県民の声を無視する伊藤祐一郎知事の狂った県政に対峙する「鎭國寺」とはどのようなお寺なのか、改めて同寺の縁起を紹介しておきたい。
 
「冠嶽山鎭國寺頂峯院」
 紀元前3世紀、秦の始皇帝に仕えたとされる「徐福」が、不老不死の妙薬を求めて日本に来たという。
 いわゆる徐福伝説は、北海道から九州までの日本各地に残されているが、鹿児島県いちき串木野市と薩摩川内市の境に位置する「冠嶽(かんむりだけ)」は、徐福が冠を納めたことが口碑に残る霊山である。
 
 山の中腹にある「冠嶽山鎭國寺頂峯院」は、蘇我馬子が紀州熊野権現を勧請し、その別当寺として興隆寺を建立したことを起源とし、室町時代に現在の名称になったという高野山真言宗の寺である。
 
「丸に十の字」と「八咫烏」 薩摩藩・島津家が深く信仰の対象としたことでも知られるが、明治の廃佛毀釈で廃寺となっていたものを、昭和58年に現山主の村井宏彰師が入山、復興を果した。
 境内にある黄不動堂の屋上に、薩摩島津家の家紋である「丸に十の字」と熊野権現の象徴ともいえる「八咫烏」(やたがらす)が並んでいるのは、そうした縁起に由来するのだという(写真参照)。

 この由緒ある寺が、薩摩川内市の住民とともに、産業廃棄物処分場の建設を強行する鹿児島県と戦っている。もちろん、好んで争いの渦中に飛び込んだわけではない。
 管理型と呼ばれる最終処分場の建設予定地が、鎭國寺のある霊山・冠嶽の山麓にあたるのだ。寺側が「はい、そうですか」と了承するはずがない。

 霊峰の自然が貴重であることはもちろん、東嶽、中嶽、西嶽の三山をもって成る冠嶽全体は、薩摩川内市やいちき串木野市の貴重な水源地となっているのである。  
 さらに、処分場予定地の住民自治会も処分場建設に真っ向から反対しており、こうした人たちが鎭國寺を中心に反対運動に立ち上がるのは当然のことだった。

住民の声、無視する伊藤県政 
 問題は、これまで度々報じてきたとおり、産廃処分場の許認可権者である鹿児島県が、地元住民をカネと力でねじ伏せて迷惑施設の建設を強行するという狂気の沙汰を演じていることだ。

 薩摩川内市の処分場建設をめぐっては、県職員を大量に動員し、地元住民らを弾圧したり、HUNTERの情報公開請求を拒否するなど、常軌を逸した県政運営の実態が明らかになっている。

 鹿児島県ではこのほか、鹿児島市内の松陽台地区における県営住宅建設をめぐって、住民の意見を聞かずに計画を決定するなど、伊藤県政の強権振りが際立つ。
 
 HUNTERでは、県が進める産廃処分場と松陽台住宅の問題点について、詳しく報じていく予定だ。



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