福岡県八女市(三田村統之市長)発注の公共工事をめぐって、「官製談合」の疑いを指摘する声が上がるなか、平成22年に八女市が発注した球場整備工事で、極めて不適切な事態が起こる。
八女市が事業予算を策定する段階で、民間業者1社のみに工事費の積算を依頼し、提出された「工事内訳書」の"概算設計見積額"をそのまま予算額として決定。その後の入札で八女市の地場ゼネコンが100%の落札率で工事を受注していたというもの。
しかし、問題はそれだけに止まらなかった。
(写真は問題の工事が行なわれた「八女市岡山球場」)
見積り業者が下請に!
右の文書は、八女市役所から情報公開請求によって入手した「八女市岡山球場整備工事」の施工体系図である。
下請契約を請け負ったのは、平成21年5月に八女市から当該工事の見積もりを依頼され「工事内訳書」を提出した久留米に営業所を置くスポーツ施設専門建設業者(本社・東京)なのだ。
工事予算策定時の見積りに協力した業者が、落札した地場ゼネコンの下請で施工に参加し、利益を得ていたことになる。
「八女市岡山球場整備工事」の入札では、100%という落札率で受注業者が決まっているが、積算した業者がその地場ゼネコンの下請に入ったことで、入札自体の公平性に疑義が生じることになる。
工事に関する詳細を知る業者が施工する側に加わったことで、入札の公正性が担保できなかったことは事実だ。
工事金額への疑問
八女市への情報公開請求で入手した文書の中には、工事を受注した地場ゼネコンからスポーツ施設専門業者への下請工事にかかる「註文書」がある。
下請金額は19,950,000円(税込み)。八女市と地場ゼネコンとの工事契約金額は34,020,000円で(同。落札金額32,400,000円)、その6割近くが下請業者に流れたことになる。
その他、仮設工事と給水工事の合わせて770,000円が別の下請企業に流れ、地場ゼネコンの取り分は13,300,000円となる。
地場ゼネコンが約1,300万円分の仕事をやったかどうかは疑問。なぜなら、工事にかかる資材の納品書に記された宛名は、大半がスポーツ施設専門建設業者となっているからだ。
地場ゼネコンが、現場監督を出した程度の仕事量だったとしたら、明らかに過剰な工事金額だったことになる。
市側の説明
前稿で「八女市と業者による猿芝居」と表現したのは、こうした経過によるものなのだが、当の八女市側は一連の事実について、次のように説明していた。
・市の体育団体関係者から 「八女市岡山球場」の整備について度々要請があった。
・特殊な工事だったため、予算策定について体育団体関係者に相談したところ、久留米に営業所を置くスポーツ施設専門建設業者を紹介された。
・同社が施工に参加するするとは思っていなかった。
担当職員に、施工業者の中に見積りを行なったスポーツ施設専門建設業者が入っていることを確認した時にどう思ったのか聞いたが、「腰が抜けそうになった」と明言している。
不適切な事態が起こっていることを認識していたことになる。
しかし、公開された公文書には、認識していたはずの不適切な事実については一切記されていない。
球場整備工事の終了後に作成された工事成績評定表には、《施工体制、管理体制共に良好で・・・中略・・・関連業者との連絡調整も良好で、市との対応も誠実に行なわれ工期内に完了、書類も問題なし》と記されていた(右の文書参照。赤いラインはHUNTER編集部)。
事実が隠蔽されたていたことは疑う余地がない。
市長責任
じつは、八女市に情報公開請求し、事実関係について関係職員を問い質したのは一昨年のことだった。
八女市発注工事の入札で高い落札率が続くことに疑念を抱いた記者が、取材中につかんだ球場整備工事の「疑惑」。開示された文書を前に、うなだれる課長(当時)以下の職員。
市側が正直に不適切だったことを認めたため、事実関係を三田村市長に報告し、こうした異常な行政運営を改めるように強く要請し、記事化を見送っていた。
しかし、三田村市長は「反省」という言葉を知らなかったらしく、同市の入札状況は変わるどころか、ますますエスカレート。高額な工事費が投入される工事は軒並み95%以上の落札率で、100%という数字も頻発している。
八女市民の血税は、市長のものではないはずだが・・・。