全国有数の茶どころとして知られる福岡県八女市(三田村統之市長)で、異常な事態が続いている。
同市発注の公共工事をめぐって、落札率95%を超える入札が続出。98%、99%台といった高率入札だけでなく、複数の入札で100%という数字さえ出ている。
県内主要自治体の入札結果と比べてもこうした傾向を示すところは皆無に近く、同市だけの特殊な現象と見られる。
建設関係者からは「官製談合」を指摘する声も上がっている。
(写真は八女市役所)
6割以上が95%超の落札率
平成23年4月から今年1月までに、八女市が実施した公共工事の入札は269件。同市が公表した入札結果を確認し、落札率の動向をまとめたところ、次のような結果となった。
100%・・・ 4件
99%・・・21件
98%・・・42件
97%・・・36件
96%・・・32件
95%・・・38件
95%以上の高率で工事を落札した件数は合計173件。これに対し、95%未満もしくは「不落」(入札不成立)となった入札は96件だった。
実施された入札全体のじつに6割以上が、95%を超える落札率だったことになる。
一般的に、落札率95%以上の入札は「談合」の可能性が高いとされているが、そうした意味で八女市の平成23年度の入札結果は、驚異的なものだと言える。
八女市ではここ数年、同様の状況が続いていたのだが、昨年の春以降、高い落札率を示す入札が増加している。
平成22年10月から同23年3月までの6か月間の数字は以下のとおりとなっている。
100%・・・ 5件
99%・・・10件
98%・・・14件
97%・・・20件
96%・・・19件
95%・・・17件
100%が5件もあることには驚きだが、95%以上の落札件数は85件、95%未満もしくは「不落」が84件で、高率入札は総件数の5割だった。もちろん、この数字にしても主要自治体ではあり得ないものだ。
高額工事で高い落札率
もうひとつ、八女市の入札結果で注目すべき特徴がある。数千万円~1億円を超える八女市では高額とされる工事の入札結果が、総じて高い落札率となっていることだ。
(右はその一例。黒塗りと赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
昨年7月6日に実施された入札は7件だが、この日はその傾向が顕著に表れている。
7件中3件が1億円以上の工事で、2件が千万単位の工事だったが、入札結果は次のとおりなのだ。(工事名、入札予定価格、落札金額、落札率の順)
・「八女市立上陽北汭学園校舎増築建築主体工事」134,700,000円 131,000,000円 落札率97.25%
・「八女市立上妻小学校屋内運動場増改築建築主体工事」167,600,000円 164,500,000円 落札率 98.15%
・「八女伝統工芸館物産館(仮称)建築主体工事」110,400,000円 110,000,000円 落札率 99.64%
・「黒木中学校校舎改修等工事」55,610,000円 53,750,000円 落札率 96.66%
・「八女市立上妻小学校屋内運動場増改築電気設備工事」31,950,000円 31,000,000円 落札率 97.03%
「八女市立上陽北汭学園校舎増築建築主体工事」(落札率97.25%)と「八女市立上妻小学校屋内運動場増改築建築主体工事」(落札率 98.15%)は、JV(特定建設共同企業体)相手が違うものの、八女市の地場大手が落札している。
市の積算根拠は他の自治体と同じ
県内主要自治体の同時期における入札結果を見ると、最低価格に大半の業者が張り付き、くじ引きによって落札者を決定するケースが多い。八女市の状況は極めて異例で、大掛りな談合を疑わせる事態と言っても過言ではない。なぜこうしたことが可能なのだろう。
第一に考えられるのは、八女市の入札予定価格が他の自治体より低く設定されている場合だ。建設コストを抑えた結果がもたらした入札状況なら納得できるが、その可能性は低い。
25日、八女市役所の建設課を取材したが、入札予定価格の積算根拠について確認したところ、案の定「県の歩掛り(ぶがかり)を基に入札予定価格をはじき出してしています」との回答だった。
八女市も他の自治体同様、国や県が毎年度ごとに制定した建設工事にかかる標準的な建設単価などを基に入札予定価格を算出しているということだ。八女市の建設コストが極端に低いわけでもない。
すると、偶発的に高い落札金額が続出してかというと、前述のデータからして到底それは考えられない。
99%あるいは100%といった落札率の数字は、そう頻繁に出るものではない。八女市の建設業界だけが企業努力で神がかり的な積算をしているとも思えない。
プロの世界である以上、ある程度入札予定価格に近い数字をはじき出すことはできるだろうが、誤差がゼロまたはコンマ以下という事態がこれほど続くはずはないだろう。
残る可能性としては、入札予定価格が事前に漏れているということになるのだが・・・。
「官製談合」との指摘も
県南の建設業関係者からは、「八女市では、特定の業者に予定価格が漏らされ、業界で談合しているのではないか」といった指摘が寄せられている。もし事実なら明らかな官製談合であり、入札妨害の可能性が生じる。
じつは、100%の落札率を記録した入札に関して、数年前、八女市でとんでもない"事件"が起きていた。