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福岡市事務規定違反問題で新たな事実

特例認める裏づけ文書「なかった」 

2011年10月 6日 05:25

 福岡市が、事務分掌を定めた条例や規則に反して、公共工事の基本設計にかかる入札や契約事務を原課(直接事業を担当する部署)に実施させていた問題で、新たな事実が明らかとなった。

 市契約課は、基本設計を原課で行なうという特例を認める根拠として、昭和60年に市内部で決めたという""取り決め"の存在を示し、証拠となる文書があるはずだと明言していた。
 ところが、特例を認めてきた裏づけとなる文書は見つからず、一転して不存在を認めることとなったもの。

 市の契約事務のうち、原課が行なってきた基本設計の入札や契約は、規定違反だった可能性が高くなった。

内部取り決め文書「なかった」
 市財政局契約課は当初、HUNTERの取材に対し「基本設計は原課が行なうとする特例は、昭和60年に市内部で取り決められており、そのことを示す文書が総務企画局に残されているはず」としていたが、5日になって「文書はなかった」と回答。
 
 市の事務分掌を定めた「福岡市事務分掌条例」(昭和33年施行)、「福岡市事務分掌規則」(昭和33年施行の同規則を全面的に改正。平成17年施行)、「福岡市契約及び検査に係る事務分掌の特例に関する規則」(平成13年施行)の特例を認める公的文書が存在しないことが確定した。

 "設計契約の予定価格が10万円以上のものは契約課"とする分掌規定は、明確な根拠もないまま、26年間以上破られていたことになる。

市契約課「問題ない」と開き直り
 市契約課は、「違法ではない」としているが、市内部の"言い伝え"だけが一人歩きし、取り決めを行なった記録や、それを明文化して規則に盛りこむこともないまま、規則違反に基づく支出負担行為が続いてきたことは事実。
 明らかな条例および規則違反で、「何も問題はない」という市側の開き直った姿勢は、到底容認されるものではない。

 事業を直接担当する原課の職員は、受注を狙う企業関係者との接触機会が多い。そのため、入札や事業遂行の過程で癒着を招く怖れは否定できない。
 一定金額以上の契約事務を財政局契約課の分掌事務としているのは、こうした腐敗の可能性を排除するためであることは論を俟たない。

 公共工事の基本設計は、実施設計とそれにつづく工事に直結しており、事業の成否を決定づける重要な委託業務でもある。
 公正・公平な事務手続きが担保されないまま、基本設計の入札が繰り返されてきたことは、「市民を欺く行為」(市民オンブズマン福岡・児嶋研二代表幹事)であったと同時に、契約自体の有効性に疑問を投げかけるものだ。



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