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僭越ながら:論

先行き見えた野田政権

2011年9月27日 10:10

 松下政経塾出身の国会議員について、口は達者だが政治的には幼いと述べてきたが、やはり間違ってはいなかったようだ。
 
 鳩・菅の混迷期を脱して、泥臭い仕事で国民の期待に応えてくれそうに思えた野田首相だが、滑らかなのは口だけ。復興や原子力行政についての具体策はまるで出てこない。

 走り出したのは「増税」ありきの議論ばかりで、財務省政権との陰口が信憑性を帯びはじめている。
 
 党是とも言うべき"政治主導"をかなぐり捨てた状況で、どうやら野田政権の先行きが見えはじめた。

原発に関する二枚舌
 福島第一原発の事故を受けて、菅前首相は「脱原発」への転換を表明。後任の野田佳彦首相も就任直後はこの路線を踏襲する発言を行なっていたが、初の外交舞台となった国連総会では一転。"原子力の安全をさらに強化して原発利用を継続、原発の輸出も続ける"と言い出した。

 国内向けと諸外国向けに2つの舌を使い分ける政治手法は、決して褒められたものではない。つまりは二枚舌ということで、姑息な政治家であることを露呈したようなものだ。
 
 国民には福島第一原発事故の詳細さえも説明されておらず、明るみになるのは電力会社や国による「やらせ」や隠蔽、ごまかしの事実ばかりだ。放射能被害についての実態や将来の見通しさえつまびらかにされていない。

 なにより重いのは、福島第一原発の事故が収束していないという現実だ。にもかかわらず、原発を途上国などに輸出すると断言する神経は理解に苦しむ。
 
 いかに原発の安全性を高めても、放射能災害を完全になくすことなどできない。地震や津波だけでなく、人為的ミスやテロなど事故を誘発する原因はいくらでもあるからだ。
 残念ながら途上国では、そうした危険性が日本国内よりはるかに高いと考えるのが普通ではないのだろうか。

 原爆と原発事故という2つの経験を経たいま、日本が国際社会で訴えるべきは放射能被害の怖さや深刻さであって、原発の安全性や可能性ではなかったはずだ。
 
 核の恐怖をもっとも良く知る国が、いったん事故が起きれば制御できない原発を売りつけるというのは、"死の商人"と同等かそれ以下ということになるが・・・。
 
 恥を知らぬ姿勢が、国際社会から評価されるとは思えない。

原発の実態、無視する首相
 野田首相には、原発に関する広範な議論を求める意思もないらしい。とくに、原発再稼動問題に関しては、原発を取り巻く状況を無視して、早急にことを進める姿勢を鮮明にしはじめた。
 立地自治体とその周辺という狭い範囲での議論を前提に、再稼動を進める意図も明白だ。これでは原子力行政のあり方に何の進歩もない。
 
 原発立地自治体をめぐっては、原発マネーに群がる政治家や地元企業との不適切な関係が次々と明らかになっている。
 原発マネーが地域の自治能力を削ぐことも大きな問題で、25日に行なわれた山口県上関町の町長選挙では、原発の新・増設について個別の方針を示さない国に翻弄される形で、不毛ともいえる戦いを繰り広げさせてしまった。
 
 福島第一原発の事故は、放射能が広範囲に被害をもたらすことを証明しており、原発の是非を立地自治体だけに委ねる現行制度の矛盾を指摘する声は確実に拡がっている。
 野田首相は、こうした実態を無視して原発再稼動を進めることを国際的に表明したわけで、視線が国民ではなく電力会社を中心とする財界に向けられていることを宣言したようなものだ。
 そうした意味では、鳩・菅よりたちが悪い。
 
悪徳代官
 東日本大震災以降、平成23年度1次補正に約4兆円、2次補正に約2兆円が費やされてきた。
 3次補正は13兆円だというが、財源を増税でまかなうという野田首相の考え方には、とうてい賛同できない。
 
 まず、13兆円におよぶ補正予算の内容が不透明で、どうやって積み上げられたものかの説明は一切ない。肝心の復興に向けてのビジョンも示されていないのである。
 なぜ13兆円なのか、どのような復興計画を立てているのか、国民に説明するのが先ではないのか。
 
 首相が言う「次代にツケを残してはいけない」というもっともらしい言葉は、あくまでも増税を前提にしたものであり、財源を他に求める考えがないことを示しているだけだ。
 国民が求めているのは、復興であり経済の再生ではあるが、安易な増税ではない。
 どこかの政党の決め台詞らしいが、やるべきことを放置したまま国民にツケだけを回すことは断じて許されない。
 
 埼玉県朝霞市では、事業仕分けで中止されたはずの豪華公務員宿舎が建設されるという。総戸数850、事業費は100億円を超えるものだが、首相は国会答弁で計画変更の意思がないことを明言している。
 しかし、被災地ではいまだに避難生活や仮設住宅住まいを強いられている人たちが万単位で存在する。こうした現実を無視して公務員に豪華宿舎を提供する必要など、あるはずがない。
 100億円ものカネがあるのなら、公務員のためではなく復興に回せという意見を一蹴する首相に、この国のトップリーダーとしての資格があるとは思えない。

 デフレとは簡単に言えば、物の値段が下がることで悪循環に陥り、結果的にカネが不足している状態だ。そこに「増税」とくれば景気はさらに悪化する。
 子どもでも分かる理屈だと思うが、野田首相は「増税」がこの国を救う唯一の道だと信じているらしい。信じ込ませたのが財務省であることは言うまでもない。
 
 カネがないから「増税」というのは、もはや政策とは呼べない。カネがないなら年貢を上げるという時代劇の悪徳代官の所業と同じで、苦しむのは庶民ということだ。
 そういえば悪徳代官がつるむのは、強欲な商人と相場が決まっている。

 野田佳彦という政治家は、原発頼みの財界や増税を狙う財務官僚の走狗に過ぎないことを明言しておきたい。
 早晩、この内閣は行き詰まる。



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