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原発の功罪(4)「町長選挙」

~山口県上関町の現実~

2011年9月16日 11:20

 今月20日、山口県上関町で町長選挙が告示される。立候補を予定しているのは2人。中国電力が計画を進めてきた「上関原発」の建設を推進してきた現職と、計画撤回を訴える元町議である。
 選挙の争点が原発であることは間違いないのだが、様々な意味でこれまでの構図とは違った形になることが予想される。
 上関原発については、本格着工をめざして交付金の分配額まで決まっていたのだが、東京電力福島第一原発の事故で事態は急転。政府の方針が明確にされないまま、計画が頓挫するのか進むのかハッキリしない状態となっているのだ。
 原発マネーに頼った町の将来設計を行なってきた原発賛成派、激しい建設阻止運動も辞さなかった反対派。選挙戦では、原発の是非を含めた町の未来像が示されるはずだが、双方の陣営に求められるのは、すでに電源3法交付金の恩恵を受けている同町が、原発抜きで町運営を行なうための具体策の提示である。
 果たしてそれは可能なのだろうか?

上関の現状
 gennpatu 267.jpg福島第一原発の事故後、全国の原発立地自治体や新・増設予定地での混乱が続いている。
 原発の再稼動や新・増設について、菅政権が明確な方針を示さなかったことに加え、「立地自治体」だけに原発の是非を判断させる現行制度への不信が拡がっているからだ。
 野田首相は、再稼動については一定の手続きを経たのち、順次認める考えを明らかにしているが、新・増設についての線引きは明確になっていない。
 とくに上関町では、中国電力が土地造成の工事に着手しており、これを「計画段階」として切って捨てるのかどうか、微妙な状態のままとなっている。
 どの原発計画を中止させるのか、個別の決定が下されないまま、上関町長選が行なわれるというわけだ。

まちづくり連絡協議会
 これまで報じてきたように、上関町内には原電(原発のこと)推進の立て看板が目立つ。これらの看板を設置しているのは「上関町まちづくり連絡協議会」という団体だ。

gennpatu 261.jpggennpatu 231.jpggennpatu 238.jpg

 同団体がネット上で公表している説明を紹介しておきたい。
gennpatu 254.jpg《上関町まちづくり連絡協議会(略称:町連協)は、山口県熊毛郡上関町にあり、原子力発電所立地を契機とした町づくりを目指して活動している住民団体です。
 上関町は、山口県南東部にある、室津半島と長島、祝島、八島などの島からなる町。古来から瀬戸内海の要衝として隆盛を誇り、漁業や造船、海運業を中心として発展してきました。
  しかしながら、これらの主要産業が往時の活気を失って久しく、人口も加速度的に減少するなど、繁栄は過去の歴史となっています。
 平地が少なく、交通の便も良くないという地理的条件もあり、衰退に歯止めがかからなかった我が上関町に、昭和57年、原子力発電所(以下、原電)誘致の話が持ち上がり、上関町民の大多数が原電の立地を起爆剤とした町づくりを決意し、昭和63年に中国電力に対して原電誘致を申し入れました。
 上関町まちづくり連絡協議会(町連協)は、原電誘致の話が持ち上がって以来活動していた2つの住民団体(「町民のための町長をつくる会」と「上関町 の発展を考える会」)が統合し、平成3年に設立されました。具体的な組織(リンクにより別紙へ)としては、上関町内8地区にある原子力立地による町づくりを掲げる推進団体と、同じ趣旨で青壮年代の町民で構成する推進団体の9つの団体が参画した連合体として構成されています》。

協議会内に自民支部 
 gennpatu 370.jpg 町内の立て看板の大半に「上関町まちづくり連絡協議会」と書いてあることから、原発推進運動の中心となっているのが同協議会であることは明らかなのだが、上関町役場のすぐ近くにある同団体の事務所には、別の団体が主たる事務所を置いていることがわかっている。
 山口県選挙管理委員会に提出された「自由民主党上関支部」の政治資金収支報告書には主たる事務所が同協議会内にあることが明記されているのだ。

 同協議会が「住民団体」であることは間違いないが、自由民主党上関支部の代表者は、現職町議である右田勝氏(写真の報告書は平成19年分で、この時期の代表者は片山秀行元町長)で、会計責任者の井上勝美氏は同協議会の事務局長を務めている。
 自民・上関支部と同協議会は一体と見られてもおかしくない事実だ。

 戦後、自民党は早い時期から原発を推進してきた。電源3法交付金による地方懐柔策を編み出した自民党は、各地の原発立地自治体で、建設業者をはじめとする商工団体や電力会社と密接な関係を築いてきており、上関町においてもその構図は同じと見られる。

重い課題
 福島第一原発の事故で、国や電力会社による「日本の原発は安全」という説明が偽りであったことが明らかとなった。
 原発について、国や電力会社の言い分を信じる国民は少ないだろう。

 原子力行政の方向性が定まらぬなか、上関町の今後を決定付ける町長選挙が行なわれる。
 電源3法交付金や中国電力からの税収などに頼った町づくりを描いてきた上関町は、重大な岐路に立たされている。

 原発に頼らざるを得なかったという上関町の判断は間違っていなかったのか。新たな未来に光を見出すことができるのか。
 人口わずか3,500人程度の過疎の町に、突きつけられた課題はあまりに重い。



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