下の記事中の写真は、総理大臣を指名する本会議前、両院議員総会で配られた投票用紙の見本である。
「野田」という苗字の国会議員は全部で4人。自民党の野田聖子、野田毅、民主党の野田佳彦、野田国義といった顔ぶれだが、書き間違いのないよう、民主党所属議員全員に配られたという。
民主党政権になって3人目となる内閣総理大臣は、「どじょう」を自認する野田佳彦氏に決まった。震災復興をはじめ山積する諸問題にどう取り組むか。待ったなしでその手腕が問われる。
小沢グループからも評価の声
8月31日、同党両院議員総会で承認された党役員人事では、小沢一郎氏と近い輿石東参院議員会長を幹事長に据えたほか、国会対策委員長に平野博文・元官房長官を起用。敗れたはずの小沢・鳩山両グループに配慮し、党内融和を図る意思を示した形だ。
小沢グループの議員たちからは、次々と新首相を評価する声が上がる。
「輿石さんを幹事長にしたのは、勇気ある決断だと思う。野田新代表は、(民主党の)救世主になるかもしれない。ともかく、しばらくはごたごたから離れることができる」(小沢グループ)。
「野田首相に来てもらって、勉強会を開こうという話まで出ている。正直、海江田さんでなくて良かった」(同)。
「野田さんは化けるかもしれない。前のふたり(菅・鳩山)と違って、発言で物議をかもすことはなさそうだし、(役員人事を見ても)気配りのできる人のようだ」(鳩山グループ)。
小沢氏へ疑問も
一方、おさまりがつかない人たちもいる。九州選出のある衆院議員は次のように不満を漏らす。
「小沢さんの戦術ミス。鹿野(道彦・農相)さんを担ごうとした小沢グループの議員たちを無理に引き離したのが一番の敗因。彼らが最後まで鹿野陣営に残っていれば、決選投票で20から30を海江田に引っ張ることができた。もっとも、海江田さんを選んだ時点で『負け』だったのかもしれないね。小沢さんの判断に疑問を感じる」。
こうしたグループ内の求心力低下に危機感を持ったのか、小沢氏は「一新会」「北辰会」などのグループ内組織を解散させ一本化。自身が新組織の代表に就任する方針を打ち出したという。
たしかに、代表選3連敗の事実は重い。
遠のいた総選挙
どう見ても選挙の顔とは呼べない輿石東参院議員会長を幹事長に起用したのは、「解散はしない」というメッセージでもあるようだが、こうした空気は自民党にも動揺を与えている。
ベテランの自民党議員は「解散総選挙は遠のいた。選挙区支部の候補者選定も急ぐ必要がなくなった。民主党は、このまま限りなく任期満了まで行くだろうし、野田氏でだめなら表紙を替えて衆参同時選挙を狙うことも考えるだろう。自民党としても戦略の再構築が必要」と語る。
滑り出しとしては上々となりそうな野田民主党だが、歴代内閣のように期待倒れにならないことを祈りたい。