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原発「説明番組」佐賀県関与明らかに

番組自体が「やらせ」

2011年8月 8日 23:55

 九州電力による「やらせメール」を引き起こす原因となった経済産業省の玄海原発「説明番組」にからみ、番組を制作する広告代理店選びの段階から、中立であるはずの佐賀県が関与していたことが明らかとなった。
 さらに、出演者についても、佐賀県側から経済産業省資源エネルギー庁側に「経済界からも」などと注文を付けていたことが判明。
 8日、番組制作を担当した資源エネルギー庁側も、HUNTERの取材に対し番組に対する一連の県の関与について認めた。
 
 番組当日(6月26日)の5日前となる6月21日に、古川康佐賀県知事が九電幹部らに話したとされる内容を記したメモの詳細が明らかとなったため、知事が事前に出演者の氏名を漏らしていたことが表面化。出演者人選の過程で、古川知事の意向が働いた疑いが生じていた。
 番組制作への県の関与が明らかとなったことで、「国主催・制作」という番組の性格は大きく変わり、県の意向で原発再稼動を促す内容に仕立てられた可能性が高くなった。

番組制作会社決定までの過程
 gennpatu 068.jpg主催者である経済産業省による「企画、制作」とされた同番組だが、制作実務を行なったのは、地元紙・佐賀新聞社の関連会社である広告代理店「佐賀広告センター」。
 「説明番組」に関する関連文書について、HUNTERが経済産業省資源エネルギー庁に情報開示請求して入手した文書によれば、同番組は、もともと経済産業省が財界のシンクタンク「公益財団法人 日本生産性本部」に業務委託していた「平成23年度原子力施設立地推進町政事業(原子力意見交換会)」に追加発注する形で進められたが、日本生産性本部は佐賀新聞の子会社である広告代理店「株式会社佐賀広告センター」に制作を再委託した形となっていた。
 この点について、業務を委託された「佐賀広告センター」に取材したところ、取材に応じた担当者は次のように話した。

【受注の経過】
― 番組制作の依頼は、経済産業省資源エネルギー庁から電話、もしくはメールで受けた。依頼の正確な日時は覚えていないが、できるかどうかを検討して、6月20日の午後に「やります」という返事を出した。
【契約】
― 契約の相手先は「日本生産性本部」だが、これは後になってエネ庁側から「契約窓口」として紹介されただけ。番組制作についてのやり取りは、エネ庁側と直接行なった。
 
 エネ庁側も、ここまでの動きに間違いがないことを認めている。
 
 それでは、番組制作会社を「佐賀広告センター」に決めた理由は何か。開示された公文書のなかにその過程を示す文書はなかった。

制作会社、佐賀県が紹介
 その後の取材によって、説明番組の制作会社である「佐賀広告センター」を紹介したのは、エネ庁から一次的に業務委託を受けた「日本生産性本部」ではなく、中立の立場のはずの佐賀県だった可能性が浮上。
 8日、エネ庁も「佐賀広告センター」を紹介したのが『佐賀県くらし環境本部原子力安全対策課』であることを認めた。
 
 エネ庁は、佐賀県から県内を良く知る複数の代理店を紹介されたとしているが、実績、事業規模、地域カバー率などを県から示唆されたとしており、そうなると佐賀県は、事実上「佐賀広告センター」を推薦していたに等しい。同センターは、地場では他社の追随を許さぬ強固な基盤を誇っているからだ。

 「佐賀広告センター」は佐賀新聞系列。県の広報に関する仕事を数多く受注しているほか、古川知事とも関係が深い。
 佐賀県選挙管理委員会から入手した、知事の支援団体『古川康後援会』の政治資金収支報告書によれば、平成19年から同21年にかけて、「佐賀広告センター」に対する次のような支出の記載が確認されている。gennpatu 067.jpg

平成19年5月 「印刷費」790,999円
   同  5月 「マニフェスト作成料」2,323,600円
平成20年9月 「印刷費」283,500円
平成21年7月 「印刷費」315,000円

 
 「佐賀広告センター」にとって、県は重要な顧客だが、県政トップである知事も初当選以来の「お得意様」だったことになる。


不透明な出演者人選過程
 「放送フォーラムin佐賀県『しっかり聞きたい、玄海原発』」は経済産業省主催で、番組の企画、制作、著作も経済産業省となっている。当然、県民代表出演者がどのように選ばれたのか、その過程や人選理由について知っていなければならないはずだが、この点に関して開示された文書はわずかに5枚。どのような基準で県民代表7名やコーディネーターを選んだのか、まったく分からない。(注:文書をクリックして参照。赤いアンダーラインはHUNTER)
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 番組を制作した「佐賀広告センター」は、"人選は、受注した業務の一環であり、佐賀広告センターとして行なった。知り得る限りの人たちをリストアップしたが、声を掛けたのは「人選リスト」(6月22日付け経産省文書)にある人数以上になる"という。
 それでは、知事が6月21日に九電側に漏らした「佐賀商工会議所連合会の島内専務理事」は、誰が推薦したのか。

「経済界」からの出演、県が要請 
 改めてエネ庁の担当に、この間の経緯について確認したところ、前述の「佐賀県くらし環境本部原子力安全対策課」から、事前に、『経済界の人間』を出演させるよう要請されていたという。このため、「佐賀広告センター」に対して、幅広い形の人選を指示したとしている。
 佐賀県側が番組制作会社を推薦し、人選についても関与していたという事実が明らかとなったことで、古川知事のその後の言動に合点がいく。

知事の関与
 人選については、古川知事が九電幹部らと会談した6月21日早朝に、《国主催の県民向け説明会は、ケーブルテレビやインターネットで中継し、県民代表5人程度が質問する形で開 催する予定である。県民5人の構成をどうするかだが、1人は商工会議所の島内専務理事を予定している。反対派も1人入れようと考えたが、反対を標榜する人 たちにもいろいろな考えがあり、複数のグループから代表者を1人選抜することが難しいとのことであったため、残りは県民代表として、普通の参加者を選ぶことになるだろう。(中略)県民の不安は原子力発電所そのものではなく、目に見えない放射線への恐怖に対してである。それに応えるべき保安院はまったく信頼 を失っている状況。そのような不安に応えるために、長崎大学の放射線医学の専門家に同席してもらうことも考えているが、国主催の説明会なのでむずかしいかもしれない》(報道された九電幹部のメモより)と話したとされる。
 事実だとすれば(九電は、メモが「異なるものではない」と発表)、古川知事の出演者人選への関与は疑う余地がない。
 人選についての『指示』は、形の上では次のように流れたことになる。
知事 → 県庁組織→ 資源エネルギー庁 → 佐賀広告センター
 しかし、人選の重要な部分について、事前に知事の思惑が佐賀広告センター側に伝わっていたからこそ、知事が九電側に出演者を漏らし、それが現実のものとなったと考えるのだ自然だ。
 知事や佐賀県庁が、佐賀広告センターと極めて密接な関係にある以上、こうした推測は現実味を帯びる。

番組自体が「やらせ」
 開示された公文書や、取材を通じて確認された事実を時系列で並べると次のようになる。(契約の順序を飛び越えて、番組制作が優先された過程にも注目)
・6月17日:知事が説明会の開催を経済産業省に正式要請。

・  同 日 :日本生産性本部が番組制作受注にともない、委託された業務を追加し契約金額の増額を求める「計画変更申請書」を提出。

・6月21日:古川佐賀県知事が九電幹部らと会談。出演者名を明かす。

・6月22日:佐賀広告センターが「人選リスト」をエネ庁に送付(県民代表は5名)。

・6月23日:エネ庁と日本生産性本部が正式契約。

・ 同 日 :番組開催を正式に発表。

・6月24日:県民代表2名追加。計7名が決定。

・6月26日:番組当日

・ 同 日 :出演者の苗字、職業やコーディネーター、アドバイザーなどを公表。

 玄海原発の「説明番組」は、九電の「やらせメール事件」を招いたが、じつは番組そのものが佐賀県演出による「やらせ番組」だった可能性が高くなった。



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