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九電、変わらぬ無神経体質

原発展示館に汚染食品流通否定の冊子

2011年8月 1日 09:40

 九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に併設されている原発啓発施設「川内原子力発電所展示館」(写真)で、放射性物質に汚染された食品・飲料水・農畜産物について、「出荷制限により市場に流通しません」と断言した冊子が無料配布されていた。
 福島第一原発の事故で拡散した放射性セシウムに汚染した牛肉が全国で流通していたにもかかわらず、無神経にこうした印刷物を配り続けていたことになる。

汚染食品「流通しません」
 gennpatu 62842.jpg今月28日、鹿児島県薩摩川内市の九電・川内原子力発電所の啓発施設「川内原子力発電所展示館」を取材したが、館内で無料配布している印刷物のなかに、電力各社で組織された「電気事業連合会」(電事連)広報部が発行する「原子力発電 四季報」(2011春号№54)が置かれていた。
 今年4月時点でまとめたとされる「福島第一原子力発電所事故の経過と放射線の知識についてお知らせします」と題する特集が掲載されているが、福島第一原発の事故の経過などを記したあと、Q&Aの形で放射能や放射線に関する疑問に答えた項目のなかに《放射性物質を含む食べ物を食べても大丈夫ですか》との質問を設定。答えとして《放射性物質を含む食品・飲料水・農畜産物の飲食を制限する措置を、飲食物摂取制限といいます。その飲食物摂取制限を越えた食品は、出荷制限により市場に流通しません》と断定していた(写真は『原子力発電 四季報』(2011春号№54)の問題のページ。電事連広報にお断りして掲載。赤いアンダーラインはHUNTERで編集)。
 同冊子は、電事連のホームページ上にも定期刊行物のひとつとして掲載されている。
 
九電の無神経gennpatu 62855.jpg 
 冊子が作成された4月時点では、こうした見解が事実誤認とされることはなかったが、少なくとも7月初旬以降、放射性セシウムで汚染された牛肉が多くの都道府県に流通し、国民の食卓に上っていたことは周知のとおりで、鹿児島県も例外ではない。
 何のチェックもせず、現時点では明らかに事実とは違う内容を記した印刷物を配布し続ける九電の体質には改めて批判の声が上がりそうだ。
 さらに、問題のQ&Aの後半部分には《日本では国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告した放射線防護の基準を基に、厳しい制限値を定めているので、制限値の範囲内であれば、放射性物質を含む食品・飲料水を毎日飲食しても健康に影響はありません》と記されているが、放射性物質に関する「制限値」なるものが国の都合でコロコロ変わる現状では、信頼性を欠く記述であることは明らか。これまた原発啓発施設で無料配布する印刷物の内容としては不適切だろう。
 「川内原子力発電所展示館」では、このほかにも「世界は原子力回帰」、「世界に広がる原子力利用」などの特集記事が載った冊子(写真。電気新聞特別号)の配布も続けられており、現実を省みない姿勢にはあきれるばかりだ。

変わらぬ九電の体質gennpatu 62856.jpg
 「やらせメール」や「やらせ動員」に揺れる九電。大手メディアは眞部利應社長の進退問題に集中しているが、同社の浮世離れした社風は、社長が辞めたからといって変わるものではない。
 今年5月には、電力各社らを中心とする電気関連企業などで組織された「社団法人日本電気協会」の新聞部門が発行する「電気新聞」が、福島第一原子力発電所の事故による放射線の影響を「ただちに 健康に害を与えるレベルではありません」などと過小に評価した印刷物を制作・販売、九州電力がこの印刷物を大量に購入し、原発啓発施設などで一般市民に無料提供していたことが判明。配布を中止し、現場から回収する事態となったばかりだ。
 『日本でチェルノブイリのような事故は起こり得ません』と記された印刷物(赤いアンダーラインはHUNTER)は、九電の原発説明パンフレットだが、これも、子供向けのエネルギー啓発施設「九州エネルギー館」(福岡市)や「玄海エネルギーパーク」(佐賀県玄海町)、「川内原子力発電所展示館」などで無料配布が続いていた。

 内容のチェックさえ行なわず、無造作に手前勝手な印刷物を配布する姿勢には、同社の危機感のなさが現れている。九電に求められているのは、会社全体で「自覚」を持つことではないのだろうか。
 



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