政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

鹿児島県オフサイトセンター
代替施設は「保健所」

積み残される原発事故対策

2011年8月 3日 08:10

 原発の事故対策をめぐる報道は、ともすれば耐震性などの安全基準の問題だけに集中しがちである。しかし、いったん原発の事故が起こった場合、重要になるのは迅速に放射性物質の拡散情報をつかみ、住民避難の指示を的確に出すことである。
 福島第一原発の事故では、万が一の場合に備えていたはずの緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」が機能しなかったばかりか、「SPEEDI」の端末が設置された「オフサイトセンター」も役割を果せなかった。
 今年5月、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の事故に対応する「佐賀県オフサイトセンター」(同県唐津市)を取材したが、放射能対策や位置的な課題を抱えたままだった。
 原発事故に対する対応策が不備なまま、原発の再稼動や増設を論じることは間違いではないか。
 改めて、九州電力管内のもうひとつの原発、川内原子力発電所(写真。鹿児島県薩摩川内市)の事故への対策について取材した。

「鹿児島県原子力防災センター」
 gennpatu 007.jpg原子力災害対策特別措置法(原災法)は、原子力災害時に、国、地方自治体などの関係者が参集し、緊急時の情報を共有しながら住民避難などへの適切な対応を導くための拠点となる施設として、原発の存在する都道府県内に「緊急事態応急対策拠点施設」を設置することを定めており、この拠点施設を「オフサイトセンター」と呼ぶ。
 福島第一原発の事故では、原発から5キロの距離にあった大熊町のオフサイトセンター「福島県原子力災害対策センター」が地震発生と同時に電源を喪失、期待された機能を果せなかったため、避難指示などの初動に遅れが生じた可能性も指摘されている。

 鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原子力発電所の事故に対応するオフサイトセンターは、同市内にある「鹿児島県原子力防災センター」である。先月28日、川内原発から11キロの地点にある同センターを訪れた。

代替施設は「保健所」
 gennpatu 006.jpg取材に応じた同センターの所長は、6名の職員のうち5名が経済産業省原子力安全・保安院の「原子力保安検査官」で、うち1名が「原子力防災専門官」を兼任する態勢であることなどを説明してくれたが、佐賀県オフサイトセンター同様、建物に放射性物質の侵入を防ぐための高性能フィルターなどの防護措置は施されていないという。原発や県庁(鹿児島市内)からの距離、防護対策の遅れ、いずれも緊急時の対応に疑問符がつく。
 
 驚いたのは、「鹿児島県原子力防災センター」の代替施設だ。オフサイトセンターの指定にあたっての要件には、《当該オフサイトセンターが使用できない場合に備えて、当該オフサイトセンターから移動が可能な場所に、これに代替することができる施設(必要な交通手段が確保でき、かつ、必要な通信設備を備えた十分な広さを有する施設)を確保》とある。しかし、鹿児島県の場合、センターの代替施設が、近くにある「保健所」(同センター所長)だという。
 
 ちなみに、原子力災害対策特別措置法施行規則が定めたオフサイトセンター指定に関する12項目の要件のうち、前述の代替施設についての規定を除く11項目は次のとおりだが、「保健所」にこうした機能を求めるのは無理がある。

1、当該原子力事業所との距離が、20キロメートル未満であって、当該原子力事業所において行われる原子炉の運転等の特性を勘案したものであること。
2、原子力災害合同対策協議会の構成員その他の関係者が参集するために必要な道路、ヘリポートその他の交通手段が確保できること。
3、テレビ会議システム、電話、ファクシミリ装置その他の通信設備を備えていること。
4、放射線測定設備その他の放射線測定設備、気象及び原子力事業所内の状況に関する情報を収集する設備を備えていること。
5、原子力災害合同対策協議会を設置する場所を含め床面積の合計が800㎡以上であること。
6、当該原子力事業所を担当する原子力防災専門官の事務室を備えていること。
7、当該原子力事業所との距離その他の事情を勘案して原子力災害合同対策協議会の構成員その他の関係者の施設内における被ばく放射線量を低減するため、コンクリート壁の設置、換気設備の設置その他の必要な措置が講じられていること。
8、人体又は作業衣、履物等人体に着用している物の表面の放射性物質による汚染の除去に必要な設備を備えていること。
9、報道の用に供するために必要な広さの区画を敷地内又はその近傍に有していること。
10、当該緊急事態応急対策拠点施設及び設備の維持及び管理に関する責任の範囲が適正かつ明確であること。
11、規定により提出された資料を保管する設備を有していること。

積み残された原発事故対策
 前出の所長に、現状では原発の事故に対応できないのではないかと尋ねてみたところ、福島第一原発の事故を受けて、オフサイトセンターの立地や安全対策の見直しについて議論を行なっていくことになるとしている。
 結論を言えば、現状のままでは鹿児島県原子力防災センターも、佐賀県オフサイトセンター同様、原発事故に対応することはできないということだ。
 
 原発事故への対策を積み残したまま、原発再稼動や増設について論じるのは早計なのである。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲