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鹿児島県選管、「選挙収支」公表でミス
問われるメディアの不作為

2011年7月28日 18:30

 鹿児島県選挙管理委員会が、公職選挙法で義務付けられた「選挙運動費用収支報告書」の公表を怠っていた可能性が浮上した。公表に関する解釈を間違っていたものと見られるが、改めて別の問題も生じる。メディアの不作為である。

県議選「選挙収支」閲覧を拒否
 27日、HUNTERが鹿児島県選挙管理委員会に対し、今年4月に行われた鹿児島県議会議員選挙における「選挙運動費用収支報告書」の閲覧を申し出たところ、県議選の選挙運動費用収支報告書はいまだに精査中で、「要旨」の公表が済まなければ報告書は見せられないとして、事実上閲覧を拒否した。
 しかし、公選法は、選挙管理委員会が同報告書を受理した日から3年間、これを保存しなければならないとしたうえで、《何人も、前項の期間内においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の定めるところにより、報告書の閲覧を請求することができる》と定めており、「受理」した後は閲覧希望に応えなければならない。
 報告書の届出は、選挙の投開票日から15日以内とされ、選管が受理したのちは何人も閲覧が可能となる。県議選から3ヶ月以上が経過している以上、見せないということは許されない。
 鹿児島県選管の解釈は、政治資金規正法に基づく政治団体の「政治資金収支報告書」と公選法に依拠した選挙運動費用収支報告書とを混同したもので、公表までの過程は違う。
 こうした点を指摘し、再確認を求めたところ、退庁時間間際になってやっと閲覧を認めた。県選管は、28日になって「個人的」ミスだったと連絡してきたが、こうした対応が常態化していたとするなら、閲覧希望者から当然の権利を奪ってきたことになる。
 
 じつは、ここでひとつの疑問が生じる。県選管の対応からすると、鹿児島県に本社や支局を置くメディアの記者たちが、今年4月に執行された県議選の収支の実態を確認していない可能性があるということだ。
 閲覧が続いていれば、県選管の職員が間違いをおかすとは思えない。閲覧を申し出たメディアがなかったのではないか?

原発めぐるメディアの不作為
 鹿児島県薩摩川内市には、九州電力川内原子力発電所が存在しており、1号機の再稼動と3号機増設というふたつの課題の行方が注目されている。薩摩川内市をめぐる政治的な背景をさぐるには、地方議員の政治団体や選挙運動におけるカネの動きなどを確認しなければならない。
 玄海原発の立地自治体である佐賀県玄海町の、原発マネーで歪んだ町政の実態も、そうした点を調べたところから明らかになっていったものだ。にもかかわらず、鹿児島の記者たちは、基本的なことさえ確認していなかった可能性がある。

 28日になって対応のミスを認めた県選管に確認したところ、県議選の選挙運動費用収支報告書の閲覧を申し出た件数は、案の定「ゼロ」だという。
 
 川内原発の背景はきちんと報道されてきたのか。改めて疑問を感じる事態だ。



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