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原発めぐる隠蔽体質
情報公開条例に見る「原発立地自治体」の現実

2011年7月19日 10:00

 巨額な電源3法交付金を支給されながら、情報開示に消極的な原発立地自治体の現状が明らかとなった。
 全国の原発立地自治体における「情報公開条例」の内容を確認したところ、大半が情報公開の"請求権者"を限定していることが判明。国や電力会社に加え、原発立地自治体にも隠蔽体質があることを証明した形だ。
 原発の是非を判断するうえで、重要なポジションを占める立地自治体だが、外部からのチェックを阻む姿勢には疑問の声が上がりそうだ。

見えない政策決定過程
 玄海原子力発電所の立地自治体である佐賀県玄海町(岸本英雄町長)には、電源3法交付金によって多くの公共事業がもたらされてきた。
 しかし、同町の発注工事は、町長の実弟が社長を務める岸本組や、町議の次男が社長を務める中山組などの特定企業が独占。原発マネーに踊る同町政治家の実態が明らかになっている。
 同町の問題は、「情報公開」の請求権者を町内在住者や町内の事業所に勤務する者などに限定し、事実上、外部からのチェックに対する門戸を閉じた状態にあることだ。
 これでは、交付金を使った事業や町の政策決定過程といった事案について、詳細な検証に必要な公文書を得ることが困難。公共工事の透明性の確認ができないほか、プルサーマルへの同意、原発再稼動等の政策判断の過程も見えてこない。
 それでは、全国の原発立地自治体の情報開示度はどうなっているのだろう。

外部チェック拒否する立地自治体
 現在、稼動可能な原発は54基、立地自治体は19を数える。全国の原発立地自治体の情報公開条例についてその内容を調べたところ、ふたつの自治体を除いて情報公開の請求権者を当該自治体の住民などに限定していることがわかった。

 例えば、九電・川内原子力発電所を抱える人口10万の都市・薩摩川内市の情報公開条例は「請求権者」について次のように規定している。
《次に掲げるものは,実施機関に対して公文書の開示を請求することができる。
(1) 本市の区域内に住所を有する者
(2) 本市の区域内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体
(3) 本市の区域内に存する事務所又は事業所に勤務する者
(4) 本市の区域内に存する学校に在学する者
(5) 前各号に掲げるもののほか,実施機関が行う事務事業に利害関係を有するもの》
 市外の人間が市政についての詳細なチェックを行なうためには「情報公開請求」が必須となるが、同市の条例では、薩摩川内市内に居住するか、事業所を有していない限り請求することもできないのである。市内に支局がある新聞社などは請求が可能となるが、それ以外のメディアや原発の研究者には請求権がない。
 玄海原発のある佐賀県玄海町の条例も同様の内容だが、同町に支局をもつメディアはなく、外部から詳しい町政の実情を精査することを完全に拒否した状態だ。

 福島第一原発(福島県大熊町と双葉町)を除く全国の16の原発立地自治体で制定されている「情報公開条例」の内容をまとめてみた〔注:原子力発電所の名称、立地自治体、人口、請求権者の規定内容の順〕。

泊発電所           北海道泊村(1,900人)   → 住民等に限定
東通原子力発電所    青森県東通村(7,200人)  → 住民等に限定
女川原子力発電所    宮城県女川町(10,000人) → 住民等に限定
福島第二原子力発電所 福島県富岡町(16,000人) → 住民等に限定
東海第二発電所      茨城県東海村(37,000人) → 住民等に限定
柏崎刈羽原子力発電所  新潟県柏崎市(91,000人) → 制限なし
柏崎刈羽原子力発電所  新潟県刈羽村(4,800人)  → 住民等に限定
浜岡原子力発電所    静岡県御前崎市(34,000人)→ 制限なし
志賀原子力発電所     石川県志賀町(22,000人) → 住民等に限定
敦賀発電所          福井県敦賀市(68,000人) → 住民等に限定
美浜発電所       福井県おおい町(8,600人) → 住民等に限定
高浜発電所        福井県高浜町(11,000人) → 住民等に限定
島根原子力発電所    島根県松江市(193,000人) → 住民等に限定
伊方発電所       愛媛県伊方町(11,000人) → 住民等に限定
玄海原子力発電所    佐賀県玄海町(6,500人) → 住民等に限定
川内原子力発電所    鹿児島県薩摩川内市(100,000人)→ 住民等に限定

 16自治体のうち、薩摩川内市や玄海町を含む14の自治体が、情報公開請求権を市町村内の居住者や事業所勤務者に限定している。
 外部からの開示請求に対し、完全に門戸を開いているのは新潟県柏崎市と静岡県御前崎市だけで、《何人も》公文書の公開の請求をすることができると規定していた。
 ちなみに、大間原子力発電所を建設中の青森県大間町も請求権者を町内在住者や町内の事業所に通勤している者に限定しているほか、原発建設で揺れる山口県上関町には、なんと昨年まで情報公開条例そのものが制定されていなかったことが分かった。

求められる情報開示の姿勢
 原発に関する自治体ごとの政策決定過程や交付金を使った公共事業の実態を知るには、起案書などの公文書が不可欠となる。しかし、情報公開の請求権を当該自治体の住民や事業所勤務者などに限定された場合、外部からそうした公文書を入手することが困難となる。
 これでは原発をめぐる地方の検証に時間がかかるばかりか、玄海町のように検証そのものが不完全なものになりかねない。
 県庁所在地など一定の規模の地方都市には新聞社などの支局があり、一部のメディアによる検証作業も可能となるが、原発のある自治体は総じて小規模なところばかり。外部からのチェックを行なうためには居住者などに協力を求めるしかなくなるが、狭い地域では名前を出すことを躊躇するケースがほとんどだ。

 原発の未来をめぐって一番に意思確認が求められるのが「原発立地自治体」である以上、その意思形成の過程や原発交付金の費消実態を明確に示すのは当然の義務ではないか。
 佐賀県玄海町のケースは、情報開示に制限を加える自治体に、原発の是非を判断させることの愚を教えているのだが・・・。



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