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古川佐賀県知事が九電に逆らえぬ理由 
  マニフェスト重点施策支える九電
  ~玄海原発再稼動の背景~

2011年7月12日 10:40

 玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の再稼動問題で、鍵を握っているのは2人の首長だ。国や九電が勝手に決めた理不尽なルールではあるが、立地自治他である玄海町の町長と佐賀県知事がゴーサインを出せば玄海原発の運転再開が認められてしまう。。
 
 これまで、玄海町政の歪んだ実態を明らかにし、原発マネーにまみれた玄海町の岸本英雄町長に再稼動の是非を判断する資格がないことを報じてきた。
 ファミリー企業岸本組を使った癒着の構造が明るみに出る事態となっており、町長が再稼動劇場からの退場を余儀なくされる可能性は高い。
 
 それでは、一方の古川康佐賀県知事はどうか。 
 古川知事については、知事の父親がかつて九電の社員で、玄海原発の啓発施設「玄海エネルギーパーク」の館長を務めていたことや、九電幹部から政治献金を受けていたことなどが分かっていたが、原発再稼動問題の判断で知事が九電を裏切れない最大の理由は別にある。
 
 知事と九電の特別な関係にたどり着く扉は、知事の公約(マニフェスト)に隠されていた。

抜け落ちた外郭団体分CIMG2000.JPG
 HUNTERは佐賀県に対し、九州電力から佐賀県に対して行なわれてきた「寄附」について情報公開請求していたが、今月5日、平成5年から先月までに5件の寄附があったとして関連文書が開示された。しかし、なぜか一番大きな寄附に関する文書が抜け落ちている。その件こそ、古川康佐賀県知事と九電の抜き差しならぬ関係を示すものだ。
 開示された文書によれば、平成11年に九州電力が佐賀県に寄附した佐賀県総合運動公園陸上競技場(佐賀市)に設置された電光掲示板の設置費用への5億円のほか、平成5年以来、名護屋城博物館のどん帳(1,500万円)や伊万里市内の土地及び護岸(計191,305,995円)、I・Hクッキングヒーター(計1,331,000円)などが寄附されていた。肝心なものは、なぜ出てこないのか・・・。
 HUNTERの開示請求は「九州電力株式会社から佐賀県または県の外郭団体へ「寄附」された金額、目的がわかる文書」となっていたのだが、昨年2月に設立された県の外郭団体「一般財団法人佐賀国際重粒子線がん治療財団」に関するものが何もないのだ。

九電が39億7千万円の寄附 
佐賀国際重粒子線がん治療財団への寄附について 九電は昨年4月、「佐賀国際重粒子線がん治療財団への寄附について」とする発表を行なっているのだが、そこには《佐賀国際重粒子線がん治療財団並びに佐賀県のご要請に基づき、佐賀県が中心となって開設を進めている九州国際重粒子線がん治療ンターの運営主体である、佐賀国際重粒子線がん治療財団へ下記のとおり寄附を申し込みました》とある。寄附金額は複数年度での分割で「39億7千万円」という巨額なものだった。
 この時点で九電側から佐賀県側に寄附の申し込み文書が渡っていることになるが、なぜか今回、県が開示した文書にはなかったということなのだ。

最重点施策「SAGA HIMAT」
 古川知事は、2期目を目指した平成19年の知事選で、「がん治療の先端的施設の誘致」をマニフェストに掲げ、翌平成20年には「九州国際重粒子線がん治療センター事業推進委員会」(委員長・古川知事)を立ち上げていた。事業推進委員には、当事九電社長だった松尾新吾氏(現会長)の名前も入っている。

 重粒子線治療は、がん治療の切り札の一つとして注目される治療法のひとつで、がん組織を重粒子線を使ってピンポイントで破壊するため、これまで治療が難しかった頭頚部や体の深い部分にも有効であるうえ、外科手術と違い痛みがないことや副作用が少ないなどの利点がある。ただし、すべてのがんに有効というわけではない。

古川康マニュフェスト2.JPG 「SAGA HIMAT(サガ ハイマット)」は、平成19年から古川康佐賀県知事がマニフェストに明記した最先端がん治療施設(Heavy Ion Medical Accelerator in Tosu)の建設構想を具現化したものだ。

 今年4月の知事選で古川知事が作成したマニフェストでは「7つの約束」を公表したが、冒頭で原発への強い姿勢を示すとともに、最先端がん治療施設「HIMAT」の整備を明記している。
 2月には九州国際重粒子線がん治療センターの建設工事が始まっており、今回の知事選で争点になる事案ではなかったのだが、わざわざマニフェストの1項目めに入れたところに知事の計画への執念を感じる。
 知事にとって「九州国際重粒子線がん治療センター『SAGA HIMAT』(サガ ハイマット)」は、政治生命がかかる最重点施策なのだ。そして、その構想を支えるのが「九電」ということになる。

寄附の約半分を九電側が負担
 同計画の初期投資額は約150億円で、佐賀県が20億円の補助金を出すほか、民間からの寄附88億5,000万円と出資金などの41億5,000万円でまかなう計画だ。
 「佐賀国際重粒子線がん治療財団」のホームページには「寄付者一覧」として財団へ寄附をした企業や個人が掲載されているが、九電の社名がないかわりに、九電産業株式会社、ニシム電子工業株式会社 株式会社九電オフィスパートナー、西日本技術開発株式会社、九電不動産株式会社、九州通信ネットワーク株式会社、株式会社電気ビルなど、九電の関連企業の社名がズラリと並ぶ(このうち数社は九電「やらせメール」事件でも登場している)。 

 つまり九電からの寄附39億7千万円と同社の関連企業からの寄附は、必要とされる寄付金額の半分近くを占めることになり、同社なしでは知事の最重点施策は成り立たないという仕組みだ。

建物建設も九電が主役 
 同財団が佐賀県鳥栖市に建設する「九州国際重粒子線がん治療センター」は、県と県医師会が設立した「佐賀国際重粒子線がん治療財団」が運営することになっているが、建物の建設・管理は、なんと九州電力が中心となって設立された「九州重粒子線施設管理株式会社」(そのほか九電工、久光製薬、佐賀銀行など出資)が受け持つ(同社の代表取締役社長は山野 宏氏。元建設省OBで福岡市副市長を経て佐賀県参与に就任した人物だ)。ここでも主役は九電なのだ。

プルサーマル同意の見返りgennpatu 62780.jpg
 もともと重粒子線がん治療センターの設立に関しては、福岡市の人工島に建設を目指す計画があった。しかし、同センターが佐賀県鳥栖市に建設される構想が発表された時、「やられた」と感じた福岡県政界の関係者は少なくない。
 九電を軸にした同計画が佐賀県に持ち込まれた背景には、玄海原発3号機のプルサーマルの存在がある。
 古川知事が、市民の反対意見を無視して玄海原発のプルサーマルに同意を与えたのは平成18年。そして、同知事は2選を目指した翌年の選挙で唐突に「がん治療の先端的施設の誘致」をマニフェストに盛り込む。
 九電から古川知事への「プルサーマル同意の見返り」と見られてもおかしくない展開だったのだ。
 
 古川知事の重点施策「SAGA HIMAT(サガ ハイマット)」計画が、九電抜きには進まないという実態を述べてきたが、これは癒着ではないのか。
 プルサーマル同意、玄海原発再稼動、いずれも知事は九電側の意向に沿う姿勢を崩したことがない。
 九電との間のクラブ接待や飲食の有無の確認取材さえ拒否する知事に、原発再稼動の判断をする資格があるとは思えない。



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