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玄海町長株売却 問われる「賄賂性」

2011年7月14日 09:15

 今月7日、佐賀県玄海町の岸本英雄町長をめぐる原発マネー還流システムについて報じた。
 HUNTERがとくに問題視するのは、岸本町長と町長のファミリー企業で実弟が社長を務める地場ゼネコン「岸本組」の、同社株を使った現金のやりとりだ。
 玄海町の不透明な入札の実態と合わせて考えると、ファミリー企業とはいえ、未公開の株を自己都合で買い取らせる手法には疑問が生じる。
 一連のカネの流れに賄賂性はないのだろうか。

株売却の背景
 玄海町に流れ込む原発交付金がもたらす公共工事は、岸本町長のファミリー企業で実弟が社長を務める地場ゼネコン「岸本組」が毎年約15%前後を受注している。もう一度確認すると、玄海町の資料で確認できただけでも次のような状況だった。(注:金額は税抜き)
【平成21年度】
町発注工事128件→岸本組受注件数19件(計5億6,576万円)14.8%
【平成22年度】
町発注工事 99件→岸本組受注件数15件(計5億5,493万7,239円)15%
【平成23年度】
町発注工事 17件→岸本組受注件数3件(計6,055万円)17%

 次に岸本町長は、保有する「岸本組」の株を平成21年に600株、22年に300株売却しているが、買い取ったのが「岸本組」で合計800万円を超えることがわかっている。

 玄海町の公共事業は、その大半が「指名競争入札」によって落札業者を決めている。平成21年度から23年度にかけて岸本組が受注した工事の落札率は平均して約93%ほどだが、数百万円規模の工事で80%代の落札率が数件あることが数字を下げているに過ぎない。
 
 600株の株を岸本組に引き取らせた平成21年度は、落札率95%以上の工事が4件、あとは94.8、94.7、94.5、94.3、93.3などという微妙な数字が目立つ。
 一般的に落札率95%以上の入札結果は、談合など競争入札妨害につながる可能性があるとされるが、玄海町の入札については、入札結果を示す公文書が作成されていないなどの不備が多く、実態解明を阻んでいる。
 
 さらに町民以外に情報公開の請求権を認めておらず、工事ごとの関連文書を外部からチェックすることができないため、入札が公正に行なわれたかどうかさえ分からないのだ。
 
 入札は適正に行なわれたのか?町長が入札予定価格を岸本組に教えるようなことがなかったのか?玄海町では、そうした疑問に答える公文書が満足に入手できない状況が続いている。

賄賂性の検証 
 不透明な公共事業の裏で株のやりとりが行なわれ、現金が動いたという事実に疑問が生じるのは当然だろう。しかも、資産公開の資料には株の「譲渡所得」であることを認識しながら「配当所得」としていたことも明らかとなっている。意図的に「配当」としていた可能性も否定できない。
 
 見落せないのは、岸本組が上場しておらず、動いているのが「未公開株」であるという点だ。
 原発マネーで潤ってきた岸本組の純資産は40億円超。そのうち約24億円は現金だ。資本金3,000万円の会社としては破格の資産と言える。 
 発行済み株式は60,000株で1株500円であることが分かるが、同社の資産から算出される1株の価値は70,000円ということになる。
 しかし、120億円を超えていたかつての同社の売り上げは、3分の1の40億円程度になっており、岸本町長自身も、先月30日のHUNTERの取材に対して、「県議時代は、ずいぶん配当をもらったですがね」と話したあと、岸本組の業績について「今は(業績が)そんなによくないから」と語っている。

 未公開で、しかも業績が「よくない」企業の株が容易に売れるはずはない。当然、岸本組か岸本一族に買ってもらうしかなかったと思われる。
 町長は、「たしか、そうだったような・・・。会社に引き取らせたか・・・」と話しており、自ら会社に株の引取りを命じたことを示唆している。
 
 業績が低迷していた平成21年度、岸本組は岸本町長が公約としてきた「薬草栽培研究所」の敷地造成や管理棟建設など5件・2億4,870万円(税抜き)の工事を受注しているほか、翌22年度には関連の「甘草ハウス温室等建設工事」を1億6,250万円(同)で落札している。
 つまり、玄海町発注工事に頼るゼネコンに、町長でありながら株の買い取りを要求したことになる。 
 
 1株の価値より低い金額での株売買ではあるが、町長が必要な時に必要な額を売って現金を手にしたことは事実だ。賄賂性の有無が検討されるべきだが、「やましいことはない」とする町長側が反論するためには、「情報公開」を徹底し、政治倫理条例を制定しなければならない。
 ただし、そうなれば岸本町長が職を辞すか、岸本組が玄海町発注工事から撤退するという選択肢しかなくなることは言うまでもない。
   
 ところで、同町の政治倫理条例をめぐる岸本町長の発言について、述べておくべきことがある。

町長の「嘘」
 10日、西日本新聞朝刊は岸本町長と岸本組の関係について1面トップと社会面を使って詳報したが、記事が事実なら、岸本町長の発言が信用できないことを指摘しておきたい。

 同紙の社会面の記事では、同紙記者が岸本町長に取材した今月6日、玄海町に政治倫理条例が制定されていないことについて町長は「あるものだと思い込んでいた」と語ったとある。しかし、これは「嘘」である。

 HUNTERが岸本町長を直撃した先月30日、岸本組が玄海町発注工事を受注できるのは、政治倫理条例がないためで、同条例を制定する意思はないかと質した。
 この時岸本町長は、「(条例が)ないもんね。考えないといけないでしょうね」と明言している。政治倫理条例についてのやりとりだけで3分以上かかっており、町長が同条例の不備を十分すぎるほど認識していたことは明白なのだ。
 6日後の「あるものだと思い込んでいた」との町長の話は、その場しのぎの「嘘」だったことになる。

原発判断の資格
 自宅土地に関する脱税、そして株売却で疑われる賄賂性。いずれも疑惑の段階だが、町長には説明責任を果そうとする姿勢が見えない。
 町政チェックを怠ったばかりか、町長選挙で車上運動員として町長側から現金を受け取っていた町議らにも、大きな責任があることをつけ加えておきたい。

 何度も述べてきたが、岸本玄海町長や町議会に、原発の未来を決するような判断を委ねてはいけないのだ。



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