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玄海原発「再稼動」への警鐘

2011年6月30日 10:10

 玄海原発の再稼動をめぐる動きが最終局面に向かっている。根拠のない「安全」を振り回す国の姿勢にはあきれるばかりだが、茶番に付き合ってばかりはいられない。
 検証すべきは、玄海町や佐賀県に、原発の是非を判断する資格があるのか、という一点だ。

原発マネー
 玄海原子力発電所を抱える佐賀県玄海町が年間に発注する公共事業は、年に100~130件に達する。財源の多くは「電源立地地域対策交付金」や「核燃料サイクル補助金」など、原発立地自治体への「あめ」であることは言うまでもない。
 
電源立地地域対策交付金等で整備した主な公共施設 町民会館、体育館、産業会館、公園、野球場、温泉施設、下水道、道路・・・。人口6500人程度の町に、身の丈に合わぬ公共事業が溢れているが、人口は年々減る一方だ。
 原発を容認しなければ「佐賀県一の貧乏地域」(同町住民の話)に逆戻りするという現実が、同町住民の本音を押しつぶす。
 「お父さんも息子も原発関係で働いとるもん・・・。心配といえばそりゃあ・・・」(同町の主婦)。
玄海町住民暮らし向きをながめ、話を聞くが、特別に「豊かさ」を感じることはない。
 
 それでは、原発マネーはどこへ流れ、誰が一番得をしているのか。玄海町を訪れるたびに感じるのは不正のにおいだが、そうした疑惑の先には町政トップで玄海原発再稼動の鍵を握る岸本英雄町長の存在がある。

玄海町の隠蔽体質
 同町への取材を通じてわかったことは、入札に関する公文書が満足に用意されておらず、閲覧を申し出ても公共事業の実態が把握できないことだ。
玄海町役場 例えば、入札結果の一覧は平成22年度以降の分しか存在せず、それ以前のものは閲覧さえできない。ほかの自治体では考えられない杜撰さだ。
 さらに案件ごとの入札状況、つまり入札参加業者と応札価格などを示す文書も準備されておらず、国が定める指針などお構いなしの状態。
 同町が町外からの情報公開請求を受け付けないことも、同様の理由であると思われるが、原発の町の隠蔽体質は病的でさえある。
 玄海原発の運転再開にあたり、玄海町の意向が最優先されることの愚かしさを報じるメディアは皆無だが、同町や岸本英雄町長に原発の是非を論じる資格がないことは報じてきたとおりだ。

古川知事の計算
佐賀県庁 29日、海江田経済産業大臣が玄海町と佐賀県を訪れ、岸本町長と古川康知事に原発再稼動を要請したが、単なるセレモニーに過ぎない。
 早い時期から運転再開を認める発言を繰り返してきた岸本町長、最終的には「容認」と言い出すはずの知事。どちらも「同じ穴の・・・」なのだ。

 海江田氏と会談した直後の会見で、突如「安全性の問題はクリアした」と明言した古川知事だが、原発の「安全」を約束できる機関や人間など、世界中を探しても見つからないはずだ。
 福島第一原発の事故に関する詳細な説明もできないうえ、総辞職が確実となった内閣の一員に過ぎない海江田氏が、「安全性は国が責任を持つ」と大見得を切ったが、これほど無責任な話はない。しょせん"原子力村"を代表して知事のパフォーマンスの助演をやっているだけなのだ。
 海江田氏や知事が言う「ホショウ」とは、つまり「保障」ではなく「保証」と書くのだろうが、放射能被害を受けてからカネをもらっても、何の意味も持たない。

 それでも古川知事が海江田氏との会談後に、玄海原発再稼動に向けて前向きな姿勢を示し始めたのは、したたかな知事の計算通りに事が運んだからにほかならない。
〈玄海町が認めた。国が保証した。県議会も認めた。県民への説明会も行なった。だから運転再開を容認します〉。古川知事はそう動くはずだ。計算された茶番劇に騙されてはいけない。

求められる国民の議論
 この国は、放射能が人や地域の未来を奪うことの現実を身をもって経験している。広島、長崎、そして福島と3度も、だ。
 海江田程度の政治家が「国が責任を持つ」などと言っても、信じる国民はわずかだろう。
 玄海町や佐賀県だけに地域社会の未来を委ねることは間違いである。それを証明する材料は、まだまだ在る。
 原発の是非は広範な国民の議論を経て決するべきなのだ。



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