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「原発」の是非、決めるのは?

2011年6月22日 10:30

 東京電力福島第一原子力発電所の事故が収束の気配さえ見せぬなか、全国で運転休止中の原発で「再稼動」の是非が問われている。
 注目される九電の玄海原発(佐賀県玄海町)をはじめ、いずれも立地自治体と県に判断を委ねた形となっているが、これは間違いではないだろうか。

 福島の現実は、原発事故の影響が立地自治体だけでなく広範囲に及ぶことを示している。いったん原子炉が暴走し始めると、"迷惑料"と揶揄されてきた電源三法による交付金で潤ってきた地域以外でも、甚大な被害を受けることは明らかだ。
 原発から20キロ以上離れた場所でも安全ではないということを、福島第一原発の事故が実証しているうえ、これまで10キロ圏内とされてきたEPZ(防災対策重点地域)の見直しは確実なものとなっている。
 福島から数百キロ離れた静岡県で、茶葉から放射性物質が検出された事実も見逃せない。
 国民ひとり一人に、原発とどう向き合うかが問われているのだが、国は判断を下せるだけの材料を提示していない。

原子力行政の複雑さ
 なにより、問題なのは日本の原子力行政の分かりにくさだ。政府内には原子力を所管するいくつもの組織が存在し、一元化されていない。
 内閣府には「原子力委員会」及び「原子力安全委員会」、経済産業省の「原子力安全・保安院原子力安全・保安院」、そして文部科学省(旧・科学技術庁)といくつもの省庁が原子力行政におけるそれぞれの役割を担っている。国民から見ると、なぜ政府機関がバラバラに会見を開いているのかまるで分からない。
 
 例えば、内閣府には"原子力基本法"や"原子力委員会及び原子力安全委員会設置法"に基づき、「原子力委員会」と「原子力安全委員会」が設置されており、前者は、原子力政策に関し《安全の確保に関する事項》以外を取り扱う。
 一方、後者の「原子力安全委員会」は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、《安全の確保に関する事項》についてのみを所掌する。
 福島第一原発の事故に関して「原子力安全委員会」が前面に出ているのは《安全の確保に関する事項》にあたるためだ。
 経済産業省原子力安全・保安院は、原子力における事務取り扱い機関で、原発の安全性や方針について、審議をしたり決定を下す権限などない。
 省庁合併で旧・科学技術庁を吸収した文部科学省は、主として放射性物質のモニタリングを所管している。

原子力村
 原子力に関する政府内の行政区分を理解するだけでも大変なのに、政府組織以外に、いくつもの原子力関係団体の名称が登場し、話をややこしくする。

 東京電力・福島第一原子力発電所の事故発生以来、登場した原子力関連機関だけでも覚えきれないほどだ。ざっと挙げても次のような組織が存在する。
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
独立行政法人 原子力安全基盤機構
財団法人 高度情報科学技術研究機構
財団法人 原子力安全技術センター
財団法人 原子力弘済会
財団法人 エネルギー総合工学研究所
財団法人 日本原子力文化振興財団 
財団法人 原子力研究バックエンド推進センター
財団法人 核物質管理センター
公益財団法人 原子力安全研究協会 
公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター
一般財団法人 原子力国際協力センター
一般社団法人 日本原子力技術協会
社団法人 日本原子力産業協会
社団法人 原子燃料政策研究会

 原発関連だけでもこれだけの団体が乱立しており、その大半には当然のようにあまたの「天下り」が行なわれている。
 産・学・官による原発推進態勢は、「国策」による豊富な予算に支えられて構築されてきたものだが、そこに膨大な「役人利権」も生じさせているということだ。
 もちろん、これらの団体のほかにも電力各社や原子炉メーカー、ゼネコンといった企業の存在がある。「原子力村」の裾野は広い。

広範な意見の集約を
 こうした実態や、福島第一原発の詳細な事故データを隠したまま、「原発は安全」と言い切る経済産業省や政治家は、無責任というほかない。
 求められているのはあらゆる点での情報開示であり、10年、20年先を見据えたエネルギー政策のビジョンなのだが、必要なことを何も示さないまま、休止中原発の運転再開の是非だけが問われる事態は危険だ。

 いったん原発に事故が起きれば、自治体や電力会社だけですべての責任を負うことは不可能となる。福島以外の原発の安全性に「絶対」はあり得ず、万が一の時に「あの時、運転再開に同意したのは誰だ」ということになっても遅いのだ。
 運転再開を急ぐあまり、原発の是非を立地自治体と県だけに押し付けた形の現状は、議論を矮小化させる危険性が大きい。

 電力供給のおよそ3割をまかなってきたのが原発であるという事実を踏まえたうえで、一時的な電力不足と向き合う覚悟はあるか。目前の生活の豊かさと将来の安全のどちらを選ぶのか。
 投げかけられた課題はあまりに重いが、原発を抱える自治体だけでなく、広範な意見を集約すべき問題となっていることを忘れてはならない。
 
 あなたは、原発で潤い、原発に生活を支えられる地域に、自分や子ども達の未来を決めさせますか?

 



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