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福島第一原発の情報開示「6か月延長」の現実

2011年6月 9日 11:00

 経済産業省原子力安全・保安院の情報公開請求への対応が、原発をめぐる政府の姿勢を如実に物語っていた。

情報公開期限の「6か月」延長
 8日、保安院に対する公文書の情報公開請求に対する開示期限延長の通知が届いた。
 先月6日に請求したのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する今年3月11日以降の東電から保安院への報告や放射性物質に関するデータ。
 文書量が膨大になるため、同月末日までのものに特定していたが、開示決定期限の6日までに保安院が下したのは「6か月」の公開期限延長。
開示決定等の期限の特例延長について(通知) 規定により一部を来月5日までに開示するとしているが、「6か月」という期限延長は、事実上の開示拒否に等しい。
 国民が求めているのは、3月11日以降に福島第一原発で何があったのか、放射性物質はどの程度放出されたのか、についての「真実」のはずだが・・・。

運転再開への懸念
 原発の安全神話が崩壊したいま、国のエネルギー政策を見なおすのは当然の成り行きだろうが、急務となっているのは定期点検のため運転を休止している原子炉の運転を再開するかどうかの判断である。
 とくに、九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の2号機、3号機の運転再開に関しては、九電や保安院側の「安全」とする根拠が揺らいでおり、今後が注目される。
 問題は、九電や国の言い分が信用できるのか、と言う一点だ。

情報不足が招く混乱
 「日本の原発は安全」が真っ赤な嘘だったことは明らかで、その事実をもってしても電力会社と国の判断には信用が置けない。
 そのうえ福島第一原発の事故の詳細が公表されず、報道によって新たな事実が次々と明かされるという現状では、信用しろと言う方が無理なのだ。
 重要なのは、国による正確かつ早急な情報の開示で、これがないばかりに原発をめぐる混乱が続いている。

 一例に玄海原発の運転再開問題がある。
 九電は、原発の耐震性について独自のシミュレーションを公表したが、保安院側がこれを正式に認めることはない。
 原発の耐震性は、国が「耐震設計審査指針」を改訂し、これに沿った形で電力各社が実施する「耐震安全性評価」が認められなければOKとはならないからだ。
 
 原発ごとの「基準地震動」をどこまで引き上げるかは、この耐震安全性評価のなかで決められるが、一連の作業には、福島第一原発の事故に関する知見データが必要で、いまだデータが揃っていないという現状では、耐震性に「安全」のお墨付きを出すことはできないはず。国がこれまでやってきたことを否定できるはずがない。
 事実、先月19日の取材に応えた経済産業省原子力安全・保安院は、「基準地震動」について、「今後、原子力安全委員会などと協議する中で検討することになる」として見直しの必要性に言及。新たな耐震基準作りへの動きを認めていた。
 しかし、保安院側は耐震基準の見直し作業を無視して「玄海は安全」だと明言、矛盾する原子力行政の現実を露呈した形だ。
 福島で起きた事故の正確な情報は隠したままで、安全を宣言する姿勢は、国民を欺いてきたこれまでと何も変わっていない。
  
 玄海原発の運転再開に向けて必要なのは、福島第一原発の事故についての真相と、放出された放射性物質に関する詳細なデータの公表なのだ。
 そうした意味で、わずか2週間分の公文書の開示を半年も延ばすという保安院の姿勢には不信感が増すばかりだ。

 玄海原発の立地自治体である佐賀県玄海町の町長は運転再開を容認する方向だが、福島の事例が示すように、原発の被害を受けるのは立地自治体だけではない。
 ひとりの首長とたった12人の町議に、原発の今後を委ねてしまうかのような現状は間違っているのではないだろうか。 
 少なくとも、福島第一の事故に関するすべての情報が開示されるまで、運転再開を認めることは避けるべきだ。
 
 



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