全体の予算規模が縮小されるなか、天下り法人への業務委託費だけが大幅に伸びていた福岡市の実態が明らかとなった。
同市の当初予算(一般会計、企業会計、特別会計)は、緊縮財政を反映して平成21年度、同22年度と減り続け、2年間で約860億円減少したが、天下り法人への業務委託費は20年度から22年度にかけて約47億円も増加していた。
HUNTERが外郭団体への業務委託契約について福岡市に情報公開請求し、入手した資料から算出した。
年間200億円超、ふくらむ業務委託
福岡市の外郭団体は、地方独立行政法人である「福岡市立病院機構」を含めて36団体あるが、そのうち29団体の役員に市OBが天下っている。天下り総数は39人だ。
福岡市では、平成14年から、第一次、第2次と「外郭団体改革実行計画」を策定し、外郭団体の整理統合を含めた改革案が進められてきたが、業務委託費は年々増加していた。
福岡市が平成20年度から同22年度までに行なった天下り法人への業務委託を、年度ごとに集計すると次のようになる。
平成20年度 67件 185億8,086万2,152円
平成21年度 73件 200億2,120万5,459円
平成22年度 65件 232億6,334万7,768円
これに対し、市の当初予算は次のように推移した。
平成20年度 1兆9,112億6,285万円
平成21年度 1兆8,535億8,200万円
平成22年度 1兆8,253億3,400万円
市の一般会計予算は毎年度増加していたが、これは義務的経費が増えたということ。借金減らしを優先させ投資的経費を抑えたことから、特別会計や企業会計を含めた予算全体の規模はしぼむ結果となっていた。
財政再建を喫緊の課題とした吉田宏前市長時代、福岡市全体の予算規模を減らす一方で、天下り法人への業務委託費は増加させていたということになる。
踏み込んだ議論を
天下り法人への業務委託は、学校給食や水道、ごみ処理、公園管理などの事業から、政策決定の基礎となる調査・研究業務などにまで多岐にわたる。しかし、すべてが「特命随意契約」で、競争原理がまったく働かない状態での契約が続いている。不透明感はぬぐえない。
業務委託のなかには、その必要性を疑いたくなるようなものも含まれており、天下り先の確保に汲々とする役所の体質は何も変わっていない。
外郭団体を使った事業展開には一定の効果が見込める一方、各団体の経営内容が見えにくいという欠点が存在するのは事実である。
民間企業への再委託を行なう事業では、「差額」が生じることで税金のムダにつながる可能性も指摘されており、外郭団体の必要性や契約方法については、さらに踏み込んだ議論が必要だ。