今年4月、福岡県のOBが天下っている外郭団体「財団法人福岡県地域福祉財団」に、県が業務委託した"婚活"関連事業で、予定金額が事前に漏れていた疑いが浮上した。
地方公務員法(守秘義務)違反に問われかねない事態となったが、天下り法人への便宜供与はこれ以外にもあると見られる。
県が1年間に発注する「業務委託」は、膨大な件数、金額になるが、とりわけ問題があると指摘されてきたのが"婚活"事業と同じような天下り法人への業務委託だ。
県の天下り法人に対する業務委託の実態を検証した。
外郭団体の実態
平成22年4月の時点で、県が出資している「公社等外郭団体」は29団体で、内訳は次のとおりだ。
公益財団法人 1団体
特例民法法人 21団体
特別法に基づく法人 4団体
社会福祉法人 1団体
株式会社 2団体
合計 29団体
(上記29団体に対する県の出資金合計は1,466億7,239万1,000円)
22団体には下水道公社に41人、県建設技術情報センターに32人など県職員が計248人出向している。
県OBの天下りは、21団体に38人といった状況だ。
天下り法人へ年間100億円
HUNTERが福岡県に情報公開請求して入手した天下り法人への業務委託は、100万円以上の契約だけで、次のようになる。
平成21年度 → 24件・97億7, 341万3,539円
平成22年度 → 32件・101億9,897万4,999円
それぞれの年には、県下水道公社への70億円を越える維持管理費があるものの、契約の大半が「特命随契」。競争原理が働かないなかでの公金支出なのだ。
県への情報公開請求に対しても、天下り法人側が提出した積算見積もりを黒塗りにして非開示扱いするため、適正な金額で業務を行なっているのかどうかの判断さえ下せない。不正はないのか?
そうした懸念が顕在化したのが、冒頭にも述べた4月の"婚活"事業における疑惑だった。
不正が疑われる天下り法人への業務委託は、「税金のムダ遣い」につながっている可能性も高い。
そうした一例として「財団法人 福岡県建設技術情報センター」がある。
福岡県建設技術情報センター
「福岡県建設技術情報センター」は、福岡県が基本財産(資本)2億円の80%を出資する財団法人である。常勤職員37名のうち県からの出向がなんと32名を占める。
財団理事長と専務理事には県幹部OBが就任しており、2名の天下り役人が財団を統括しているということだが、事務局長役の総務課長には出向した県職員を充てている。事実上、県の出先機関なのだ。
同財団は、建設材料の試験や建設業従事者を対象とした研修のほか、県や県内の各自治体からの設計積算、耐震診断などの業務委託を受けているが、その運営実態は極めて不透明だ。
民間との再委託内容を非開示
同センターが県や市町村から委託された業務のなかには、民間企業に"再委託"されるものが多い。しかし、同センターへの情報公開請求で入手した同センターと民間業者による再委託の契約書は、右の掲載文書のように業務名や契約相手が黒塗りされている。
再委託契約の内容を隠すことで、自治体から委託された業務とが結びつかないようにしているのだ。つまり、自治体から受け取る契約金と民間企業に支払う金額の「差額」がわからないようにしているということ。姑息としか言いようがない。
再委託金額が自治体からの委託金額より安くなるのは当然で、センターの利益が大きいほど税金のムダが増大してしまう。自治体が直接、民間企業と契約した方が安上がりなのだ。
同センターに対しては、民間企業側からの批判や、業務実態を疑問視する声が少なくない。
天下り法人への業務委託については、早急な見直しが求められている。