税金ムダ遣いの実態がまたひとつ明らかとなった。
先月28日、文部科学省が所管し、同省の天下り法人「財団法人 原子力安全技術センター」が運用している放射能拡散予測システム「SPEEDI」に関し、同省が平成21年度に約5億円、22年度には約8億円をかけて「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム調査」とういう業務委託を行なっていたことを報じた。
同システム構築には120億円以上の税金が投入されてきたが、そのうえさらに「業務委託」という形で別の仕事を作り、天下り法人への便宜供与をつづけている状況だ。
今回明らかになったのは、同システムの維持費にあたるもの。文科省が原子力安全技術センターと交わした前述の業務委託契約「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム調査」の仕様書添付文書に、「SPEEDI」で使用しているシステムや機器などの一覧と、それぞれの月間契約額が明記されていた。一連の文書は、先月、文部科学省への情報公開請求で入手した。
システム維持だけで年間2億
「SPEEDI」システムで使用する個別契約の内容は "制御システム賃貸借料"や"SPEEDI操作室 室借料"、"地図データベース使用許諾料"など45項目。すべての契約金額を合算すると毎月約1,700万円 が支払われていることになり、年間費用は2億円にのぼる。同システムを所管する文科省原子力安全課防災環境対策室は、「毎年同じような内容で、金額もあまり変わっていない」としている。
これまで報じてきた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム調査」と合わせ、平成22年度に「SPEEDI」システムに投じた公金の総額は約10億円ということになる。
税金のムダ遣い、責任は?
「SPEEDI」システムをめぐっては、震災によって東京電力福島第一原子力発電所内の機器が破損。放出源データが得られず放射性物質の拡散予測ができない状態となり、緊急時の住民避難に役立てるという目的を果たせなかったことが明らかとなっている。
ばく大なシステム構築費、億単位の維持費、さらなる巨額な「業務委託」。すべてが「ムダ」になったことへの責任は誰が取るのだろう。
文科省が天下り法人との間で契約してきた数々の「業務委託」には、原発事故に備えて整備されながら動かせなかった防災モニタリングロボット"モニロボ"やモニタリング無人ヘリ計画に関する「緊急時モニタリング技術調査」、機能不全となった緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)の点検業務「オフサイトセンター等に係る保守運用支援業務」(契約金額:約1,800万円)などが含まれていた。
これら全て、今回の福島第一原発の事故では役に立たなかったことになるが・・・。