藤田陽三・筑紫野市長の「選挙運動費用収支報告書」によって明らかとなった杜撰な選挙資金処理と"事前運動"への疑いを追うなか、同市長のこれまでの"政治資金処理"から政治資金規正法が抱える問題点が浮かび上がってきた。
藤田筑紫野市長は、県議会議員5期を務め議長にまで登りつめた県政界の重鎮で、市長への転身を決める直前まで自民党県連の会長だった。
その藤田市長の関連政治団体は、資金管理団体である「藤陽会」、「藤田陽三後援会」、「自由民主党筑紫野市支部」そして「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」である。このうち藤田市長が代表を務めていたのは「藤陽会」、「自由民主党筑紫野市支部」、「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」の3団体だ。
注目したのは「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」で、この自民支部の収支を見ていくと、政党支部の問題点があらわとなる。
経常経費はすべてゼロ
同支部が福岡県選挙管理委員会に提出した平成21年分の「政治資金収支報告書」によれば、収入総額7,019,591円(うち前年からの繰越319,078円)に対し、総支出は6,414,000円。(参照文書1)
しかし、"支出の総括表"には、経常経費が1円も記載されておらず、ズラリと「0」が並ぶ。支出は「寄附・交付金」の641万4,000円だけだ。(参照文書2)
平成20年分の同支部の収支報告も同様で、経常経費がゼロであるのに対し、「寄附・交付金」だけが557万円支出されていた。
つまり、この政党支部の政治活動には経常経費がかかっておらず、「寄附・交付金」だけを支出する役割を担う団体ということになる。
具体的活動なし
さらに「政治活動費の内訳」のページで「寄附・交付金」の内容を確認すると、支出先は限られており藤田市長の後援組織である「藤陽会」と「藤田陽三後援会」だけだ。
平成21年には、641万4,000円のうち1,230,000円が「藤陽会」、5,184,000円が「藤田陽三後援会」に"寄附"されていた。
「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」は、藤田市長の二つの後援団体(「藤陽会」、「藤田陽三後援会」)への"政治資金分配"だけがその役割で、具体的な活動実態がない団体ということになる。
迂回献金
問題は、こうした手法が《迂回献金》に直結するということだ。
平成21年の同支部の収入は、前年からの繰越金を除くと6,700,513円で、"企業献金"は4,050,000円となっている。
政治資金規正法は、政党及び政治資金団体以外の政治団体に対する企業献金を禁止しており、藤田市長の後援団体「藤陽会」と「藤田陽三後援会」は企業献金を受け取ることができない。しかし今回のケースのように、いったん政党支部を使って集めたカネなら、政党支部から政党以外の政治団体に寄附することが自由となってしまう。事実上、政治家の後援団体に対する企業献金がまかり通る形だ。
これまで度々報じてきたのだが、同一地域に同一の代表者を据えながら、異なる性格をもった自民支部が並立している。
3月に報じた柳川市のケースはその典型で、同市には「自由民主党柳川支部」と「自由民主党福岡県柳川第一支部」があり、ふたつの支部の代表者は江口吉男前県議(4月10日の県議選で落選)だった 。
「柳川支部」が選挙区支部からの軍資金を受け取るための支部で、「福岡県柳川第一支部」は江口前県議自身の企業献金の受け皿となっていたのだ。
「自由民主党」のあとに市や郡などの名称がつづくものが地域を包括する支部であり、国政選挙対策を担うのに対し、「自由民主党」のあとに「福岡県」がつづき、さらに「○○第△支部」となれば地方議員の集金装置と見てよい。
筑紫野市の場合は、「自由民主党筑紫野市支部」と「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」が、それぞれ前述の役割を果していると見られる。
「自由民主党福岡県筑紫野市第一支部」は藤田市長の企業献金の受け皿団体となっていたのである。
ただ、柳川市のケースと異なるのは、支部で集めたカネをまるごと後援団体に寄附してしまう手口で、"迂回献金"としか見られない実態にあることだ。
藤田市長の政治資金処理について、さらに検証を続けてみたい。