藤田陽三・筑紫野市長が初当選した今年1月の筑紫野市長選挙で、市長陣営が「事前運動」を行なっていた疑いを示す新たな証拠文書の存在が明らかとなった。
先月26日、藤田陽三市長の陣営に、公職選挙法に抵触する「事前運動」を行っていた疑いがあることを報じた。
藤田市長陣営が市選挙管理委員会に提出した「選挙運動費用収支報告書」によれば、同陣営は今年1月に4回、「演説会場」使用のための支出をしていた。
取材の結果、そのすべてが市長選挙の告示日である1月23日以前の会場使用だったことがわかり、「事前運動」だった可能性が浮上。
さらに、陣営の出納責任者も「選挙だから、個人演説会だった」として演説会そのものの開催について認めていた。
こうした事実を裏づける文書として、演説会場となった「二日市コミュニティセンター」への藤田陣営側の"申し込み用紙"を筑紫野市に情報公開請求したが、同市は、対象文書を含む過去2年10ヶ月分の公文書を、先月5日に「誤って」廃棄処分にしたと弁明していた。
やはり「個人演説会」だった
しかし、残された「二日市コミュニティセンター」の各室の利用状況を記した「学習室使用一覧」には、演説会が行なわれた今年1月10日、「研修室1」「研修室2」において《藤田陽三個人演説会 14~18》と明記してあったことが新たにわかった。
《14~18》の数字は、前記2室が14時から18時まで使用されたことを示している。
市側の説明によれば、会合名は廃棄された申し込み用紙に記入されたものを「そのまま転記しているはず」としており、そのほか《☆パーテーションはずす。☆マイク3本》《☆2F倉庫のカギも出す》などの記入が確認される。
取材でも「演説会」が同センターの研修室2室を利用して行なわれたとの証言を得ており、記載内容と一致する。
杜撰な収支報告に新たな証拠
さらに、1月16日に行なわれた別の「演説会」について、「選挙運動費用収支報告書」の記載内容に疑念を抱かせる複数の文書を入手した。いずれも同市への情報公開請求によって得たものだ。
この日は、同市上古賀にある「筑紫野市文化会館」(指定管理者が運営)を利用して「演説会」が行なわれているが、同演説会に関する「筑紫野共同福祉施設使用許可申込書」(以下、申請書)と、支払いに対する領収書の控えにあたる「納入通知書」が残されていた。
使用許可申請書によれば、演説会当日に藤田陣営が使用したのは同文化会館の「大ホール」「リハーサル室」「会議室」の3施設。使用料金の合計は107,890円となっている。
同会館の利用は今年1月16日の1回だが、納入通知書は2枚に分かれており、1枚が申請日の日付である12月17日、もう1枚は演説会当日の1月16日になっている。
12月の納入通知書のあて先は「自民党筑紫野市支部」で、領収金額が38,800円。1月の納入通知書のあて先は「藤田陽三後援会」と記した後、「後援会」に横線二本を入れ「事務所」と訂正されていた。こちらの金額は69,090円だ。
筑紫野市の説明では、演説会場の使用料は、許可申請書にあるとおり"107,890円"だが、申請時に「施設使用料」を納める規定となっており、使用後に「冷暖房使用料」と「器具使用料」の実費を精算するシステムとなっているのだという。
しかし、藤田市長の「選挙運動費用収支報告書」には、演説会当日である1月16日の69,090円という支出しか記載されていない。
藤田陣営が行なった選挙運動費用収支報告が運動の実態を記載したものなら、施設使用料である12月17日支払いの38,800円も同報告書に記載されなければならない。
ただし、そうなると藤田陣営が行なった告示前の「演説会」は、明らかな「事前運動」ということになる。
情報公開で入手した"演説会場費用"に関する筑紫野市及び同市の指定管理者が発行した領収書は、いずれも「藤田陽三後援会」と記された後「後援会」を「事務所」と訂正されている。
この点に関して市側は「これでは(「後援会」のままでは)使えない」と藤田市長陣営から申し出があったため訂正したと明言しており、陣営側には明らかに"選挙運動費用"としての認識があったことがうかがえる。
政治資金処理にも疑問
藤田市長は初当選ながら、県議当選5回、県議会議長も経験しており、市長選直前までは自民党県連の会長を務めていた県政界の重鎮。政治家の説明責任の重要性は十分わかっているはずだ。
杜撰な選挙運動費用の処理と「事前運動」の可能性が生じていることに、どのような釈明をするのか注目されるが、今回の取材を通じて、藤田市長のこれまでの政治資金処理にも疑問が生じている。