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電力会社トップが笑顔でバンザイ三唱~原発危機よそに~
Power company CEO gives three "Banzai" cheers

2011年4月10日 22:20

 東京電力・福島第一原子力発電所の危機的状況が続くなか、同じ電力会社である九州電力の代表取締役会長が、選挙の勝利を祝ってバンザイ三唱を行なった。当事者意識に欠ける不適切な行為と言わざるを得ない。

 東日本大震災によってもたらされた福島第一原発の事故では、自衛隊、消防をはじめ多くの人々が放射能封じ込めに決死の努力を続けてきたが、いまだに先の見えない戦いを強いられている。原発の安全神話はもろくも崩れた。

 九州では、佐賀県玄海町にプルサーマル計画を実施中の「玄海原子力発電所」と、鹿児島県薩摩川内市には3号機増設の方針が決まっていた「川内原子力発電所」が営業運転している。事業会社は「九州電力」で、玄海・川内両原発の地元や周辺の自治体からは、同社に対し、安全基準の見直しや計画中止の要請が相次いでいることは言うまでもない。

 そうしたなか、九電会長は、任期満了にともなう福岡県知事選挙で、主要政党や労組が相乗りした候補者の後援会長や選挙対策本部長を務め、選挙戦初日でガンバロー三唱に拳を振り上げていた。
 投開票を迎えた10日、相乗りが奏功し早々と当選を決めた候補者陣営では、選対本部長の松尾会長、麻生渡知事につづき候補者本人が当選御礼の挨拶。その後、恒例のバンザイ三唱に移ったが、九電・松尾会長は満面の笑みで両手を3度高々とあげた。電力会社トップとして、周辺事情を考え「バンザイ」は遠慮するものと思っていたが、ためらいもない姿には唖然とするばかりだ。経済産業省と電力会社の蜜月ぶりを象徴するシーンとの見方もできる。

 福岡県知事に初当選した相乗り候補者は、原発を含む電力行政を司る「経済産業省」のOB。九電としては、監督官庁出身者を是が非でも勝たせたかったところだろうが、時期を考えるべきだった。

選挙事務所を出る松尾会長に、直接話を聞いた。

―東京電力・福島第一原発の状況を考え、「バンザイ三唱」を自粛しようという考えはなかったのか?
松尾:私はね、もともとこうしたなかで自粛、自粛というのはあまりない。(バンザイ自粛を)考えんこともなかったけれどね。個人的にはですよ。
しかしねぇ、こんな時(当選が決まった時)に、それはどうもシラけさせてもいけないから。

―陣営として、会長のバンザイ自粛を検討しなかったのか?
松尾:しなかったですね。

―時期的に不適切とは考えなかったか
松尾:ないですね。候補者もマニフェストみたいなもので九州から活力を創り出して、日本を元気にというようなことを言っていたからね。

―しかし、やはり「バンザイ」は不適切でしょう。
松尾:・・・・・。

 この強気の姿勢がどこから来るのか分からない。一般県民との意識のズレを感じるのは記者だけだろうか。



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