福岡県が約95%を出資する「財団法人福岡県地域福祉財団」に業務委託した、"婚活"関連事業にからみ、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いが浮上した。
予算額と契約金額(見積り金額)の差が、年度ごとに10円(平成18年度)、11円(同19年度)、98円(同20年度)、1,000円(22年度)といった状況で、県側が予定金額を教えていた可能性が高い。
県の担当課である福祉労働部(平成19年度までは保健福祉部)子育て支援課と、業務を受けた「財団法人福岡県地域福祉財団」に取材したが、予算額と契約金額の差がほとんどないことに関して説明がつかない状態だ。
県側釈明破たん
県側の当初の説明では、県がホームページ上で公開している「県政概要」を見れば、事前に予算額が分かるというものだったが、6日、県側にそれが不可能であることを指摘したところ、間違いだったことを認めた。
「県政概要」には、当該年度の予算などが詳しく記載されてはいるのだが、公表は毎年10月頃。問題の事業の契約は、毎年3月末か4月はじめで、この時期に当該年度の「県政概要」を見ることはできないのだ。釈明根拠としてはお粗末過ぎた。
県側が次に提示したのは、毎年1月~2月に財政課から公表される各課ごとの予算概要を示した「平成○○年度福岡県当初予算の編成概要」。たしかにこの資料にも重点事業ごとの予算が記されており、婚活関連事業の予算額も明記されている。
見積書の提出以前に予算額を知ることは可能とする県側釈明が成り立つかに見えるが、情報公開請求によって入手した公文書の存在が、これを否定している。理由はふたつ。
編成概要予算額と起案金額の違い
まず第一に、「平成○○年度福岡県当初予算の編成概要」にある予算額と婚活事業の起案文書に記された予算額は、毎年同じ数字というわけではない。
例えば、平成18年度に組まれた「次世代のための結婚応援事業」の婚活関連予算額は10,476,000円で、起案文書の予算額と一致する。予算額が増えた19年度も、それぞれの金額は同じだ。
だが、20年度、21年度の「編成概要」の予算額と、実際に婚活関連事業を起案した時の予算金額は違っている。
20年度の婚活関連当初予算額15,675,000円に対し、起案文書に記載された予算額は15,339,000円。21年度もそれぞれの金額が違っており、事前に財団側が予算額を知ることは可能だったという県側の説明根拠が崩れた形だ。
起案文書の予定金額と財団側の見積もり金額(契約金額)との差が数十円単位である以上、県側の説明は通らない。
6日夕の段階で、県側もこうした事実を認めており、財団側がどうやって予定金額を知ったかの根拠について調べているという。ただし、県予算について事前公表されているのは、前述した財政課の公表分「平成○○年度福岡県当初予算の編成概要」以外に存在しないのだ。
財団側が、予算の満額に近い見積り金額をひねり出すには、起案文書の予算額、さらに正確に言うなら県側が作成した「予定価格調書」の予定金額を漏らしてもらうほかない。
しかし、、県側の釈明を否定するふたつ目の理由こそ、この「予定価格調書」の存在なのだ。
「予定価格調書」の存在
改めて県への情報公開請求によって入手した「予定価格調書」(参照)を見てみると、県側の説明が、さらにつじつまの合わないものであることが分かる。
「予定価格調書」に記される予定金額には、必ずしも編成された予算の満額が設定されるとは限らない。業務発注時点と予算編成時では状況が異なる場合もあるし、さまざまな事情から金額が変わる可能性のほうが高い。
公表される県の予算概要などから、事前にある程度の予算規模を知り、事業の起案文書に記されるであろう予算額を予測したとしても、「予定価格調書」の予定金額そのものが分からなければ、10円、11円、98円といった誤差で見積り書を作成することは不可能ということだ。
外形的事実を見る限り、「財団法人福岡県地域福祉財団」が婚活関連事業に関する実施予算額を正確に知っていたと考えざるを得ない。
予定金額を教えたのは誰か、それはいつからだったのか。県の自浄作用が問われる。
ところで、この事業に関しては、情報公開請求の時点から県の隠蔽体質が現れていた。開示された公文書のいたるところが非開示で、黒塗りされていたのである。