福岡県による外郭団体への業務委託で、地方公務員法(守秘義務)に抵触する疑いが浮上した。
県の予算額と契約金額の差が、年度によって11円、10円、89円といった額になっており、予算と見積もりの差額がゼロというケースもあった。
予定金額を相手先団体に教えていた可能性が否定できない。
取材に応じた県側は、違法性はないとしながらも、業務委託した事業の見直しに言及している。
天下り法人への業務委託
現在、福岡県の外郭団体(正式には「公社等外郭団体」)は29を数えるが、その内訳は、特例民法法人21、特別法に基づく法人4、公益財団法人1、社会福祉法人1、株式会社2となっている。
ここでいう外郭団体とは、県の出資比率などが25%以上もしくは県の指導監督が必要とされる団体で、大半の団体に県職員が出向している。
問題は、20団体にものぼる県OBが再就職している外郭である。再就職とは、つまり天下りのことだ。天下り団体には、県による職員の派遣だけでなく、「業務委託」という形で仕事と公金を与えている。
もちろん、必要な業務もあるのだが、その発注方法には大きな問題がある。天下り団体への業務委託は、そのほとんどが随意契約で、競争なしで仕事を発注しているのだ。
この甘えの構造が、今回のケースを招いたといえる。
「婚活」関連事業に2500万円
今回、不適切な業務委託の実態が明らかとなったのは、県が平成17年度から行なってきた「婚活」関連事業だ。
年度ごとの正式な事業名は、平成17年度から同19年度までが「次世代のための結婚応援事業」。20年度からは「子育て応援社会づくり推進事業」となっている。
20年度から事業名が変わったのは、17年度からスタートしていた「『子育て応援の店』推進事業」と一括発注するようになったためである。
業務を受託したのは、地域福祉の振興を目的に昭和57年に設立された"財団法人福岡県地域福祉財団"(旧・財団法人福岡県地域福祉振興基金。平成15年に改称)で、平成17年度から、前述の各事業を県から委託されていた。
県側の窓口は福祉労働部(平成19年度までは保健福祉部)の子育て支援課である。
平成22年度の「子育て応援社会づくり推進事業」の業務委託に支出された金額は約2,500万円で、このうち婚活事業には約1,300万円が費やされた。
予算と見積もり11円差
福岡県に情報公開請求して入手した平成18年度「次世代のための結婚応援事業」の起案・決済文書によれば、この事業の予算額は赤い線で示したとおり10,476,000円である
これに対し"財団法人福岡県地域福祉財団"が県に提出した「見積書」の金額は10,475,989円。その差は11円しかない。
ちなみに、この年の「『子育て応援の店』推進事業」に至ってはさらに悪質で、7,971,000円の予算に対し見積もり金額も同額となっていた。
翌19年度の「次世代のための結婚応援事業」予算は21,500,000円で、財団側の見積り額は21,499,900円。差額は10円だった。
「子育て応援社会づくり推進事業」として婚活と子育て支援事業を一本化した平成20年度の当初予算は15,339,000円で、見積り額は15,338,902円。差額が98円となっている。
予算額が脹らんだ22年度には24,469,000円に対し、見積り額が24,468,000円で、差額がちょうど1,000円。不適切というより「ふざけている」と言った方がいいかもしれない。
一連の公文書によって明らかになった県側予算額と財団側見積もり金額の差は、どう見ても予算額の漏洩があったとしか思えない。
取材に応じた福岡県福祉労働部子育て支援課は、"財団法人福岡県地域福祉財団"に対し予定金額を漏らしていたのではないかという疑問に対し、真っ向からこれを否定している。しかし、予算額と財団側見積もりの金額がほぼ一致していることに関する説明は、全くつじつまが合わない。