東日本大震災という未曾有の惨事が、多くの命、財産、社会資本を奪った。先月23日にまとめられた政府の試算では、道路、港湾施設などの直接被害額が16~25兆円になるという。
東京電力・福島第一原発関連の被害金額などは含まれておらず、総額はけた外れになるものと見られる。ただ、金銭でははかれない人的被害が、もっとも悲劇的であることは言うまでもない。
被災者をはじめ、この国が震災の惨禍を乗り越えるために求めているのは「復興」の2文字である。道筋をつけるためには財源確保が急務で、増税、国債発行、PFIによる民間企業の復興事業参入などが検討されている。新たな借金や国民への負担増はやむをえないとしても、同時進行でなくすべき悪習がある。国や地方自治体による"税金のムダ遣い"だ。
民主党の失敗
民主党政権は、「税金のムダ遣いをなくす」と叫んで政権を取ったが、成果は上がっていない。蓮舫行政刷新相の勇ましさだけが際立った"事業仕分け"も、パフォーマンスとしては上出来だったが、予算編成にはたいして反映されていない。
政府予算が膨れ上がり、2年連続して90兆円を超えたにもかかわらず、マニフェストに明記した子ども手当てなど主要施策の財源確保ができないことでも明らかだ。
そればかりか、蓮舫氏が「200年に一度の災害に備えて、400年かけて事業をする意味が分からない」などと批判し、「廃止」の判定を下した"スーパー堤防"については、改めて必要性が問われる事態となっている。
次世代スーパーコンピューターの研究開発に「世界一になる理由は何か?」「2位じゃだめなのか?」と異論を唱えたのも蓮舫氏で、これも間違いだったことが明らかとなっている。
政治に求められるのが、50年、100年先を見すえた国づくりであることを、民主党も蓮舫氏も理解していない。
本気でこの国のあり様を変えるには、もっと地に足の着いた改革が必要なのだ。
まず「官」より始めよ
震災復興には膨大な予算をともなう。しかし、国の財政事情は厳しく、官民一体で取り組まなければ乗り越えることができない状況だ。
問題は、民主党が事業仕分けなどで国民への受けばかりを狙ってきたため、多くの"税金ムダ遣いシステム"に手をつけていないことである。まず、官のあり方を根本的に改めなければ国民の共感を得ることはできない。
実は、削らなければならない税金のムダ遣いは、その大半が放置されたままだ。気づいていないのか、あるいは気づいているのにやらないのか・・・。いずれにせよ、止めてもらわなければ納税者が泣きを見る事業は少なくない。国難を乗り越えるため、全国民が力を合わせようとしている現在、税金のムダ遣いは徹底して排除されるべきである。
大震災関連のニュースが、テレビ、新聞の主軸となっているなか、あえて税金たれ流しの実態について問題提起する。
そのひとつに、役所が発注する『業務委託』がある。とくに、天下り先への業務委託は、中央官庁はもちろん、地方自治体にもはびこる悪弊のひとつだ。
第一弾として、明日から、福岡県庁が行なっている業務委託を取り上げる。