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選挙自粛に一言

2011年3月30日 13:52

 東日本大震災をうけ、4月10日投・開票の統一地方選挙で選挙運動を自粛する動きが多くの自治体に広がった。朝、夕それぞれ2時間の街頭活動などを控えるという。自粛は、来月1日に告示される福岡県議選や福岡市議選でも行なわれる。
 福岡市議会では、共産党を除く8会派が、大震災で多くの犠牲者が出ていることを考慮し、選挙カーによる活動を朝10時から夕方6時までとする申し合わせに賛成している。県議会も同様で、福岡市議会に先立ち、主要4会派が同様の自粛方針を決めている。

 候補者名の連呼にはウンザリだが、政策を訴える唯一の手段を半ば放棄した形の政治家たちには、大いに不満だ。なぜ、この国の政治家は、街頭活動を自粛する程度の貧困な発想しか出てこないのだろう。

 本来、未曾有の大震災発生にともない、自分たちの街のどこが災害に弱く、改善すべき点はどの部分か、といった真剣な議論が必要なはずだ。街づくりのビジョンを見直す重要な分岐点に立っているとも言える。だからこそ政治家は、多くの市民に対し、郷土が抱える課題と、処方箋を訴える必要がある。こんな時だからこそ、マイクを握って政策を語るべきなのだ。九州の選挙で街頭演説を自粛して、本当に東日本の犠牲者や被災者への弔意やお見舞いになるのだろうか。疑問である。自粛するくらいなら選挙そのものを延期するべきで、後援会や支援団体、企業だけに向けた選挙は、大多数の有権者を裏切るものに過ぎない。

 福岡県知事選挙に出馬している相乗り候補陣営は、街頭活動をほとんど行なわず、同候補を支持する政党に所属する県議、市議の事務所まわりに力を注いでいるという。ばかにするなと言いたい。
 大震災や福島第一原発の事故は、福岡県にとって対岸の出来事ではない。平成17年には福岡県西方沖地震が発生、玄界島をはじめ福岡に大きな被害をもたらしているし、佐賀県玄海町には九電・玄海原発が存在しているのだ。地震に対する安全基準の見直しは急務であろう。政治が手をこまねいている時ではないはずだ。にもかかわらず、相乗り候補は陣営以外の県民に対する訴えを行なわない。
 九電会長が選対本部長と後援会長を兼任する陣営として、原発への批判を恐れてのことだろうか。あるいはまた、候補者自身が電力会社と蜜月を続けてきた経済産業省の官僚OBだからだろうか。いずれにしろ、有権者不在の選挙は不毛だ。

自粛要請 福岡県議会は、現職だけでなく、新人の陣営にも選挙自粛の要請文を送っているが、とんでもないこと。新人候補よ、恐れるなかれと言いたい。
 有権者に語りかけることが政治の原点である。こんな時だからこそ、政治がなすべき課題について、マイクを握ってしっかりと訴えてほしい。忘れてはならないのは、名前の連呼ではなく、政策を訴えるのだ、ということ。それこそが政治家としての震災への心遣いというものだろう。
 一方、有権者側も、「こんな時に何だ」と思わず、候補者たちの抱く政治や、街づくりへの理念、心情を受け止め、判断材料としたい。何かあってから、あの時しっかりと選んでおけばよかったという後悔をしても遅いのだ。ここはじっくりと、政治家としての適性を見定めるべきだ。
 今後4年間は、当選した議員たちにふるさとを委ねるのだから。



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